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マネー
2022.09.22
田舎の実家不動産の相続どうする?

保有? 売却? 賃貸?…ケース別にプロが解説

親は田舎の実家暮らし。子どもたちは都会暮らし...。よくあるパターンですが、ここで相続が発生すると問題になるのが、実家不動産です。相続するか、売却か、それとも賃貸か...。どのように判断すればいいのでしょうか。

不動産と相続問題を専門的に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦先生が解説します。

まずは「実家に住みたい相続人」がいるかどうかを確認

田舎の実家の相続が発生したとき、まず考えるべきは「実家に住みたい相続人がいるかどうか」だと言えます。

実家で親と同居している子どもがいれば、そのまま住み続けたいというケースが多いでしょう。また、近場の賃貸マンション暮らしだけれど、生活圏も近いし、相続を機に実家に住みたいという方がいるかもしれません。まずはこの点を明確にしていくことが大切です。

不動産というのは、所持しているだけで「管理責任」が生じますので(詳細は後述します)、生活拠点である都心から、遠隔地の田舎の不動産を管理するのは大変です。そのため、まずは実家に住む希望がある相続人、実家を管理しやすい近隣住まいの相続人の有無を、最初に確認すべきなのです。

住む人のいない実家は、売却するのがベター

さて、本題の「田舎に住む親が亡くなってしまった」あるいは「田舎の親が施設に入り、実家が空き家になってしまった」という場合、子どもはどう対処するのがいいのでしょうか?

ドライに聞こえるかもしれませんが、「心情面」と「経済面」は分けて考える必要があります。心情面を抜きにすれば、住む人のいない実家は、売却するのがベターでしょう。

ご存じの方も多いと思いますが、不動産を所有していると、固定資産税が発生し、使用していなくても税金の負担があります。

そして、なにより重要なのは「不動産は管理していく必要性がある」という点です。仮に、空き家状態にしていた実家が、何らかの原因で火事になったり、また、台風でタイルや瓦の一部が飛散したりして他人にケガをさせたら、基本的に、不動産の所有者が賠償責任を負うことになります。これが「不動産を所有していることによる管理責任」です。

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じつはこの管理責任は、相続放棄を行ってもなくなりません。法律上、相続財産に含まれていた実家の管理責任のみ、相続人に残るという決まりになっているのです。

火事や台風といった突発的な事情だけではなく、たとえば、区分マンションを所有している場合なら、修繕積立金等の負担に加え、管理組合等による大規模修繕や建て替え計画などの対応が必要です。

また戸建住宅なら、近隣で土地の売買等が行われれば、その「境界立会手続き」を求められることがありますし、自分が売却したいときには、実家を測量する必要もあります。一般的には「境界確定測量」といって、近隣住戸の方に立ち会ってもらい、境界を確定する手続きが必要になるのですが、その際、近隣住民の状況を知らないと、立ち合いを依頼すべき方の所在がつかめないなど、境界確定測量で非常に苦労する可能性があります。

したがって「田舎の実家」という不動産の所持は、「使用していないにもかかわらず、維持コストが発生する」「長年空き家状況にすることで、管理責任を問われるリスクが上がる」「周辺事情が分からず、売却時に苦労しがち」といったデメリットが想定されます。

実家を「賃貸に出す」という選択肢は有効か?

家族の思い出の詰まった実家を手放したくないなら、ほかに取りうる手段は「賃貸」です。自分が利用できなくても一定の収入が得られ、大切な実家を残すことができるとなれば、よい方法にも思えます。

ただ、残念ながら簡単ではないのです。

ある程度老朽化した物件を想定した場合、賃貸に出せば、どうしても不具合や修繕の対応が必要になります。

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老朽化した戸建や区分所有マンションは、水回りや漏水等のトラブルが生じがちであり、その際の修繕費が数年分の賃料収入を吹き飛ばすことも多々あります。

また老朽化物件では、住民から、網戸の張替えや虫の発生への対処といった、細かな対応依頼がしばしばあります。実際に対応してみるとわかりますが、これは想像以上に煩わしいものです。

もちろん、管理会社に一任すれば負荷は減りますが、修繕費の妥当性について疑問が生じるなど、やはり一筋縄ではいきません。

筆者の経験では、老朽化物件の賃貸の場合、一度入居者を入れてしまうと、売却や建て替えのタイミングで入居者の存在が障害になるケースも多く、とくにトラブルになりやすいという印象があります。

大家業は不労収入のように語られることが多いのですが、老朽化物件を賃貸に回し、うまく売上を立て経費を抑えるのは、なかなか難しい作業なのです。

強いていうなら、「サブリース」といって、賃料を一定額保証し、リフォームも賃貸運営もやってくれる不動産業者もいたりしますが、当然、契約は業者の手間や利益を織り込んだものとなります。いわば、不動産が売却できない状況になるにもかかわらず、他方で、物件売却単価に比して、低額の収益しかあがってこない、というのが実情です。

やはり、経済的側面から考えると、遠方の老朽化物件は、売却のほうが効率的ではないかと考えます。

生まれ育った家、さまざまな思いはあっても...

今回の記事は、あくまで経済的側面から考えていった視点で、遠方の実家を「保有する場合」「賃貸する場合」のリスク等についてお話ししています。

筆者自身、自分の実家の話になると、非常に悩むと思いますが、少なくとも現時点では、売却のほうが経済的には効率的であり、安定するのだろうという印象を強く持っています。

生まれ育った実家について、さまざまな想いを持たれていると思いますが、保有・賃貸のリスクはどうしてもついてまわります。それらも含めて「実家の行く先」を考察・決断していくことが大切です。

山村 暢彦氏プロフィール
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社からの複雑な相続業務の依頼が多数。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

Words:弁護士 山村 暢彦(弁護士法人 山村法律事務所)、幻冬舎ゴールドオンライン
Illustration:坂木 浩子(株式会社ぽるか)
2022/8/31

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