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マネー
2022.10.18
銀座の画商が語る「NFTとアートとお金」

テクノロジーは新たな感動価値を生みだすか

NFTが話題です。

実際にNFTを購入してみたという人も少なからずいるのではないでしょうか。

アートと相性がよいとされるNFTですが、コレクションするだけでなく、その後の売買も行われているようです。アートにはお金と切っても切れない関係があるようです。そこにNFTという新しい要素が加わることで、どんな変化が起きているのでしょうか。

アートとお金に関する著書を上梓し、NFT事情にも通じる「翠波画廊」の高橋芳郎さんに「NFTとアートとお金」についてお話を伺いました。

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トークンはお金の代わりに使われる

『「NFT」という言葉を知っていますか?

NFTとはNon-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)の頭文字を取った略語です。

ノン・ファンジブル・トークンを日本語に訳すと非代替性トークンになります。

トークンとはゲームセンターで使われるメダルのような代用貨幣を指す言葉で、「しるし」という意味をもっています。デジタル世界では現実の貨幣の代わりにトークンが使われます。

みなさんもトークンを使ったことがあると思います。「ポイント」といったものは、提携店舗でこそお金のように使えますが、そのほかの場所ではお金としての意味をもたないトークンです。

これらのポイントはファンジブル(代替可能)なのでNFTとは異なります。Aさんが持っていた1ポイントをBさんにあげたとき、そのポイントは「Aさんが持っていた唯一無二の1ポイント」ではなく、他の多くのポイントと混ざって合算されます。

NFTの場合はそうではなく、そのトークンは誰が保有しているのかが常に問題になります。たとえて言えば、航空券やコンサートの座席指定券です。同じものが二つと存在しないので、他の券で代替することが不可能なのです。

ここで注意してほしいのは、紙の券そのものがトークンではないことです。最近ではデジタルチケットがよく使われているように、トークンの本質は「保有していることの証明」です。その座席に座る権利は私が持っているのだとスマホで証明できれば、紙の券は不要になります。

つまり、NFTの本質は「保有していることを証明するデジタルデータ」なのです』

NFTアートは画期的な発明だった

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『NFTが画期的なのは、画像などのデジタルデータに紐づけることで、そのデータを保有していることを証明できるようにしたことです。通常、デジタルデータというものは、コピーによってまったく同じものを簡単に作ることができます。しかし、NFTはコピー不可能なデジタルデータなので、唯一無二の保有を証明できるのです。

そして最近の流行が、画像データにNFTを紐づけたNFTアートです。

申し遅れましたが、私は銀座の翠波画廊のオーナーである画商の高橋芳郎です。

画商とか画廊というのは実体のある絵画を売る商売で、通常はデジタルデータを販売することはありません。いくらでもコピー可能なデジタルデータは、どれだけ解像度が高く美麗でも値段がつかないからです。

しかし、NFTはデジタルデータに保有している証を設定することを可能にしました。唯一無二の自分が保有しているデータであると証明できれば、デジタルデータであっても一点ものの絵画のように売買可能になります。

つまりNFTは、アート業界に新たな市場を開拓した画期的な発明となったのです。

2021年、ロシアのエルミタージュ美術館は、自らが所有するモネやゴッホの絵画作品をデジタルデータ化して、NFTアートとしてオークションで売り出しました。

その結果、ダ・ヴィンチ《リッタの聖母》の約1,650万円をはじめ、5点合計で約4,800万円もの売上になったそうです。もちろん現物はエルミタージュ美術館に残ったままで、購入した人が得たのはデジタルデータとそれに紐づいたNFTだけです。

ここで注意してほしいのは、NFTを購入した人以外がアートのコピーを持てなくなったわけではないことです。

たとえば《リッタの聖母》の画像は誰でもインターネットで見ることができますし、その画像データを個人のスマホやPCにコピーして保存することもできます。画像データに紐づいているNFTはコピーできませんが、画像データ自体は個人で楽しむ分にはいくらでもコピーが可能です。

つまり、保有している証明をもっていない人でも画像をコピーすることはできてしまう ―にもかかわらず、保有している証明に対しては結構な値がつくのがNFTアートの面白いところです』

NFTアートの売買で得られるもの

『2021年、デジタルアーティストBeepleのNFTアート《Everydays - The First 5000 Days》が、クリスティーズのオークションにて約75億円で落札されて話題となりました。

