「貯蓄から投資へ」という国のスローガンのもと、投資への関心が高まっていますが、それでも「投資はリスクがあるから怖い」と思っている人は少なくありません。しかし、お金の世界でいう「リスク」の意味を正しく理解しないと、投資におけるチャンスを逃してしまうことになりかねないため、注意が必要なのです。

●リスクといえば「危ういもの」「避けるべきもの」というイメージだが...

もし中古車を買おうとしたとき、営業担当者から「整備不良なので、確実に事故を起こします」といわれたら、あなたはどうしますか？　きっと「そんな危ない車、買うわけにいきません」とおっしゃるでしょう。

私たちの暮らしのなかで「リスク」といえば、「危険」「危うい」といったイメージがあります。道路脇に「この先危険」と書かれた看板があれば、「きっと危ないのだろうから、この先に足を踏み入れるのはやめよう」と思うはずです。

ほかにも、リスクという言葉は「たばこを吸う人は、肺がんの発症リスクが高い」といった使い方をします。このような場合も、リスクといわれると「なんだか怖いもの、避けたいもの」というイメージを持たれるでしょう。

従って、運転したら絶対に事故を起こす車には「リスク＝危険」を避けるために乗らないのが正解となります。

●「リスク」をお金の世界に置き換えると...

しかし「お金の世界」に置き換えると、このような「確実に何かが起こること」は逆に「リスクがない」と表現され得るのです。つまり、私たちが通常の認識としてとらえる「リスク」と、お金の世界でいう「リスク」は、意味が異なるのです。

お金の世界でいうところのリスクとは、「不確実性」という意味です。もう少しくわしくいうと「プラスに振れるかマイナスに振れるか、どうなるか分らない」という意味です。

つまり、100万円投資したものが、20万円の利益を生むかもしれないし、30万円の損失を被るかもしれない、プラスにもマイナスにもなり得る可能性が同時にあるということです。

また、プラスとマイナスに振れる幅が大きいことを「リスクが大きい」と表現し、振れる幅が小さいと「リスクが小さい」と表現します。この振れは振り子のようなもので、一般的にプラスに大きく振れるものはマイナスにも大きく振れます。同時に、小さくプラスに振れるものは、同様にマイナスにも小さくしか振れないという特徴があります。

つまりこれが「ハイリスク・ハイリターン」あるいは「ローリスク・ローリターン」という意味なのです。大きなプラスのリターンを得たければ、マイナスに大きく振れる確率も、同様に存在するということです。

［図表1］筆者作成

●「リスク」を正しく理解して、資産形成のチャンスを掴もう

近年では国を挙げて「貯蓄から投資へ」と国民に呼びかけていますが、投資への関心は高まりつつも、「リスクが怖い」と考え、しり込みしてしまう人も多いのです。しかしそれは、お金の世界でいう「リスク」の意味を正しく理解すれば、必要以上の怖いという感情を軽減できます。着実に投資のチャンスを掴むためにも、正しく理解していただきたいと思います。

また同時に、「不確実」であることも、しっかり理解しておきましょう。「今後どうなるか〈不確実でわからない〉なら、投資なんてやりたくない」と思ってしまうのも、また残念な考えなのです。

実はお金の世界において「リスク」は、「不確実」なものではありますが、起こりうる結果や確率が推計できておりある程度のコントロールが可能、マネージメント可能で必要以上に恐れるものではないと私は思います。これは、市場全体、国全体といった大きな単位になれば、これまでの実績を振り返り分析することで、傾向がつかめるという意味です。

このように、お金の世界も科学的な分析がなされており、リスクを低減させるためのテクニックとして「長期・積立・分散」の効果が検証されています。

［図表2］著者作成

「リスク」が怖くて投資に及び腰だった方も、「リスク」との付き合い方を理解して、投資への一歩を踏み出されてみてはいかがでしょうか？

山中伸枝
CFP
株式会社アセット・アドバンテージ　代表取締役

Words：山中伸枝（株式会社アセット・アドバンテージ）、幻冬舎ゴールドオンライン
Illustration：オノデラコージ

2024/1/15

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