低価格な不動産小口化商品でも、株や投資信託より流動性（売買のしやすさ）が低いのが難点です。とはいえ、不動産がベースの商品であることから、一般的には、株のように大暴落が起こりにくいのは大きなメリットです。不動産価格上昇局面の上昇幅も株に比べると小さいことが多く、売却益を狙うというより、賃料収入等の運用利益獲得を狙うイメージなのが不動産小口化商品なのです。不動産小口化商品を株・投資信託と比較しながら、メリット・デメリットを見ていきましょう。

不動産と相続問題を専門的に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦先生が解説します。

株と比較したメリット...価格の変動幅が小さく、安定している

不動産小口化商品の、少額から投資できる点、不動産賃貸運営に携わらなくてもいい点等は、株や投資信託への投資との共通点だといえます。また、少額から投資できるため分散投資も可能になりますが、その点も類似しているといえるでしょう。

では、株・投資信託にはない、不動産小口化商品のメリットとはなんでしょうか？　それはズバリ、「価格の変動幅が小さい」ことでしょう。株は容易に売買でき、また、景気やニュース等に応じて価格も常に変動します。有事が起こればマーケット全体が暴落することもありますし、会社が破産すれば、せっかく買った株式の価値がなくなってしまう可能性もあります。

それに対して、一般的な不動産小口化商品は、「不動産賃貸経営に関する一定の権利」を保有するものであり、また、長期保有が前提のため、株式のように市場価格も公表されず、時価の上下に一喜一憂するものではありません。

株式の場合、配当や株主優待等によってリターンを得ますが、売却益で大きな利益を得ることも期待できます。他方、不動産小口化商品では、賃料収入などから得られる利益配当等の利回りによる収益を上げるものとして設計されています（空室となった場合の対応は、会社によって差異があります）。そうした意味では、一般的な不動産小口化商品は、利益を上げるまでに一定の時間がかかるものの、売買価格の安定性は比較的高く、株式と比較すると、不動産賃貸業、不動産投資に近い利益の上げ方をする投資商品だといえます。

株と比較したデメリット...流動性の低さ、利回りをはじめとする独自ルールにも注意

では、株と比較した場合のデメリットはなんでしょうか？　勘のいい方はお気づきかと思いますが、それは「流動性の低さ」です。売却の際、独自ルールによる縛りを受けるなどして、株ほど容易に現金化できないのです。

不動産小口化商品自体は、比較的安定した投資商品だと思いますが、注意しなければならないのは、この〈現金化する場面〉なのです。不動産小口化商品は、所有する出資金を売却することで現金化できますが、市場はなく、購入者を探す必要がある点に注意が必要です。

また、利回り・配当金等のルールについても運営会社ごとに決められていますが、基本的には、空室リスクによる収益変動の余地がある商品だといえます。

不動産小口化商品を購入する際は、どうしても運用利益に目が行きがちで、短期売却の可能性を念頭においていない方も多いのですが、売却方法についてはかなり重要な事項となるので、必ずチェックしておきましょう。

株や投資信託等については、証券取引所が整備されており、取引自体も統一的なルールによって行われていますが、不動産小口化商品の場合、もちろんベースとなる法律は整備されていますが、細かいルールについては、運営する不動産会社が定めた独自の決まりに基づいて運営されているのが現状です。

安定性と流動性...よく比較して判断を！

これらのことから、不動産小口化商品は株式より値動きが安定しているという特徴がある一方、流動性が低く、運営不動産会社ごとの独自のルールに注意して購入する必要があるという点が、不動産小口化商品を購入する際の、判断のポイントとなるでしょう。

山村 暢彦氏プロフィール
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社からの複雑な相続業務の依頼が多数。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

Words：弁護士　山村 暢彦（弁護士法人　山村法律事務所）、幻冬舎ゴールドオンライン
Illustration：坂木 浩子（株式会社ぽるか）
2023/2/11

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