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マネー
2023.12.15
高齢の親の認知症発症で起こる大問題...口座の凍結、不動産売却&資産管理も不可能に

日本では高齢化の進展とともに、認知症患者数の増加が懸念されています。厚生労働省によると、2025年には65歳以上のおよそ5人に1人が認知症になると推計され (「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」概要より)、これは高齢者の方ご本人だけでなく、ご高齢のご家族がいらっしゃる方にとっても気がかりな問題です。とくに資産防衛の面では、認知症を発症してからは対策が間に合わないものも多く、注意が必要です。

●親の認知症が引き起こす、大小様々なリスク

司法書士である筆者のところには「親が認知症になったら...」「親に少し認知能力の低下がみられ始めてきて...」といった相談が多数寄せられてきます。

高齢の親が認知症になった場合、健康上のリスクはもちろんですが、日常の法的な行為などにおいても大小様々なリスクの発生が懸念されます。

しばしば問題となるのが、①不動産の売却ができない、②銀行口座などが凍結される、③財産管理を簡単におこなえない、また将来的な相続(税)対策を講じることができない、などです。

①のリスク「不動産の売却ができない」という事態ですが、不動産の所有者が認知症になった場合は、そもそも売買契約が成立しません。例えば、高齢の親を老人ホームに入居させるため、親が暮らしていた実家不動産を売却しようにも、認知症であることから契約が成立せず、売却できない、といった問題が想定されます。

②のリスクである「銀行口座などが凍結される」ですが、銀行預金の引き出しや送金といった作業の1つ1つは、実際には民法上の一種である法律行為です。認知症になり判断能力が低下したとわかれば、金融機関は後日の顧客トラブルを防ぐため、預金口座を凍結することがあります。 銀行口座が凍結されると、日々の生活費が引き出せない、老人ホームや病院などの費用が支払えない、といった問題が起こってきます。

③のリスクである「財産管理を簡単におこなえない」ですが、これは遺言書の作成や生命保険の加入など、様々な相続の生前対策ができなくなってしまうことがあげられます。遺言書作成は単独で行う法律行為ですので、当然ながらそのためには、意思能力が必要です。

しかしながら、意思能力は数字で明確に定義できるものではありません。認知機能レベルの検査に用いられる、いわゆる長谷川式認知症スケールはありますが、「何点以下なら法律行為が無効」などと明確に定められているわけではなく、そもそも自筆証書遺言にしても公正証書遺言にしても、自分で記す、また公証人に遺言作成の依頼をするなどの自発的なアクションが必要です。

そのため、ある程度の意思能力が残存していなければ、遺言書の作成は不可能でしょう。また、相続対策 として用いられる一般的な生命保険(死亡時一時払いの生命保険)などへの加入も、各生命保険会社の判断によっては難しくなるのが現状です。

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●被害妄想が生じれば、親族関係にヒビが入る場合も

また、このような法的なリスク以前に、認知症特有の症状である被害妄想等の影響で、親きょうだいでもあっても接触や交流を拒まれたり、疎遠になってしまったりといった、人間関係の問題に発展するケースも多くあります。

たとえば、自分で子どもやきょうだいに通帳類を預けていたにもかかわらず、持ち去られたと大騒ぎしたり、「見知らぬ人が入ってきて免許証を奪っていった」などと言い出したりすることがあります。場合によっては、それらの被害について自分で弁護士や士業に対応を依頼したにもかかわらず、依頼したことを失念してしまう、といった事例も、筆者は実際に知っています。

このように、認知症によって「事理を弁識する能力を欠く(民法第7条)」状態になった方については、原則として民法上の法律行為(身分行為は除く)はできませんので、専門家としても、対策の手段が選べないというのが実情です。そうなると、いわゆる「成年後見制度」を使うよう、アドバイスすることしかできません。

●成年後見制度では「能動的な資産防衛策」は取りにくい

成年後見制度は、家庭裁判所の手続きを経て、財産を管理する代理人を選任する制度であり、 上記のような方々の財産を守る、大切な制度のひとつではあります。ただし、成年後見制度の成り立ちは、成年被後見人(後見をされる人)が「意思能力を欠く」ことを前提とし、判断能力を「制限されているもの」として成年被後見人を守る制度です。

成年被後見人のしたことは、日常生活の取引を除き、意思能力に欠けており判断能力も減退していることから「無効」にできることで、成年被後見人を守る制度です。成年被後見人の法律行為は、日常生活の買い物などを除けば、基本的に無効にすることができます。

具体的には、悪質な訪問販売の標的にされるひとり暮らしの認知症の高齢者の方などには極めて適している制度でもあります。

●早い段階で「家族信託」の検討を

ただし、上記の事例からもわかるように、成年後見人の制度は、高齢者の資産を「守る」ことには適しているものの、資産管理・資産防衛のための積極的な活用は難しいのが現状です。

もっともこれは、成年後見人にあまりに積極的な権限を与えてしまうと、場合によっては線引きや歯止めが利かなくなる懸念もあることから、制度設計上やむを得ないところでしょう。

逆説的にいえば、成年後見人制度を用いざるを得ない段階にまで認知症が進んでしまった場合、常識的な相続税対策や、適切な時期での不動産の自由な処分については、むずかしいと言わざるを得ないのです。

成年後見制度を利用する場合、意思能力がある段階だと、あたり前にできることまでも制限されるように感じることから、二の足を踏む方もいるのだと思います。

上記が、高齢となり認知症となった親、そしておじやおばなどに起こるリスクだといえます。

昨今では、このような認知症の対策のひとつとして「家族信託」という手法が多く用いられており、司法書士の間でも、年々取り扱いが増えています。
この制度は、ご家族のどなたかに財産を移転した上でその財産の管理を任せるものです。当事者だけの契約で行える点や、財産を処分する権利をも与えることができる点が、成年後見制度に比べて優れていると言えるでしょう。

ただし、家族信託というのは信託契約という「契約行為」をすることになりますので、判断能力の残っている状態でしかできません。そのため、認知症になる前に、何らかの対策を立てておくことが必須だといえるでしょう。

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近藤 崇氏プロフィール
取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。

Words:司法書士 近藤 崇(司法書士法人 近藤事務所)、幻冬舎ゴールドオンライン
Illustration:オノデラコージ

2023/8/20

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