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2024.12.27
「マイホーム」の資産価値が上がる?

ホームインスペクション「さくら事務所」代表インタビュー

「マイホーム」が人生におけるもっとも大きな買い物となる方は多いのではないでしょうか。ローンを組んで購入する高価なものが「不良品」だったらどうしよう、と不安を感じるのは当然です。しかしその見極めは素人には難しい......。そんなときに活用したいのが「ホームインスペクション(建物の検査点検)サービス」です。

住宅の状態をプロが検証してくれるホームインスペクションについて、個人向けサービスの先駆けである『さくら事務所』代表取締役社長の大西倫加さんにお話を伺いました。

一生を通じてもっとも大きな資産になるかもしれないマイホーム。そのコンディションを正しく知りたい人は必読です。

住宅の専門家が行う住宅診断「ホームインスペクション」とは

---具体的にホームインスペクションとはどのようなことをするのでしょうか

さくら事務所・大西倫加さん(以下、大西さん)「住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場からまた専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行う専門業務です。
『さくら事務所』の場合、全員建築士で住宅に詳しい専門家(ホームインスペクター)が、第三者・中立の立場で、住宅のコンディションを確認します。
我々はよく、"建物の調査会社"といった表現をいただきますが、専門家がただ建物を調査して報告書をレポートにまとめるだけのサービスではなく、中立的な立場で依頼者に同行して、一緒に住宅を見たうえで、その住宅の取り扱い方や後のメンテナンス、修繕の費用などをアドバイスすることが特徴です」

ユーザーがインスペクションで得るものは「安心」

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---住宅のタイプは中古・新築・注文住宅・建売住宅などさまざまです。それぞれ、どのタイミングでホームインスペクションを入れるのでしょうか

大西さん「建売であれば内覧会などの住宅の引き渡し前や契約前のタイミングで立ち会わせていただくことが多いです。

もう一つ主流となっているのが、これから建つ予定の住宅を第三者として検査するサービスです。注文住宅や建売住宅をこれから建てますというときに契約し、建っていくプロセスで何度か第三者として工事現場に入らせていただきます。所定の施工会社がつけなければならない社内の検査以外に、第三者として別途で検査をするサービスで、非常にご好評いただいています」

---インスペクションの際、とくに注意して調べる部分はありますか

大西さん「新築も中古も屋根や外壁、窓周りなど診る箇所はほぼ同じですが、診ているポイントが違います。

新築ですでに建っている住宅の場合、隠蔽部といって壁の内側などはなかなか診ることができません。外側から目視・非破壊の範囲で施工不良や手抜かりがないかなど、施工状態を確認することが中心になります。

中古住宅の場合は、人間の体のように年をとるほど経年劣化していくため、その時点でのコンディションを診ます。同時に、施工時点からの不具合や施工不良がある場合、より劣化がひどく出ているケースもあるのでそれらの確認をします。

建築中のプロセスの場合は、どのタイミングで何度診るか、予算や不安な部分の希望に応じてカスタマイズさせていただいています」

---よくある瑕疵は何でしょうか

大西さん「中古住宅の場合ですが、水のトラブルが非常に多いです。雨漏りだったり水漏れだったり、建物はどの構造体であっても水に弱いんです。水漏れといっても、ドバドバッと漏れるのではなく、配管の接続不良や接続部が劣化して緩くなり少しずつ漏れていくトラブルが多いですね。少量なので所有者さんが気づきにくく、時間の経過とともに深刻化しやすい。
漏水や雨漏りが何度か重なり、内部まで水が浸透して木材が腐食し、そこからシロアリが大量発生することもあります。

また、建物がちょっと傾いていることがあります。経年で床がたわむような自然な傾きレベルもあれば、建物自体が不同沈下(不ぞろいに沈む)など構造上問題があるような傾きが起こっているケースもあります。

ホームインスペクションを依頼した方は、きれいに仕上がっていて問題なさそうでも、気づきにくい場所のちょっとした施工不良を放置するとよくない事象が起こりうると知ってすごく驚かれます」

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---実際に瑕疵が見つかった場合、契約前であれば買わないという選択肢もあると思いますが......

