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トラベル
2020.02.28
いまも湧き水で暮らす集落へ 2,000円

滋賀県高島市・針江地区の「かばた」文化

湧き水で暮らす──大昔の話? それとも海外の話?いえ、いまの日本の、あるまちの話です。滋賀県高島市新旭町針江。170戸600人ほどが暮らすこの集落の家の敷地内には、澄み切った水がこんこんと湧き出しています。いったいどういうことなのか。現地を訪れると、そこには湧き水を循環利用する独自のシステム「かばた(川端)」という文化がありました。

いわゆる"観光スポット"じゃない

「もう20年以上、水道は使っていません。洗濯や風呂の水はもちろん、炊事も飲料水も自分の家の湧き水です」

そう語るのは、針江生水の郷委員会(以下、委員会)の会長を務める三宅進さん。針江では古くから、地下から湧き出す水のことを「生水(しょうず)」と呼んできました。生きるための水。その水を享受し利用するシステム、かばたと周辺の景観を維持するため、平成16年(2004年)に委員会が発足しました。

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針江の住民たちによる委員会の活動は多岐にわたります。かばた見学の案内、琵琶湖岸の葦刈り、休耕田を利用したビオトープの管理......。特に近年では、かばた見学の申し込みが増加。見学者が多くなる週末は、委員会のボランティアガイドたちは多忙を極めます。

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ここ針江はいわゆる"観光スポット"ではありません。名物を供する食堂も、地域の民芸品を揃える土産店も、食べ歩きのソフトクリームを売る店もない。あるのはこんこんと湧き出す生水と、その恵みに感謝する人々の暮らしです。わたしたちは地域のガイドとともに、その暮らしの一部に触れるというわけです。

2000年以上前からの湧き水暮らし

そもそも、なぜこれほどきれいな水が湧いているのでしょうか。針江地区は滋賀県北西部の湖西と呼ばれる地域に属し、安曇川(あどがわ)の扇状地左岸に位置します。目の前は琵琶湖。そして背後には南北約20キロに及ぶ比良山地があります。この比良山地の山々に降った雪や雨が伏流水となり、針江地区の地下に豊富な水脈を形成しているのです。

「針江浜(琵琶湖岸の砂浜)遺跡の調査では、約2300年前の、弥生時代前期の集落が見つかっています。そのころは、いまの湖岸から200メートルほど沖合まで陸地だったようですね」(三宅さん)

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また、遺跡からは2100年前のかばた跡も発見されたとか。針江地区は、はるか昔から豊富な地下水を利用した暮らしを受け継いでいるのです。

さて本題のかばたについて。かばたは各家庭それぞれ、設置する場所や大きさは異なりますが、おおむね次のようにしてつくられています。

まず、地下水を自噴させるための鉄管を打ち込みます。鉄管の直径は40~50ミリ程度、長さはまちまちで10~24メートル。水脈に当たれば、完全に澄み切った比良山系の伏流水が吹き出します。

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その水はまず壷池(つぼいけ)に溜められ、飲み水として、また野菜を洗ったり果物を冷やしたりするための水として利用されます。壷池の外側には一段低く端池(はたいけ)が設置され、コイなどが飼われています。食器や野菜を洗ったときに出る米粒や野菜くずは、コイがすっかり食べてきれいにしてくれるというわけです。そして再びきれいになった水は、集落に網の目のように張り巡らされた水路を通り、針江大川に戻されます。

この生水の循環利用システムと文化が、かばたなのです。

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かばたを巡って知る、針江のいま

三宅さんはゆっくりと、丁寧に集落を案内してくれました。

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ご自宅を含めた各家庭のかばたの見学と説明。伏流水は年間を通じて13~14℃を保っていること。春にはヨシノボリ(淡水のハゼ類)が列をなして水路を上り、かばたまで入り込んでくること。針江大川に繁茂する美しいバイカモ(梅花藻、初夏にウメのような白い花を水面に咲かせる水草)は、20年前に隣町から譲り受けたものが元になっていること。

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「どうぞ飲んでみてください」と、三宅さんがかばたの水をすすめてくれました。気持ちよく冷たく清冽な口当たり。どこまでも澄み切った無垢の味わいです。

