大ヒットお金の教養小説「きみのお金は誰のため」著者 田内学さんインタビュー

新NISAがはじまり投資に対する社会的関心が高まっているように感じられます。お金のことを学びたいという人や、子どもに早期から投資を学ばせたいという人も多いのではないでしょうか。
そんな人におすすめしたい本が、大ヒット中の『きみのお金は誰のため』です。同著は大人から子どもまで幅広く読める「小説」ながら、2024年「読者が選ぶビジネス書グランプリ」総合グランプリ1位を獲得しました。
物語は、中学二年生の主人公・優斗が、謎の大富豪"ボス"から出されるお金の謎かけについて考えながら、学んでいくという展開です。例えば、こんな謎かけです。
・お金自体には価値がない
・お金で解決できる問題はない
・みんなでお金を貯めても意味がない
読み進めると、お金や社会のしくみに対する考え方がクリアになり更新されていくのを感じるはずです。子どもに読ませたいと思う大人が続出しているのも納得です。
著者は外資系金融企業で金利トレーダーを16年務め、現在は金融教育家・作家として活躍する田内学さん(以下、田内さん)。この物語を紡ぐにあたり、どのような思いがあったのでしょうか。田内さんにお話を伺います。
中学生でもわかるように、でも親にこそ読んでもらいたい理由
田内さん「経済の話が難しいと敬遠している人が多いので、中学生ぐらいでもわかるんだというような話にしました。ただ、中学生が自らこの本を手に取ることは少ないと思うんです。親世代が子どもにちょうどいいかなと思って手に取って、自分も読んでみるというのを想定しました。
よく『子どもにお金のことを教えるのにどうしたらいいですか?』と聞かれることもあります。が、知識として教えるより、親を見て子どもは学ぶことが多いと思うので、むしろ親に読んでほしいという気持ちもあります。
お金の専門家といわれるような人でも、びっくりするほど"社会"を見ていない人がいて、株価さえ上がればよくなるというようなことを言っていたりします。特にこれはまずいなと思ったのは老後資金2,000万円問題のときです」
老後のために2,000万円貯めても意味がない
田内さん「僕は外資系金融企業に金利トレーダーとして16年務めていましたが、社会のことを考えないと将来の日本がまずいぞと思い、本を書こうと思いました。
それが2019年で、ちょうど金融庁のレポートに端を発した"老後資金2,000万円問題"が話題になっていた時期です。『2,000万円貯めれば大丈夫なんだ』と思って、お金をみんな貯めようとしていましたよね。僕は、多くの人が貯蓄目標に達することは、現実的には難しいと思っています。
それだけではなく、そもそも問題の本質は、少子高齢化によって社会全体の働く人の割合が減ることにあります。仮にみんなが2,000万円という貯蓄目標を達成できても、インフレが起きるだけで全体の問題は解決されません。実際に2,000万円では足りず、インフレの影響で今では4,000万円ともいわれています。そう思って本を出版したら、厚生労働省年金局の方から連絡をいただいたんです。意外な展開でしたが『お金を増やすことに集中しているのはよくない』と意気投合し、経済誌で対談もしました。
いまは投資ブームで、子どもにも小さいうちから投資を教えようとする親が増えているみたいですが、逆にそれがよくないと僕は思っているんです。投資は他力本願なところがありませんか。投資が社会を成長させるのは、そのお金を受け取って働こう、働いて今の社会で足りないものをつくろう、より便利にしていこうという人がいるからです。投資する人だけ増やしても投資される側の人がいなければ、ただのマネーゲームにしかなりません。将来ある子ども達は、投資される側に回って能力を発揮して欲しいですよね。逆に働いたら負けという風潮すら感じていて、この国はまずいなと危惧しています」
誰かを支えるからお金が稼げる
本書では税金や国債、選挙に票を投じる意味など、お金と社会のしくみが、目からうろこが落ちるとはこのこと? とびっくりしてしまうような筆致で解説されていきますが、最終章では「働くとは、お金を稼ぐことではなく、誰かの役に立つこと」と語られています。
田内さん「老後資金に2,000万円必要だ!といわれると、人生はお金によって支えられていて、誰にも頼れず自分ひとりで生きていかなきゃいけなくて、お金がないともう自分はダメになってしまう、となんとなく思ってしまいます。だけど、そうじゃない。お金が発生しないところでも人は支え合っていますし、お金を払うにしても支えてくれる人がいるわけです。つまり、お金だけじゃない人間関係をちゃんとつくっていくことや誰かの役に立つということがとても大事になります。