大西さん「大切なポイントですが、我々『さくら事務所』は中立的な立場を保つため、中古住宅の売買の利害には関わっていません。ホームインスペクションを利用した方が、その後どんな対応をしたのかという正確なデータは把握できていないのが実状です。ただ、アフターフォローの相談やその後いただく不動産に関する質問を拝見する限り、多くの方は、多少の不具合があったとしても購入されるケースが多いようです。

もう10年以上前になりますが、"中古住宅のインスペクションを利用されたあと、その住宅を実際買われましたか"というアンケートを取ったことがあります。その当時回答してくださった方々の9割は購入していました。

これには2つ理由があって、1つは不動産業界人が恐れるほど、一般の方は中古住宅に完全性を求めていないということです。中古住宅なので、インスペクションを使って、自分たちで対処しきれないリスクや欠陥がないか、念のため確認しておきたいと思っている方がほとんどです。

実際、中古住宅にはなにかしらの不具合があることが多いです。でも、そのほとんどが対処できる不具合で、状況がわかってさえいれば修繕費を見込んで購入すればいい。ホームインスペクションでは、その修繕にかかる費用の目安や必要そうな時期を提示し、今すぐ必要なのか、それとも数年の間なのか、大きなリフォームを考えるまでの間もたせればいいのか、そういうアドバイスをさせていただきます。
その結果を知ったうえで、その住宅の競争度合いにもよりますが、提示された価格よりも修繕費分ぐらいまけてほしいとか、引き渡しまでに必ず直してくれたらこの価格で契約しますなどの交渉材料にしているケースが多いんですね。

もう1つは、一般の方が家を購入するときに建物ありきで買われる方はわりと少ないということです。不動産は、立地要件や規格要件がすべて決まっているわけですが、"建物のコンディション"はその要素の一つであって、多くの方にとって建物のコンディションの優先順位は低いんです。

まず、ご家族のライフスタイル、たとえば、職場までの距離、保育園の近さ、両親の家までの距離など、自分たちに地の利がある立地要件があり、住宅ローンが組める額で買いたいなど予算があります。それに対して、こういう暮らしをしたい、子どもが何人いるから部屋はいくつ欲しい、このくらいの広さが必要、こんな間取りがいいという企画要件。そのうえで、建物が納得できるレベル、対処できるレベルなのかを確認しておきたいという順番が多いので、インスペクションを入れたいと考えた時点で、大概のことは対処してでもその住宅を欲しいと思っているケースが多いんです。

みなさん安心を買いたいのです。インスペクションを使われる方でよく我々が聞くのは、"念のため"という言葉です。いざ契約となると不安になってきた、という方が"念のためインスペクションを入れたいです"とおっしゃいます」

マンション管理組合の運営状況は可視化されつつある

---中古マンションのインスペクションの場合、いつ修繕になるかのアドバイスはもらえるのでしょうか

大西さん「マンションは、専有部分といって自分がお住まいになる部屋と、共用部分(廊下やエントランスなど)という構造体に関わるところがありますが、中古マンションのインスペクションでは、専用部分の調査しかできないので、構造体に詳しく迫ることは難しいんです。また、新築マンションであっても、建築現場には施工関係者以外入れませんので、建築の状況も建ち上がった後でしかわかりません。

目視でかつ全部できあがっているので限界があるということが前提になりますが、専有部分の部屋が今どういう状態でどこを直せばいいのか、使い勝手や、どれぐらいでリフォームをすればいいのかなどをアドバイスします。

また、『さくら事務所』の場合、オプションで"管理組合向けマンションコンサルティングサービス"も行っています。マンション管理の専門家もたくさんいますので、そうした見地から、マンション1棟の管理組合の運営、修繕積立金など維持管理していくために必要なお金が潤沢か、工事計画がどうなっているかなどをアドバイス・サポートするサービスです。

"マンションは管理を買え"といわれて20年以上経ちますが、マンション管理の状況は実は不動産取引において、かつてはブラックボックスだったんです。とくに中古マンションの取引では、ちゃんと見て購入されることがほとんどなかったんですが、ここ数年でようやく国交省もマンション管理組合の運営状況を見える化する制度に取り組みはじめ、徐々に可視化されつつあります」

インスペクションでマイホームの資産性を守る

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---一戸建の建物に関しては、経年によっては資産価値がなくなるといわれますがインスペクションで資産性を保つことはできるのでしょうか?

