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マネー
2025.06.17
「庶民の僕が相続で苦労するなんて」

資産家でなくても相続問題はあるんです

●相続で苦労するのはお金持ちだけではない

今回は、相続なんて考えたこともない現役世代の方に向けて、「相続とは何か」を身近な事例を通じて知っていただくお話です。

小説、ドラマ、アニメに至るまで、いつの時代も推理ものや探偵ものの人気作品が生まれ、ブームを巻き起こしています。そうした作品には、たいてい、相続をテーマにしたエピソードがあり、遺産争いが物語の鍵を握っていることが多いですよね。そのせいか、「相続問題=財産争い=資産家の話」と思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。
でも「うちは資産家じゃないから相続問題なんて人ごとだ」と思うのは大間違いです。お金の問題もありますが、遺族に沢山やらなければならないことが発生することが、相続の一番の問題なのです。
今回のお話は、筆者が接したお客様の体験談を組み合わせて創作した「普通の人の相続」です。あなたの周りにも似たようなお話があるかもしれません。もしかしたら未来のあなたのお話になるかも?

●慣れない葬儀で大慌て

Aさんは、東北のある地方都市出身の40代の会社員。妹との2人兄妹で、東京の大学を卒業し、そのまま就職し、平凡な生活を送っています。
母はすでに他界しており、父は実家で一人で暮らしています。健康そのもので地域活動にも積極的に参加しているので、Aさんも妹も特に父の心配をしていませんでした。しかし、ある日突然、父が倒れたとの連絡が入り、意識が戻らないまま急逝してしまいます。ここからAさんの苦労が始まりました。

あまりにも急な展開で実感が湧かないまま、葬儀の準備をすることになりました。ですが葬儀の手配など何もかもが初めての経験。母の時は父が全てやってくれていたため、段取りすら分かりません。思わず「父に相談しよう」と思いかけて、はっと我に返ります──頼りの父はもういないのでした。

幸い同じ市内に住む親戚が手伝ってくれたので、負担が軽くなりましたが、息つく間もなく、葬儀の段取りを葬儀会社と進めなければいけません。そうして葬儀会社から提示された見積もりは、驚愕の200万円超え!
「車の見積じゃないんだぞ......!」
こんなにするわけがないと疑い、ネットで相場を調べましたが、特段高いわけではありませんでした。昔は「六文」で乗れた三途の川の渡し船も、令和の時代は豪華客船に変わったようです。
こんな大金は手許にないので、父の預金を引き出そうとしましたが、暗証番号が分からず、窓口に行くと、戸籍等の書類を揃える必要がある上に、用紙の記入もなんだか面倒臭そうです。葬儀の日も迫っていたので、自分の定期を解約し、さらにブツブツ言う妹にも送金させて、なんとか当面必要となるお金を工面したのでした。

葬儀会社に任せるとは言っても、遺影用の写真を用意したり、病院の精算と引き換えに死亡診断書をもらったり、お寺さんと戒名の相談をしたり、ずっと慌ただしい時間が続きます。ろくに睡眠も取れません。お葬式で遺族が憔悴しているのは、悲しみよりも疲労が原因なんですね。皮肉にも、お坊さんの読経の間、Aさんはやっと休息を得られたのでした。
お墓のこともよく分からなかったので、親戚の言うとおり、一族のお墓に入れたものの、後になって妹と、「遠いと墓参りに行くのが大変だから、両親一緒に都内の納骨堂に入ってもらえば良かったね」と話しました。じっくり考える時間があれば、こんな後悔もしなかったでしょう。

最後のお別れとなる葬儀前後は、何十年ぶりの遠い親戚や、故人と親交があったという"知らない人"が次々訪れます。父の人望を誇らしく感じると同時に、Aさんにとっては、ほぼ初対面の人ばかりで気疲れします。そしてその分、香典返しのリストが増えてこれまた神経を使うのでした。
疲労困憊で東京に帰り出社したら、溜まりに溜まった仕事がお出迎え。しばらくは仕事に集中せざるを得ず、実家のことはいったん後回しにすることにしました。

●遺産の把握も大変だ

しばらくたったある日、妹から電話がありました。
「生命保険や預金の払い戻しはどうなってるの? 私そういうの苦手だから、兄さんが全部やっておいて」
いつも兄任せの妹は全く頼りになりません。
「う~ん、ぼちぼちやらないとなあ」
通帳など目についた貴重品は持ち帰って来ていたのですが、財産の全体像が分からないので、どこから手を付けて手続すればいいのかも分かりません。財産の洗い出しは、実家でじっくりやらないと「もれ」が出るかもしれないと考え、ヒマを見つけては実家に帰ることにしました。

「遺言書があればどんな財産があるか分かるはず」
あちこち探してみたものの、やっぱりないようです。諦めてゼロからリストアップする覚悟を決めました。留守の間に届いた郵送物の山の中には、各種料金の引落不能を知らせる通知もありました。預金口座が凍結されると、引落もできなくなるのです。ヒヤヒヤしながら請求内容を確認しつつも、これらが預金先やカード等の契約関係を洗い出す糸口になることに気がつきました。気分は名探偵です。
部屋の片隅から、地元の金融機関のポケットティッシュを見つけた探偵Aさん。
「ここにも預金があるはずだ」
そこで確認しに赴いたところ「ございません」と言われて、恥をかいたり......。たびたびに実家に帰っては、こんなことを繰り返していました。

保険や預金の手続は、戸籍やら住民票なども必要ですが、金融機関ごとに手続用紙が異なり、まずは用紙の取り寄せが必要になります。仕事の合間に問い合わせをしていましたが、最近はなかなか電話も繋がりません。
四十九日法要もあって、疲れが溜まったAさんはだんだん面倒くさくなり、「別に減るもんじゃないし、仕事が落ち着いたらやろう」と、またも先延ばしにすることにしました。

●相続税が我が家を襲う!?

