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マネー
2019.07.16
少額からできる、新しいアーティスト支援の仕組み

誰もがパトロンになれる革新的アプリ「ArtSticker」

アート作品を制作するのにはお金が必要。でも、アーティストの懐にお金が入るようにするためには、作品を誰かが購入するか、展覧会の入場料収入に頼るかしかありません。私たちがもっと気軽にアーティストを支援できる仕組みがないものか......。そんな思いをかたちにしたのが、革新的アプリ「ArtSticker」。このアプリを運営するThe Chain Museumを率いるのは、「Soup Stock Tokyo」などでおなじみのスマイルズの代表取締役社長として知られる遠山正道さんです。

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Photo: YAMAGUCHI KENICHI JAMANDFIX


気に入ったアートを120円から支援

さまざまなアート作品が詳しい解説とともに掲載されたアプリを見て、いいなと思った作品に金額に応じた色の「スティッカー」を送ることで、直接アーティストを支援する。その証は、作品情報の下に時系列順に掲載される自分の名前。そんな画期的な仕組みが、2019年2月にiOSオープンベータ版が発表されたアプリ「ArtSticker」です(上写真は、2月23日〜3月3日に開催されたアートとテクノロジーの祭典『Media Ambition Tokyo』での展示・導入風景)。

「このアプリは鑑賞者が直接アーティストを金銭的に支援することができる、これまでになかった"マイクロパトロネージュ"の仕組み。作品を見ていいなと思ったら、120円〜11,800円 の範囲でサポートすることができます。実際に支援した人の名前と、その金額を表すスティッカーが掲載されるので、ファンにとっては自分の趣味の表現にもなるし、作家にとっては"ファンの見える化"にもなる。両方にとって幸せなアプリなんです」

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高騰化するハイ・アートの世界

そう話す遠山さん。もともと美術全般に造詣が深く、自身も作品制作を手がけるほか、スマイルズ自体もアーティストとして「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」に参加。個人として、また会社として作品購入も積極的に行ってきました。そんな遠山さんが、アートを愛好する個人とアーティスト個人をつなぐような仕組みづくりをするべく、クリエイター集団のPARTYと共同出資でThe Chain Museumを立ち上げたのは、2018年11月のことでした。

「2017年の夏に、スイスのバーゼルで開催される世界最大規模の国際アートフェア、アート・バーゼルに行ったとき、また一段階、価格帯が上がったように思ったんです。『これいくら?』と聞いたら『2億円です』みたいな。それで、ある種の疎外感のようなものを感じながらバーゼルを後にしたんですよ。スマイルズでコレクションをしているから、何か作品を買うつもりで行ったのに、全然買えなかった」

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ピラミッドの裾野のアート愛好者にも光を

そんなとき、遠山さんが抱える悶々とした気持ちに気付いたのが、ロンドンに暮らす遠山さんの娘さんでした。

「バーゼルの後に娘と会ったら、彼女が『なんでコレクションしてるの?』と聞いてくるんです。うーん、何でだろうと考えながら話していたんだけど、結局自分から出てきたのが『買うよりも、むしろつくりたくなった』という言葉で。そしたら、娘が『それならわかる』と。要するに、彼女も何か違和感のようなもの、ただ無意識に作品を買っている側でいいのだろうかという感覚を、私と共有していたんですね」

作品を買うこと以上に、自分たちにはアートに対してできることがあるのではないか。そこで遠山さんが考えたのが、"純粋な作品ではなく、システムをつくること"。

「アート・バーゼルを頂点としたアート資本主義を否定はしないけれど、ピラミッドの頂点のほうにいる人しか楽しめないのはちょっとおかしいじゃないですか。裾野の人たちにも、頂点の人よりもうんとアートに対する愛情が深く、知識も深い人はたくさんいる。その人たちがもっと楽しめて、アートとの関係性をもっと深めていけるものができないだろうかと思ったんです」

アートの常識を軽やかに覆す試み

そうして遠山さんが設立したのが、「ミュージアム」「プラットフォーム」「コンサルティング」という3つの事業モデルを掲げた新会社、The Chain Museumでした。

