日本を代表するホテルのひとつ『ホテルオークラ東京』が、2019年『The Okura Tokyo』として生まれ変わったことをご存じでしょうか。1962年の創業当時から、日本の伝統美や文化を活かした佇まいで、多くのゲストを魅了してきた当ホテル。その伝統を引き継ぎ、さらなる革新を遂げていました。

コロナ禍で、気軽に非日常を楽しめる場所としてホテルが注目されている昨今、極上の「ステイケーション」を味わうべく、筆者は『The Okura Tokyo』を訪れました。

都市型高層ホテル「オークラ プレステージタワー」

『オークラ プレステージタワー』はオフィスも併設する41階の高層ホテル。『オークラ ヘリテージウイング』と共に『The Okura Tokyo』の両翼をなしています。客室は、368室。今回、筆者が宿泊したのは『プレステージルーム』。クローゼットを中心に回遊できる48㎡の空間です。

都心一等地にあるにもかかわらず、客室からの眺めが、素晴らしい。『The Okura Tokyo』が高台に位置し、高層ビルが隣接しないように建てられているためです。

ビューバスルームは、ステイケーションを一層楽しむ演出となるでしょう。湯船に浸かって、都心の展望を楽しめるなんて贅沢です。

時を超え建築家の想いを伝える「意匠ツアー」

ステイケーションを充実させるオプションとして、「意匠ツアー」がおすすめです。宿泊予約時にフロントで希望すると、オークラ プレステージタワー ロビー階の装飾について、45分ほどのガイドが受けられる、知る人ぞ知るサービスです（1名 1,500円）。

かつてのホテルオークラ東京は、「戦後のモダニズム建築の傑作」と称されました。その本館のロビーは、日本の伝統美を取り入れ、格式と心地よさを兼ね備えたゲストの憩いの場所でした。

都市型の高層ホテルとして生まれ変わったロビー階にもその意匠をしっかりと引き継ぎ、再現され、さらに進化を遂げています。新たな意匠を美しく調和させつつ、改修前の姿を再現したロビー空間に、「まるで生写し」と感じるゲストもいるそうです。

意匠のひとつひとつに建築家や伝統工芸職人の緻密な設計があり、一般のゲストがほとんど気づくことができないこだわりを「意匠ツアー」では説き明かしてくれます。オークラを象徴するモチーフは吉祥文様の亀甲をもとにした六角形ということも知りました。すると、ホテルの随所に六角形を発見できるようになりました。

再現されたロビーは当時のまま広々としています

ホテルの歴史と装飾がどのように設計されたのかを詳しく聞くことができます

旧ロビーから引き継いだホテルの象徴的な照明「オークラ・ランターン」は、形をそのままに最新のLED技術をとりいれています。

最高のウェルネス空間「Okura Fitness & Spa」で受けるスパトリートメント

『The Okura Tokyo』には、 ユニセックスで受けることができるスパトリートメントがあります。使用しているのは、フランスで誕生したスキンケアブランド 『ANNAYAKE（アナヤケ）』。

メニューは、５種類。東洋に伝わる自然哲学「五行思想」をもとに、木・火・土・金・水の五元素をイメージしたメニューとなっています。事前に受けるカウンセリングで、筆者は「Tsuchi」コースのボディートリートメントをセラピストから薦められました。「リチャージ」を目的としたトリートメントなのだそうです。

まずは、27階Okura Fitness & Spaで、温泉施設を利用することに。1時間ほど、ゆっくりと身体を温めます。ゆったりとしたドライサウナを満喫。

いよいよ、トリートメントです。脚から肩にかけて全身のこりをほぐしてもらうことに。圧の程度は、「強」を選択。右足からゆっくりとオイルが塗り込まれていきます。「Tsuchi」コースで特別に使われるのは、ウォーターメロンのオイル。西瓜のみずみずしい香りが部屋に満ちます。熟練セラピストの丁寧で心地よい圧と、アロマの満ちる空間で、いつの間にか夢見心地に。1時間の施術はあっという間に感じられ、至福の時が終わってしまうことがさみしくなってしまいます。仕上げにヘッドタッチで頭皮に心地よい刺激を与え、すっきりと整えてもらいました。

ホテルスパは、女性の利用が多いのではと思い込んでいましたが、しっかりともみほぐしてくれるコースなので男性にも非常に人気だそうです。実際に試してみて納得です。

天空のバーラウンジとオリジナルカクテル

ディナー後に、41階のバーラウンジ『スターライト』へ立ち寄ってみます。都会を見下ろせる夜景も最高です。そして、人を心地よくさせる、ほどよい暗さ。

『スターライト』には日本一のバーテンダーがいます。日本ホテルバーメンズ協会が主催するバーテンダー日本一を決める競技会「第32回H.B.A.クラシック 創作カクテルコンペティション チャンピオンシップ」でグランプリに輝いた、中野賢二さんです。日本一を勝ち取ったオリジナルカクテル『Filer（フィレール）』をオーダー。

ベースは、日本ウイスキーの樽で仕込んだ梅酒。2種のリキュールと蒸留酒、レモンジュースを加えます。それらをテンポよくシェイカーに注ぎ、手首を柔らかく使いシェイクする姿は、見ていて飽きません。

完成したカクテルは照明を落としたバーラウンジに映える赤。樽由来の香り、最初にくる甘味がしばらくするとすっきりとした後味に。梅酒の新たな可能性に気づく、オリジナリティー溢れるカクテルです。

日本一になるまでの中野さんの苦労話を肴に、カクテルを楽しみました。2010年から続いた中野さんの挑戦の成就は、『The Okura Tokyo』にとっても48年ぶりの快挙だったそうです。

静謐な朝の空間で堪能する伝統のフレンチトースト

朝の『The Okura Tokyo』の過ごし方については筆者の心は決まっていました。オークラ伝統のフレンチトーストを食べることです。

フレンチトーストは、ホテルオークラ東京創業当時から受け継がれてきたレシピで作られるもの。ヘリテージウイング ロビー階にある『ヌーヴェル・エポック』でも食べることができます。今回筆者が宿泊したプレステージタワーでも朝食はいただけますが、「せっかくなら」と思い予約を入れました。アラカルトの他、3種類の朝食コースから選んだのは、「 Beau Jardin（美しい庭）」と称されるコース。

フレンチトーストは丁寧に形を整えられており、見慣れているフレンチトーストと少し違います。こんがりと焼かれた表面にナイフを入れると、サクッと音が。噛む必要がないほどの柔らかさの内側と、カリッとした外側の食感の対比がたまりません。

ヘリテージウイング ロビー階も見ごたえがありました。

ヘリテージウイングから戻り、ロビーで朝食の余韻を楽しみます。前日の意匠ツアーのおかげで、『The Okura Tokyo』の伝統に包まれている気分です。そこかしこに「日本らしさ」を感じ、眺めることができる空間。まさにステイケーションの醍醐味が味わえるホテルです。チェックアウトまでの残された時間、「ひとり意匠ツアー」を楽しんでみるとします。

※新型コロナウィルス感染症対策により、ホテルの営業時間等が変更される場合があります。最新の情報は、『The Okura Tokyo』の HPでご確認ください。

Words & Photos：Makoto Ozaki
2022/5/17

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