広々とした野菜畑をつなぐように雑木林が広がる埼玉・三富地区。所沢や川越に隣接し、都内から車で１時間ほどの三芳町に目指すフィールドはあります。実に東京ドーム４つ分もあるという広い敷地のほとんどが豊かな里山の自然におおわれ、四季折々の表情が楽しめます。「五感で学べるサステナブルフィールド」のコンセプトのもと、里山の新しい価値を見出すための施設があり、様々なプログラムが実施されています。中でも今回ご紹介する「野菜ソムリエによるベジタブルスクール」は、畑から食卓につながる食体験を通じてサスティナブルな野菜についての学びを深め、しかも地元食材といっしょにBBQで美味しくいただけるプログラムになっています。

「入村」することで里山の森を育てる

まずはメインのゲートとなる「くぬぎの森　交流プラザ」で受付です。建物はかつてこの地で栄えた産業の一つ養蚕の農家をイメージしたものになっています。天井が高く、躯体となる重厚な梁や柱をはじめ、建物だけでも一見の価値があります。内部はレストラン、オーガニック野菜やオリジナル商品の販売コーナーもあり、里山に入村せずとも利用ができます。

一方で「三富今昔村」に入村する方は、大人(18歳以上)のみ里山保全費を支払い、さらに初入村の場合は１グループで１冊「三富今昔村 入村BOOK（200円）」を購入します。
ここで支払った「里山保全費」は、里山を美しく健全に保全するために使われます。入村することによって、里山の森を育てることができると考えると、何だか嬉しくなってきませんか？

この冊子には村の成り立ちや里山で楽しむためのルールが、美しい写真やイラストでまとめられていて、手にするだけでもうれしくなります。

かつてこの地は豊かな里山が広がっていましたが、近代以降は人の手入れも行き届かないうっそうとした森に変わってしまいました。さらにゴミの不法投棄などの場所となり荒廃が進んでいたのです。そこで本来の美しい里山の再生を目的に「三富今昔村」は誕生しました。手入れの行き届いた里山の森は地表にまで太陽の光が届き、明るく爽やかです。

森の中を歩いていると、草花や昆虫や動物たちが生き生きとしている様子も見られ、五感が目覚めていくのを感じます。森の他にもハーブガーデン、ビオトープ、森の中のテラス、芝生広場などさまざまなシチュエーションが楽しめ、１日をかけてのんびりと過ごせる場所です。

そして食事はレストランの利用もいいですが、野菜ソムリエによるBBQがなんといっても人気です。

収穫体験から食の循環までを考える

「ベジタブルスクール」と銘打たれたBBQでは、オーガニック農法で育てられた野菜を収穫し、その場でグリルしていただきます。まず栽培されている野菜について「野菜ソムリエ」からレクチャーがあります。

「ここの野菜は昔からの農法である森の落ち葉の堆肥を栄養に育てられたものです。しかも交配種でなく各地で自家採種によって伝えられてきた固有種の野菜です」と種のセットを見せてくれました。固有種の保護などを通じて、次世代にその多様性をつなげていく大切さを語ってくれました。

この日は、コリンキー（生で食べられるかぼちゃの仲間）の収穫体験を行いました。「このコリンキーは茎が黄色く色づいているので食べごろです」とソムリエのアドバイスを受けながら、剪定バサミを入れると、太い茎でも抵抗なく切れ、切り口からは水分が滲みでてきました。

普段スーパーなどでみかける野菜も「こうして収穫されているんだなあ」と、新鮮な気分になりました。

炭火焼きで野菜本来の甘みを味わう

自分で収穫した野菜も交えて、テーブルの上には旬の野菜、それにアニマルウェルフェア（家畜を感受性を持つ生き物としてとらえ、快適な環境のなかでストレスを減らし飼育すること）を考慮したお肉、自家製天然酵母パン、野菜くずで出汁を取ったベジブロススープなどが並びます。調理法は国産の間伐材から作られた炭で、そのままグリルするシンプルなもの。焼きあがったものをいただくと、野菜本来の甘みやフレッシュな生命力が口の中に広がり、幸せな気分になります。

「普段野菜をあまり食べない方や子どもたちも自分で収穫をして、調理することで喜んで口にしていただけます。持続可能性をテーマに昔ながらの伝統野菜を見て、触って味わってもらうことが大切だと考えています」とソムリエの小堀さん。

さらに余った野菜くずや食べ残しは村内のニワトリの餌となります。そしてニワトリはその栄養を元に育ち、卵や鶏肉として私たちの栄養となります。また鶏糞はこの村の畑で使用され、オーガニック農法の肥料にもなります。「森の落ち葉→野菜→ニワトリ→野菜」とこの村の中だけでも循環が生まれているのです。

このように「ベジタブルスクール」では野菜から出発して、いろいろなことを学べます。
広い村内には子どもたちのアスレチックやミニSLなどもあり、遊びと学びの要素が盛りだくさん。1度と言わず、何度訪れてもその度ごとに違った発見に出会えるはずです。

Words: Tomohiro Tsuchiya @ Yellowjam
Photos: Hiroyuki Joraku

埼玉県における緊急事態宣言発令中は、三富今昔村内すべての店舗で酒類の提供と販売を終日自粛いたします。
また、夜開催イベント（アウトドアナイト、ナイトベジスク）の営業時間は午後8時までとします。
※飲食でのご利用については4人以下又は同居家族（介助者を含む）のみのグループに限らせていただき、滞在時間は90分以内とさせていただきます。

また、ご来村の際は感染予防へのご協力をお願いしております。
詳細はWEBサイトにてご確認ください。
https://santome-community.com/oshirase/

2021/7/12

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