「我々はスマイルズとして飲食店をチェーン展開してきたわけだけど、チェーン店とアートって何か相容れない感じで面白い組み合わせじゃないですか。そこから考えて、小さくてユニークなミュージアムを世界中にたくさんつくったら面白いんじゃないかと考えました。本来ミュージアムって巨大だから、資金調達は大変だし、場所に固定されるし、重いイメージ。小さければ小さいほどユニークなことが実現できます。それから、個人とアーティストをつなぐ新しいプラットフォームとして考えたのがArtStickerの仕組み。コンサルティングとしては、空間や施設に合わせて最適なアーティストや作品をキュレーションしたりしていく。新しい商業施設に平面作品だけでなく、もっとインタラクションの要素がある作品を入れたり。アートを"コト"にするような挑戦をしていきたいと思っています」

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鑑賞者とアーティストの双方が幸せに

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なかでも、鑑賞者である私たちが能動的にアートに関われる仕組みが「ArtSticker」。展覧会や芸術祭などともリンクしているので、実際に作品と対峙したときに受けた感動を、スティッカーを送ることでダイレクトに表現できるのも魅力です。スマイルズが運営するレストラン「PAVILION」内にある名和晃平の「Black Ball」(上写真)や、自然電力と地域の協力によって建てられた唐津市湊風力発電所に生えている須田悦弘の「雑草」(下写真)のように、展覧会場以外の場所に存在する作品も今後増えていく予定です。

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「実際には、現場でスティッカーを送る人と、私が"ベッドスティッカー"と勝手に名付けているような、家でまとめて作品をチェックする人がいると思っています。今後は後者が増えていくんじゃないかな。ベッドの中から気軽に感想を送ったりできるようになったことで、アートのハードルが少し下がる気がします」

セルフブランディングの一助にも

「自分の興味・関心の対象がひと目でわかるので、自分のブランディングの一助にもなります。将来的には文化的な信用スコアみたいなもののひとつになるかも。もちろん、アーティスト側も喜んでくれています。自分の作品のサポーターがわかるので、『これで次の個展の案内が出せる』と。東京藝大の学生は、自分にこれだけファンがいるんだよ、ということが目で見てわかるので、『アートなんかで食べていけるのか、と心配する親にまず見せたい』と話していました。ライゾマティクスのメンバーは『コメントを読むのが楽しい』と言っていましたね。作家の意図したコンテクストを突き崩すような自由な感想を読むことで、次のアイデアにつながっていくということもあるようです」

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たくさんの個人が関わることでアートに自由を

今後は取り扱うジャンルを実験性の高い演劇やダンス、音楽などにも広げていく可能性があるというArtSticker。ただ、「まずは現代美術の世界をしっかりフォローしながら、取り扱う作品のレベルを高く保っていきたい」とも。いずれにせよ、私たち一人ひとりのアートへの参画が、固く閉ざされてきた業界に刺激を与えるのは間違いなさそうです。遠山さんは言います。

「先ほどお話ししたヒエラルキーの頂点にいる人たちとアート業界がお互いを守り合う世界を、こちらはむしろ利用しながら、そこに次なる領域を差し込んでいけるんじゃないか。私は『権威と資本主義を借りて自由と笑顔を獲得する』なんて言っているんですが、そんなことが実現できる気がしています」

他人の役に立って、自分の心も潤う。お金の有意義な使い道として、こうした選択肢を視野に入れておくのも、人生を豊かにするコツなのかもしれません。

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遠山正道
スマイルズ 代表取締役社長/The Chain Museum 代表取締役社長
1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年にスマイルズを設立、代表取締役社長に就任。食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイ専門店「giraffe」、現代のセレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、LOVEとARTがテーマのレストラン「PAVILION」「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」などを展開。スマイルズはアーティストとして「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」「瀬戸内国際芸術祭」にも参加。18年にPARTYとの共同出資でThe Chain Museumを設立。

THE Chain Museum
"アートの次のあり方"をつくるプロジェクト。アーティストとコラボレーションして、独自の小さくてユニークなミュージアムを世界中にたくさん生み出していくとともに、一人ひとりがアート作品に直接支援できるプラットフォーム「ArtSticker」も運営する。アートのさらなる自律と自由を後押しし、一人ひとりのアートへの参画を、これまでにない身軽で開かれたものにしていく。
https://t-c-m.art/

2019/4/10

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ArtSticker
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https://artsticker.app/
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