美味しいだけではなく、地球にやさしいサステナブル（持続可能）な生産方法の食べ物やグルメが評価されるようになった昨今。世界でも珍しい「陸上養殖システム」によって育てられる希少な国産エビのブランド「幸（ゆき）えび」が、気軽にオンラインでお取り寄せできることも手伝って、じわじわと人気を集めています。

今回紹介する「幸えびパック S（1,210円）」（写真左）と「幸えびパック M（1,460円）」（写真右）は一見何の変哲もない冷凍エビですが、実は最新技術と生産者の環境への想いが詰まっているのです。

社会課題を解決する「陸上養殖システム」

「自然災害で海の養殖モノが壊滅的な被害を受けたり、赤潮でウニが捕れなくなったりと、悲しいニュースを耳にすることが多くなりました。もしかしたら近い将来、カジュアルに魚介類を食べられなくなる日が来るのかもしれません......。そんな社会課題を解決するのが、私たちの取り組んでいる『陸上養殖』なんです」

「幸（ゆき）えび」ブランドを運営する「海幸ゆきのや」の社長・秋田亮さんはそう語ります。同社は関西電力グループの一員として2020年に設立され、「幸えび」の販売を開始、今年7月には大規模での本格生産にこぎつけます。

「一般的に普及している『海上養殖』も、もちろん素晴らしい技術です。しかし魚の餌や糞が海域に影響を及ぼす、魚が海に浮遊するマイクロプラスチックを取り込んでしまい、魚を食べる人間に影響を及ぼすのではないかなど、心配な点が指摘されているのも事実です」（秋田さん）

さらに「陸上養殖」は海上での重作業ではなく工場内での軽作業が中心なので、海への転落といった不慮の事故の防止や、勤務時間が不規則になりがちな漁業者の働き方改善にもつながるといいます。

ストレスフリーだからこその旨味とプリプリ食感

最も人気がある商品は、収穫後すぐに活ジメし瞬間冷凍させた「幸えびパック」です。「一度の解凍であれば生食もできるほどの鮮度を保っています」と秋田さんは胸を張ります。

海藻に揺られたストレスフリーの環境で、栄養価の高い餌を与えられて育つため、プリプリとした食感と濃厚な旨味を楽しむことができます。口に運ぶと真っ先に水産物特有の「臭み」がないことに気付くでしょう。これは陸上養殖の水槽内を毎日掃除し、薬品ではなく微生物の働きで水を浄化しているからこそ為せる技なのだとか。

また薬品はもちろん、抗生物質、保存剤、保水剤などが一切入っていないため、安心して食べられるのも大きな魅力です。

「一般的な輸入冷凍エビは、頭が切り落とされた状態で販売されています。なぜなら新鮮でないと頭部がすぐに変色して身も劣化させてしまうから。しかし『幸えび』は頭も鮮度を保っているので、加熱すれば頭から尻尾まで丸ごと美味しく食べられますよ」（秋田さん）

頭を残したまま串打ちにして塩焼きにしたり、ニンニクと油で炒めてアヒージョ（上の写真）にしたり、アレンジメニューを楽しむのもオススメ。

人気料理人とのコラボ商品には、食品ロスを減らす工夫が

購入者からのリクエストに応え２つのレトルトメニュー「幸えびとトマトの卵炒め」1,620円（写真右）と「幸えびの濃厚ビスク」950円（写真左）もラインアップに加わりました。前者は大阪で最も予約困難な店のひとつ「蓮心」のシェフ・廣澤将也さん、後者はフランス料理の匠「東京六本木 レストラン リューズ」の料理人・飯塚隆太さんが監修を務めたスペシャルなメニュー。

今回は約10分間湯煎した「幸えびとトマトの卵炒め」を、市販の麺にかけて「あんかけ焼きそば」を作ってみました。上にのせるだけなのでとても簡単。ふわふわ卵入りのとろっとしたあんと、パリパリ麺の食感が対照的で美味でした。

この「幸えびとトマトの卵炒め」にはエビの身が使われていますが、実はもうひとつのレトルト商品「幸えびの濃厚ビスク」は、その際に発生するエビの殻と頭のみで作られています。まだ食べられるのに廃棄されてしまう"食品ロス"の発生を抑制する工夫が光っているのです。

エビの奥深い旨味と苦味が凝縮されたスープは一度飲むとクセになりそう。

「幸えびの濃厚ビスク」に市販の生クリームを加えればパスタソースにもなります。バター、オリーブオイルやパルメザンチーズを加えるとさらに濃厚に。有頭＆殻付きの「幸えび」を添えれば、見た目も美しいエビのパスタがあっという間に完成です。

希少な国産エビのブランド「幸（ゆき）えび」。最後にその名の秘密を教えてもらいました。

「私たちの『陸上養殖』の水槽には、アルプスの『雪』解け水が流れ込む諏訪湖から唯一注ぎ出る天竜川の伏流水を使っているんです。そして『幸えび』は『雪』を思わせる透明感のある白さが特徴。みなさんに『幸せ』と自然の恵みである『雪』を感じてもらいたいという想いを込めてネーミングしました」（秋田さん）

たまには自宅で簡単に、海にも食べる人にもやさしい「ご褒美グルメ」を楽しんでみてはいかが？

Words: Riyua Joe（mogShore）
Photos: mogShore

2022/3/4

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