三宅さんは「伏流水を"おすそ分け"してもらって、我々は暮らしとるんです」と笑います。2020年を迎えたいまもかばたが残る本当の理由は、針江に暮らす人々の、水に対する謙虚な気持ちにあるのかもしれません。

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集落にある「おさかな旭」では、琵琶湖の天然魚を使った食品を製造しています。代表の沢村治男さんが「鮒ずし」を切り揃えていました。鮒ずしに使われるのは琵琶湖固有種のニゴロブナ。春の産卵期に獲れたニゴロブナを塩漬けし、夏に塩抜きして米飯とともに再び漬け込みます。その年の晩秋には食べごろを迎えるという、滋賀県を代表する郷土料理です。

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まさに琵琶湖の恵みですが、実は琵琶湖で獲れる魚類は年々減少しています。2019年に獲れたニゴロブナは、2018年の漁獲量の1割程度。水質の悪化や外来魚による食害などさまざまな要因が、複合的に作用していると考えられています。残念ながら、解決策はまだ見つかっていません。

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集落の寺のひとつ、曹洞宗正伝寺の池にも豊富な伏流水が湧き出しています。亀ヶ池と呼ばれるその池には大きなコイが泳ぎ、きれいな水辺にしか生息しないセリの群生があります。

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亀ヶ池のコイに食べ残りの米粒をやる女性がいました。正伝寺の向かいにある創業130年の豆腐店、「上原豆腐店」のおかみさんです。

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店にもお邪魔し、かばたを覗かせてもらいました。上原豆腐店でつくっているのは木綿の豆腐と油揚のみ。もちろん自宅に湧き出す水でつくっています。朝作った豆腐は切り分けて、かばたに浮かべます。いろいろと教えてくれた上原さんの笑顔が心に残りました。ただ「仕事ができなくなったらわたしの代で豆腐は終わりやねえ」とおっしゃったこともまた、心に響きました。

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漁獲量減少の状況も然り、かばたを巡って知った針江のいまには、さみしさの漂う話もありました。ですが、それはいまこのとき人々が暮らす集落だからこそ起こり得ることです。人の営みとはまさにこういうことなのだ、と感じました。

かばたがくれた土産もの

この日の針江には、高島市内の小学生たちも見学に訪れていました。黄色い校帽をかぶった、低学年とおぼしき小学生たち。ガイドの話に耳を傾けているその様子は、とても微笑ましいものがありました。

「学校の子どもらは、のどが渇いたら通学路沿いの湧き水を飲みます。そのせいかわかりませんが、針江の集落にはジュースの自動販売機がほとんどないんですよ(笑)」(三宅さん)

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子どもたちが将来、ずっと針江に暮らしていくのか、それとも外に出ていくのかは、誰にもわかりません。しかし生水の湧くかばたの風景は、彼らの心のなかから、決して消えることはないはずです。

訪れたわたしたちもまた、このかばたの風景を忘れることはないでしょう。そしてわたしたちが持ち帰るのは、スマホに収まった美しい写真だけではありません。自然からもらった水を、できる限りきれいにして、再び自然に返す。針江の集落は「水に対する感謝の気持ち」を土産にして、持ち帰らせてくれるのです。

Photos: Hiroyuki Suzuki 
Words: Tomoshige Kase

2019/12/5取材
2021/6/24編集

[案内コース]
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Aコース|川端と街並みコース(1時間30分)|1,000円
Cコース|川端と街並みコース+里山湖畔コース(2時間30分)|2,000円
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毎週月曜日定休
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※その他の休業日は公式HPの情報を確認のこと。
http://harie-syozu.jp/yasumi
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[予約・問い合わせ先]
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針江生水の郷委員会
──────────────────────────────
tel. 0740-25-6566(ファクス兼用)
電話受付時間|9:00~15:00(冬季は10:00~15:00)
──────────────────────────────
Eメール|shozunosato@lapis.plala.or.jp
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※ファクスおよびEメール(24時間受信可能)での申し込みは日程に余裕をもって。希望に添えない場合は連絡があります。
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公式HP|http://harie-syozu.jp/
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参考コスト
Cコース(現地までの交通費は含みません)
2,000円
参考コスト合計金額
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