戦後復興から高度成長期は社会全体で何が必要かはかなり明確でした。それをつくるから経済成長するし、働いている人たちは人の役に立つかどうか考えなくても会社のためを考えれば結果的にそれが社会のためにもなった。ある意味、そこまで社会のことを考えなくてもすむ時代でした。
でも、これからは年功序列のような社会ではなくなっていくだろうし、大企業に勤めたら安泰というわけではなくなっていくでしょう。逆をいえば、ちゃんと人のために役立つようなことをするということ。もうちょっと"人間らしく生きる時代"になったのではないかと思うんです。
社会では絶対に一人では生きていけなくて、支え合って生きている。昔、お金がない時代には家族や周りの人たちで助け合っていたんです。お金というものが出てくると、お金を使って直接知らない人たちに協力をお願いすることもでき、自分たちでつくれないものを得意な人につくってもらえる。その代わり、自身も知らない人のために働いてお金を稼ぐ、それが今の支え合いの形なんです」
「社会の役に立とう」と思わなければ本は出せなかったかもしれない
田内さん「僕は学校で講演することもあるんですが、こんな三択のアンケートをしたことがあります。
『将来なにをしたいですか?』
1.社会の役に立つことをしたい
2.年収の高い仕事に就きたい
3.投資でお金を儲けたい
過去何回か聞いたんですが、 "年収の高い仕事をしたい"がだいたい5割。で、"投資で儲けたい"が3割、"社会のためになることをしたい"が2割ぐらいです。でも、年収の高い仕事に就こうとなると、資格をとってとか、大企業に入ってとか結構競争が大変です。
僕は数学が得意で、配属が数学を必要とする部署だったので、入社試験という厳しい競争には勝てたんですけど、会社に入る競争、そういう競争ってすごくしんどいですよね。働く理由が自分の安定した年収のためだけだと、協力者は現れません。ひとりだけの孤独な戦いを強いられます。
一方、僕は国語が苦手です。いまでも覚えていますが小学校3年生の読書感想文で挫折しました。でも、今こうして本を書いています。
僕みたいな素人が小説を書こうと思ったら、普通は小説家養成講座などにお金を払って書き方を教えてもらわなきゃいけないかもしれない。
だけど、小説を書きたいと思う理由が、『社会のためにどうしても作りたい』ということだと協力者が現れます。
小説の書き方は佐渡島庸平さんという編集者が教えてくれました。佐渡島さんは作家・平野啓一郎さん等の担当もされているすごい編集者ですが、そんな人に「お金払うので僕の小説を見てください」と言っても、絶対に見てくれません。ただ、『誰かの役に立ちたい』という強い想いがあったから協力してくれたんだと思うんです」
子どもにお金のことを教えるためのベースとは
田内さん「生きていくのがしんどい社会の中で、人に勝つ術を教えるのも必要かもしれません。しかし、みんなががんばるほどに競争が激化している状況もありますよね。それより、社会のことをみんなで考えるようになった方がいい。そっちの努力はみんなががんばるほどに生きやすくなっていきます。
社会をイメージするとき、国とかすごく大きなことを考える必要はなくて、自分の存在を認識できる場所だと思うとよいと思います。地域社会や学校という社会、会社の中のコミュニティ、どこでもいいので、そのなかで自分の役割というのを見つけて、自分の居場所を見つけることが大事です。そして何かするにしても社会のことがわかっていないと、お金をとにかく稼がなくてはと思ってしまう。その結果、協力者も現れなくなるし、お金自体が目的になってしまう。まずは社会と自分との関係を知ってほしいですね。親は子どもにテクニカルなこと、お小遣いの使い方などを教えなきゃと思いがちですが、まずベースとなる社会と自分との関係を知ろうということから始めてみることをおすすめします」
この本を読むと、お金と社会に対する視点がアップデートされ、自分と社会との関わり方や働き方、さらには、投資についても、投資はどうあるべきか深く考えるきっかけになるかもしれません。
田内学氏 プロフィール
お金の向こう研究所代表。作家。
外資系金融で金利トレーダーとして勤務し、現在は社会的金融教育家として活動中。 財政、年金、少子化問題、お金の教育などの講演を行う。
著書に『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)、『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)がある。
Interview&Words:INCLUSIVE.Inc
Photo:Daisuke Fujisawa
2024/4/26
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