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マネー
2022.11.04
まるでドラマ! 2代目 vs. 3代目...とある「電子部品メーカー」火花散る事業承継トラブル

先代社長が画策した「経営権奪還計画」の意外な結末

多くの中小企業が抱える「事業承継」の問題。想像以上に難しいのが、親族内承継のケースです。遠慮がないことから、意見や利害関係のぶつかり合いがエスカレートしやすく、周到な準備が不可欠です。

不動産と相続問題を専門的に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦先生が、前回の田舎の不動産相続の解説に続き、事業承継トラブルの事例を解説します。

アイデアマンの初代が築いた企業、3代目までバトンが渡るが...

【主な登場人物】
初代社長:山田健一
2代目社長:山田雄二(初代社長の実弟)
3代目社長:山田孝弘(初代社長の長男)
2代目社長の雄二の娘婿

この電子部品製造会社は、高い技術力と開発力を持ち、アジアやヨーロッパ各国でもビジネスを展開する優良企業です。創業者で初代社長の山田健一さんは、技術開発が得意なアイデアマンであるとともに、自ら海外に出向いて売り込みをかけるといった営業力も持ち合わせた人でした。

そんな名物社長も70代半ばを過ぎ、引退を決意。2代目社長となったのは、長らく仕事を共にしてきた、少し年齢の離れた初代社長の実弟・山田雄二さんでした。

雄二さんは慎重な性格で、行動派の健一さんをうまくサポートしてきました。代替わり以降、経営も雄二さんの性格同様堅実で、初代社長の兄が拡大したビジネスをうまく定着させたかたちです。

しかし、そんな2代目社長も70代にさしかかり、世代交代を考えるようになりました。3代目社長となるのは、やはり仕事を共にしてきた、初代社長の長男・山田孝弘さんです。

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孝弘さんは、叔父で2代目社長の雄二さんから1年間にわたって経営の手ほどきを受けたあと、3代目社長として社長の椅子を引き継ぎました。

「孝弘君、あとは任せた。私は悠々自適の毎日を送るよ」

「雄二叔父さん、おつかれさまです。本当にありがとうございました」

一見、承継はうまくいったかに見えました。

3代目社長の行動に納得できず、返り咲きを狙う2代目社長

ところが3代目社長の孝弘さんは、もともと開発畑の人ということもあり、父である初代社長の健一さんと同様、好奇心に駆られると間髪を入れず行動に移してしまうタイプでした。2代目社長の雄二さんの下で働いていたときは控えめにふるまっていましたが、経営者の立場になった途端、新たなビジネスを開発・展開しようと走り始めたのです。

思いついたアイデアを実現すべく、会社の資金を惜しげもなく使って開発を進めますが、初代社長と一緒に仕事をしていた古参の社員たちは、そんな3代目社長を支持。みんな夢中で仕事に没頭します。ところが、その状況を看過できなかったのが、2代目社長を引退したはずの雄二さんでした。

「孝弘君! そんな仕事のやり方をして、会社が傾いたらどうするつもりだ!」

「開発につぎ込んだ資金の回収のめどは立っているのか? 倒産してしまうぞ!」

2代目社長の雄二さんの味方になったのは、役員として名を連ねている雄二さんの娘婿でした。2代目社長として義父雄二さんが堅実に経営してきた会社を、3代目社長が好き放題しているという構図に見えたのでしょうか、開発のために資金を注ぎ込む3代目社長の孝弘さんに鋭い視線を送っては、従業員たちの目の前で収益について追及を繰り返しました。

ある日、鼻先に資金繰り表を突きつけられた孝弘さんはついに折れ、社長の椅子を2代目だった雄二さんに返還し、自分は開発現場の仕事に戻ることになりました。

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しかし、事態はそれだけでは収束しませんでした。社長に返り咲いた雄二さんと、雄二さんの娘婿が結託し、3代目社長の孝弘さんを会社から追い出すべく、圧力をかけ始めたのです。

孝弘さんは、身内からの仕打ちにショックを受け、憔悴してしまいました。

古参従業員たちは、3代目社長の味方に...

「孝弘さん。私たちはいまの社長(2代目社長)の下では、やりたい仕事ができない。お願いですから、社長に戻ってくれませんか?」

そう声をかけたのは、初代社長と一緒に仕事をしてきた古参の社員・鈴木さんをはじめとする、開発現場のベテランスタッフたちでした。

「鈴木さん、ありがとう。そうですよね、もう一度父の時代のように、開発に没頭できる環境に戻しましょう」

しかし、そんな流れを察して慌てたのが、役員に名を連ねる、返り咲いた現社長(2代目社長)雄二さんの娘婿です。

「お義父さん! 孝弘さんが、開発現場の従業員を巻き込んで、もう一度社長に戻ろうと画策しています」

娘婿から話を聞いた現社長の雄二さんは、本格的に孝弘さんを追い出そうと圧力を強めますが、開発部門の従業員たちが味方についた孝弘さんも黙っていません。

その結果、「2代目社長+娘婿 vs. 3代目社長+古参従業員」という構図のもと、双方が弁護士を立てて争うという、大変な紛争に発展してしまいました。

身内の紛争を強制終了させた「ショックな出来事」

数ヵ月に渡って激しいやり取りが繰り広げられましたが、ここで事態は急展開します。孝弘さんから社長の椅子を強引に奪い返した現社長の雄二さんが突然死してしまったのです。

双方の弁護士が代理人となって整理・調整した結果、今回の事業承継において、娘婿をはじめとする親族の役員は「相続」として資産を承継し、孝弘さんには3代目社長として会社の経営権を渡すという形で権利関係を着地させ、なんとか会社経営を持ち直すことができました。

他人事ではない...中小企業の事業承継に不可欠な「用意周到さ」

役員である娘婿と、社長の椅子を追われた孝弘さんが争っている間、新規プロジェクトの進行も、新規の契約もほぼ壊滅状態となり、会社の運営が停滞して、まさに創業以来の経営危機に瀕する事態となりました。

経営者の方は、「まさか、ウチが...」と思われるかもしれませんが、こういったトラブルに見舞われる企業は多く、経営者だけでなく従業員にとっても、他人事ではないのです。あなたが知っている会社、あなたが勤めている会社にも起こりうることです。スムーズな事業承継ができなければ、会社そのものが傾き、関係者全員が窮地に追い込まれてしまいます。

それを防ぐためにも、早め早めに、周到な対策を立てておくことが必要なのです。

※ 登場人物の名前は仮名です。実際の事例から変更している部分があります。

山村 暢彦氏プロフィール
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社からの複雑な相続業務の依頼が多数。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

Words:弁護士 山村 暢彦(弁護士法人 山村法律事務所)、幻冬舎ゴールドオンライン
Illustration:坂木 浩子(株式会社ぽるか)
2022/9/20

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