大西さん「住宅が長持ちするための三要素というものがあります。"設計品質"、その設計品質を担保するための"施工の品質"、最後に設計と施工がちゃんとしていても"維持管理の品質"が重要です。この3点セットで住宅が長持ちしていきます。

資産の場合には立地要件とかいろんな他の要件も絡んでくるんですけれども、住宅のコンディションがよければ資産性も維持しやすいということになります」

---住宅の資産評価について社会ではどんな動きがあるのでしょうか

大西さん「マンション管理に関しては、管理計画認定制度などによって組合運営状況を登録し、可視化や金融評価に差をつけていこうという試みが始まっています。

いままでは取引の価値に連動性がなかった災害リスクも、水災リスクに関しては重要事項説明に位置付けられ、保険料も災害リスクに応じて変わっていくという取り組みが始まっています。さらに、災害リスクの高低によってその立地の価値そのものが左右されていくことも加速するのではないかと思っています」

---今後『さくら事務所』として取り組んでいきたいことはありますか?

大西さん「我々は25年に渡って長く個人の方向けのインスペクションで住宅のコンディションを見てきました。それらのデータを、施工品質を上げることに活用できるようなフィードバックをして業界全体の品質をより上げ、安心して住宅を買えるような状況をつくっていきたいと考えています。

2つ目に、我々の取り組みだけでは難しいのですが、住宅のコンディション、流通の評価です。
日本は多くの方が住宅ローンを組んで買われるので、金融評価との連動を何らかの形で目指していけたらと思っています。金融評価と建物のコンディションが連動する、いい建物を買って、適切で丁寧なメンテナンスをして住んでいくことによって、その住宅の価値が場合によっては購入時より上がっていくような取引市場をつくっていきたいと考えています。

最後にマンション。マンションは集団で決議を取っていろんなことを進めていかなければなりません。維持管理、空き部屋問題の対処なども、個人の判断ではどうにもならない難しいところがあります。マンション1棟の維持管理や資産性の向上、そして規模によっては1つの村くらい大きく、市町村への影響も高い建物になるので、マンション自体の価値向上やブランディングなどに寄与していくようなサービスや事業展開をしていきたいと考えています。

どの方が、いつどんなときに、どの住宅を買っても、その住宅を買うことでより快適度が上がり、幸福度が上がり、できれば経済的にも物理的にもより豊かになる不動産市場というものをつくっていきたいですね」

*****

『さくら事務所』が25年前にホームインスペクションを事業として立ち上げたときは、不動産業界から大変な反発を受けたそうです。しかし、2018年にはインスペクションについて伝える義務が制度として位置付けられ、2024年は宅建業法(宅地建物取引業法)にさらなる改正が加えられて、ますますインスペクションを推進する動きが強まっています。
ホームインスペクションを受けることで建物の資産性が保たれるだけでなく、将来の修繕費計画がはっきりするので、資産運用のうえでも安心が得られるのではないでしょうか。

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大西倫加氏 プロフィール
株式会社さくら事務所代表取締役社長。らくだ不動産株式会社代表取締役社長。だいち災害リスク研究所副所長。マンションプラットフォーム『BORDER5』編集長
広告・マーケティング会社などを経て、2003年さくら事務所参画、マーケティングPR全般を行う。2008年には『NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会』の設立から携わり、同協会理事に就任。10年間理事を務め、2019年に退任。
不動産・建築業界を専門とするPRコンサルティング、書籍企画・ライティングなども行っており、執筆協力・出版や講演多数。

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Interview&Words:INCLUSIVE.inc

2024/6/7

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