ある日、会社で相続の話をしていると「うちは税制改正前だったから相続税かからなかったけど、お宅はどうだったの?」と聞かれ、Aさんは初めて相続税について調べ始めます。
かつて相続税はお金持ちの人にしか縁がないものでしたが、近年の税制改正によって、ほぼ10人に1人が課税されるようになりました。Aさんのように、子ども2人で相続する場合、4,200万円が相続税の課税ラインとなります。
まだ父の財産の全体像を把握していなかったAさんは焦ります。実家のほかに、先祖代々の土地もあり、母の遺産はすべて父が引き継いだことや、父母ともに比較的贅沢な生活をしていたことを考えると、その金額を超えている可能性もあるのです。

相続税は亡くなってから10か月以内に申告しなければなりません。残り3か月を切っていたため、急いで税理士を探すも、申告期限が迫っていることを理由に、「お急ぎ料金」を提示されてしまいますが、他に探している余裕もないので、仕方なく割高の報酬で依頼することにしました。
財産一覧や関係書類を出すように言われましたが、すぐに揃うものではありません。Aさんは週末の毎に、実家に帰って、書類探しや資料整理をすることになってしまいました。

ところが、ようやく揃えた書類を提出した結果「相続税はかからないので、申告しなくてもいいですよ」との連絡が。父が自慢にしていた先祖代々の土地は、相続税評価額で二束三文の価値しかなく、生命保険金も非課税制度が効いたのが大きな要因でした。このドタバタは何だったのか? これまでの作業に応じた報酬を支払って税理士との契約は終了し、Aさんは何とも言えない虚脱感を覚えたのでした。

●遺産分割はケンカのもと

とはいえこのドタバタのおかげで、財産の洗い出しが終わりました。次は妹との遺産分割が待っています。

妹は「半分ずつでいいよ。不動産は全部兄さんにあげるから、私はその分お金をくれればいいよ」と言い出します。Aさんだって不動産よりお金をもらいたいのは同じです。「何て図々しい妹だ」

話し合いは次第にヒートアップ。「兄さんは大学の学費も仕送りももらったけど、私は地元の専門学校を出てすぐに就職した」「お前が、しょっちゅう母さんに小遣いをせびっていたのを知らないと思っているのか」......次から次へと昔の不平が出てきます。どんな家族でも遺産で揉めるとこんな言い争いに発展します。このまま話を続けてもエスカレートするだけなので、気まずくなって、お互い遺産の話には触れないようになりました。

一度は中断した話し合いも、三回忌を終え、ようやく落ち着いた頃にようやく和解。結局、Aさんが預金を多めにもらう代わりに、先祖代々の土地を引き取って管理することに。実家は売った代金を山分けすることで折り合いを付けました。

●不動産の名義変更にもお金はかかる

実家は、売買の便宜を考えて、いったんAさんが相続することにしました。不動産の名義変更は、役所ではなく、法務局で手続きをしないといけないと知り、なんだか難しそうなので、先日の税理士に相談して、司法書士を紹介してもらいました。
司法書士は当然報酬が発生しますし、他にも登録免許税という税金も払うことになり、予想外の出費です。
「遺産をもらうだけなのに、なんでこんなにお金がかかるのか?」

実家の費用は妹と折半するつもりですが、先祖代々の土地の分は全てAさん持ちになります。おまけに今後固定資産税も払わねばなりません。お金だけを相続した妹には、このような出費はありません。
「面倒な方を引き受けて、しかも金まで多く払うのか......」と、何ともすっきりしない気持ちに。

●まだまだ続く親の相続......

ようやく一段落かと思いきや、遺品整理も終わらぬうちに実家の買い手が決まり、またバタバタ。売却代金を分けた際には、妹に贈与税が発生して再び揉める羽目に。
「いつになったら終わるんだろう......」Aさんの憂鬱は続きます。

こんなお話ばかりで気が滅入ってきたでしょうから、この続きはまた別の機会に......!

●どうすればよかったの?

ここまでのお話で、相続の最大の問題は「慣れない手続を大量にこなさなければならないこと」とお分かりいただけたと思います。では、この問題を回避するにはどうすればよいのか考えてみましょう。

最近では、エンディングノートを作成するご高齢の方が増えています。財産一覧や連絡先、葬儀の希望などをまとめておくもので、遺された家族にとっては大きな助けになります。もしこのノートを遺してくれていれば、Aさんは何度も実家に帰って資料探しをする手間と時間を減らせたでしょう。

また、遺産分割は子供たちだけで話し合うと揉めやすいもの。親があらかじめ配分方針を明確にし、家族に伝えておくのが理想です。揉める可能性を感じたら、遺言書の作成が必要になります。親が分け方を決めることができるため、子供同士で話し合う余地がなくなります。

各自治体では、税理士など専門家による無料相談会を開催していることがあります。まずはこうした場を活用して遺言や相続税の相談をし、正式な依頼が必要かどうかを見極めましょう。注意すべきは「餅は餅屋」ということ。相続税が心配なら税理士、遺言作るなら司法書士、遺産分割で揉めそうなら弁護士というように、それぞれ専門・得意分野が違うので、面倒でも、それぞれの専門家に相談したほうがよいでしょう。

たとえば一例ですが、経験豊かな税理士とコーディネーターが窓口となって、専門家を紹介してくれるWebもあります。

『相続の教科書』
(運営:みつき税理士法人/みつきコンサルティング

相続でどれだけ苦労するかは、準備次第なのです。

words:あおぞら銀行

2025/6/6

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