環境保護の観点から近年注目されている「リユース」。リユースとは「再使用」を意味していて使用済みの製品を繰り返し使うことを指します。個人間（C to C）で中古品を売り買いできるフリマアプリも普及し「リユース」を身近に感じる方も多いのではないでしょうか。

リユースは、経済的なメリットも大きく、消費者は高品質な中古品を求めていることから、企業もこれに応える形でリユース市場を拡大させています。不要なものを価値あるものに変える循環経済やリユースの魅力について深掘りします。

今回は、中古品を売りたい人とプロの査定士を結びつけるマッチングサービス「ウリドキ」を提供する「ウリドキ株式会社」代表取締役・木暮康雄さんに、お話を訊きました。

「ウリドキ」では、写真を撮って出品するだけで、手軽に査定を受けることができ、複数の査定の中から納得のいく査定士に商品を買い取ってもらうことができます。個人間の取引である「C to C」に対して、個人が中古品販売事業者と取引する「C to B」のプラットフォームとしてリユース業界を盛り上げているのです。

1人約53万円の隠れた資産を持っている説

───まず初めにリユースの魅力はどんなところにありますか？

木暮康雄さん（以下木暮さん）「多くの場面でリユースは"3R"（リデュース・リユース・リサイクル）のひとつとして言及されますが、その中でもリユースには特有の魅力があると思います。それはアイテムを売却する際、すぐにインセンティブを得られる点です。

同じく"3R"として語られるリデュース（ごみや資源の使用量を減らすこと） では、レジ袋のかわりにエコバッグが必要になったり、リサイクルでは原材料に加工するために手間やお金が必要となったりします。では、リユースの場合はどうでしょうか。

リユースはものを他者に譲渡する行為を指していて、 金銭的な取引が行えるだけでなく、無料での譲渡、たとえば先輩から後輩へ、親から子どもへといった形でも行われます。こうした譲渡を通じて、金銭だけでなく、心の満足感や感謝の気持ちといった精神的な報酬も得ることができます。

結果として、リユースはものの流通を通じて何らかの価値を得ることができ、さらに環境にもよいという、非常に大きなメリットを持っています。このような理由から、リユースは今後もさらなる注目を集めるでしょう」

───リユースの経済効果について教えてください

木暮さん「リユースの経済効果については、驚くべきデータがあります。年末の大掃除では家庭から大量のゴミが出るかと思いますが、フリマアプリを手掛けるメルカリがプレスリリースで、『「2023年版 日本の家庭に眠る"かくれ資産"調査」 国民一人あたり"かくれ資産"は平均約53.2万円、年末年始の大掃除で捨てる予定の不要品の資産価値は平均8.5万円相当に』と発表しています（※1）。掃除で出たごみを出す前に、8.5万円分の価値を捨ててしまっているかもしれない、と見直してはいかがでしょうか。

一度自分の持っているものの価値を見返してみたり、リセールできるものを買ったりなど、リユースを意識して生活してみることをおすすめします」

日本のリユース品が人気のワケとは？

───日本のリユース品が海外から注目されていると聞いたのですが、いかがでしょう？

木暮さん「中古品売買市場全体の話をします。日本のリユース品は経済的な要因から海外で注目されています。特に円安やインフレの影響で（2023年11月現在）、海外から見た日本の商品が手頃な価格に感じられるため、リユース品の輸出が増えています。

また、コロナの影響でインバウンド観光客が減少し、国内の消費が落ち込んだことも一因として挙げられます。この結果、多くのリユース企業が海外展開を強化しました。実際、企業が商品を自らのECサイトや店舗で販売するよりも、海外市場に出すことが増えてきています。

さらに、リユースオークションという専用のオークション市場が存在しているのですが、ここで海外との取引が活発に行われています。コロナの影響で従来のオフラインのオークションは難しくなり、ITとAI技術を活用したオンラインオークションが普及しました。このオンライン化により、海外のバイヤーも容易に入札できるようになったのです。

世界的な情勢の他にも、日本のリユース品は良質で偽物が少ないという点や、日本の接客サービスの質の高さから海外での人気を高めています。

もし、日本のすべてのリユース品が海外に輸出できると、数十兆円の経済効果が期待できると私は考えています。日本のリユース品の価値を最大限に引き出すことで、国の経済力を向上させることは可能ではないでしょうか。これは単に眠っている資源を活用するだけのシンプルな方法なのですが、認知されていない、ゆえに実行されていないのだと思います」

リユース市場が拡大することでさまざまなものの循環が加速する

───フリマアプリのようなリユース関連企業についてはどのように考えられていますか？

木暮さん「フリマアプリは現在、一般ユーザーに広く使われていると感じます。他にもリユース関連企業が存在していて、これらのC to Cプラットフォームは、古本や洋服、生活用品など幅広い商品を扱っています。個人間取引の1品あたりの平均金額は、大体2,600円～3,000円といわれており、最近はさらに上昇しているようです。

このような比較的安価な商品の流通に関しては、個人間取引は非常に有効だと思います。しかし、取引金額が10万円を超えると、取引の頻度は減少し、20万円を超えるとさらに少なくなるといわれています。高額な商品の取引に関しては、査定や品質管理が必要になるために個人間取引は難しくなるからでしょう。

高額商品については、プロのリユース企業や信頼できるプラットフォームを通じて取引を行うのが、安全だといえるでしょう」

───リユース市場はこれからどのようになると考えますか？

木暮さん「リユースの業界メディア『リサイクル通信』が発表した独自調査（※2）によると、リユース市場は13年間連続で拡大しており、2022年に、2兆8976億円に達したと発表しています。リユース市場はこれからも拡大していく流れだと考えています。たとえば、弊社でお取引いただいている中古品売買事業者から、東南アジアをはじめとする国々で、日本のリユース品に対する需要が増加していると聞いています。日本の古い商品や文化が新たな市場で再評価され、流通することで、リユース市場がさらに成長すると考えられます。特にスマートフォンのリユース市場が拡大傾向にあります」

今回は「ウリドキ株式会社」代表取締役・木暮康雄さんに、リユースについてお話をうかがいました。環境への配慮だけでなく、経済的なメリットでも注目を集めているリユース市場。年末の大掃除のときに不用品をリユースできないか見直してみませんか。また、将来リセールすることを考慮して価値が落ちにくいものを購入してみるのもよいかもしれません。

※1 出典：「『「2023年版 日本の家庭に眠る"かくれ資産"調査」 国民一人あたり"かくれ資産"は平均約53.2万円、年末年始の大掃除で捨てる予定の不要品の資産価値は平均8.5万円相当に2021年版 日本の家庭に眠る"かくれ資産"調査』 国民一人あたり"かくれ資産"は平均約34.5万円」（株式会社メルカリ）
※2 出典：リサイクル通信（運営元：株式会社リフォーム産業新聞社）リユース業界の市場規模推計2023（2022年版）

木暮康雄氏　プロフィール
ウリドキ株式会社代表取締役。Forbesオフィシャルコラムニスト。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了、2005年に学生起業し、漫画の全巻大人買いサービスをつくる。2014年に株式譲渡し、同年連続で起業。
売りたい個人と買いたいリユース企業を繋ぐ「ウリドキ」（https://uridoki.net/）、リユースに特化したニュースコンテンツを配信するWEBメディア「ウリドキプラス」を運営。著書に『リユース革命 「使わない」ものは「今すぐ」売りなさい』（幻冬舎刊）がある。

Interview&Words：Takanobu Sasaki

2023/9/27

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