この作品はBeepleが13年かけて描いた5,000枚の絵をコラージュした記念碑的なものでしたが、いくらNFTによって保有している証明が設定されるとはいえ、画像のコピーが可能なデジタルデータがここまで高値になるとはほとんどの人が想像もしていませんでした。

この作品ほどではなくても、何千万円、何億円もの価格で売買されるNFTアートはいくらでもあります。子どもが描いた絵までが何十万円、何百万円で取引されています。

子どもや若い無名のアーティストもNFT技術を利用してアートを売るようになってきているという意味でも、NFTはアート業界に新風を巻き起こしていると言えるでしょう。それらはもっと気軽に数千円で買えるものがたくさんあります。

ではなぜ画像のコピーができてしまうNFTアートに高値がつくものがあるのか? ―そこがアートの面白いところです。

人はなぜアートを買うのかと考えたときに、通常は「美を所有したいから」と考えてしまいますが、それだけが理由ではありません。

NFTアートの場合は特に、現時点では市場が盛り上がっているため、価値が上がって高く転売できると考えているから、といった理由で購入している人も多く見受けられます。

もちろん、価値は変動するものですので、思惑通り値上がりせず、逆に値下がりする可能性だってあります。

NFTアートがお金のためだけに売買されているのかといえば、そうとも言い切れないのです。こんな話があります。

初期のNFTアートの一つである《CryptoPunks》シリーズは、誰でも描けそうなドット絵の顔ですが、カナダ人のリチャードさんは、このシリーズの#6046を約1,000万円で購入して、ネット上でプロフィール画像として使用しました。

使い始めて数カ月がたった頃、すっかりその顔画像に馴染んでしまったリチャードさんは、SNSで「どんなに高値がついても売らない」と宣言しました。その途端「11億円で売ってくれ」というオファーが来たのです。いたずらではなく正式な申し出でしたが、リチャードさんはこれを拒否して自らの名誉を守りました。

アートを購入するような富裕層はアートに託して、経済的な価値だけではなくステータスも手に入れているのです。アート作品が高くても売れるのは、それだけの財力があることを周囲に知らしめる役割をも担っているからです』

アートは人生を豊かにする

『現状、NFTアートの市場は、現物のアート市場と同じく玉石混交となっています。

さきほども紹介したように数百万円、数千万円の有名作品もあれば、数千円で買える作品もたくさんあります。

気に入った作品を購入する楽しみや、価格が上がるかもしれないという期待や、アート購入というステータスが手に入るところなどは、NFTアートも現物のアート市場と変わりがありません。

NFTが若い人に気軽なアート購入の道を開いたことはたいへん喜ばしいと思います。

私の個人的な意見としては、できれば実体のあるアート作品を買っていただきたい。

NFTでアート作品を所有することは、アート本来の感動体験を置き去りにして、経済的価値を優先して追求しているように感じてしまうのです。

古い考え方かもしれませんが、見ることによる感動体験こそがアートの本質です。

しかし、歴史を振り返ればアートは、パフォーマンスやインスタレーションといった体験を伴った表現手段へ移行したり、作られた作品より作り手のコンセプトの方が重要であると評価されたりと、価値のあり方を変えてきました。それと同様に、NFTによって、今私たちが現実世界の中で制度として受け入れているアートの楽しみ方とは違う、バーチャルの世界で経験する感動体験があらたな文化として制度化されていくのかもしれないと想像してみたりもします。

私自身はNFTアートには肯定的でも否定的でもありませんが、未来は想像もしていなかったかたちで展開するものです。

みなさまにはぜひアートの入り口としてNFTアートを活用していただければ幸いです。』

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翠波画廊代表 高橋芳郎(たかはしよしろう)

株式会社ブリュッケ代表取締役 1961年、愛媛県出身。地元の高校を卒業後、1979年、多摩美術大学彫刻科に入学。1983年、現代美術の専門学校Bゼミに入塾。1985年、株式会社アートライフに入社。1988年、退社、独立。1990年5月、株式会社ブリュッケを設立。その後、銀座に故郷の四国の秀峰の名を取った「翠波画廊」をオープンする。2017年5月、フランス近代絵画の値段を切り口にした『「値段」で読み解く魅惑のフランス近代絵画』(幻冬舎)、2019年『アートに学ぶ6つの「ビジネスの法則」』(サンライズパブリッシング)を出版。

Words:INCLUSIVE, INC.
写真提供:翠波画廊、高橋芳郎
Illustration:UNIT_ONE INC.

NFTについては、今後の法令諸規則の制改定により、内容が変更される可能性があります。
2022/8/3

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