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スポーツを通じて、より豊かな社会へ...ONE 4 ALLが目指す「新たな価値創造」
上質な革と職人の手仕事にこだわったスポーツブランドを展開する「ONE 4 ALL」。兄に西武ライオンズやボストン・レッドソックスで活躍した松坂大輔さんを持つ社長の松坂恭平さんは、自らも独立リーグでプレーするなど野球人生を歩みながら、スポーツ用品メーカーで会社員も経験。現在は少量生産で希少性の高い野球グラブなどのブランド「ONE OF THE ANSWER」を軌道に乗せ、「スポーツを通じて社会を豊かにする」という目標に向かって走り続けています。松坂さんが起業したきっかけ、ブランドに込めた思いなどについてお話を伺いました。
兄の影響で始めた野球
野球を始めたのは、小学校1年生から。そこには、2歳年上の兄である松坂大輔さんの影響がありました。小学校時代は、強豪の江戸川南リトルで活躍。ただ、厳しすぎる練習に疑問も持ち、中学校では軟式の野球部へ。坊主頭を強制する風潮にも抵抗があり、高校は都立高を選択。疑問に思ったことをそのままにできない性格は、当時から一貫していたと言います。
松坂恭平さん
「もっと近所の学校もありましたが、練習を見に行くとみんな坊主頭で、『なんで、無思考で坊主にするんだろう』と疑問を持ったんです。当時から、なんでも疑問に思うタイプだったんですね。進学先の都立篠崎高校の野球部は顧問の先生が監督で、生徒に任せる方針だったので、自分たちでメニューを考えて練習していました」
高校卒業後は、セレクションの誘いがあった法政大学へ進学。そこで4年間野球を続け、卒業後は一般企業へ就職する道を選びました。入社したのは、海外有名スポーツブランド会社の日本総代理店。プロ野球担当として球場に足を運ぶ日々を過ごしましたが、「プロ野球選手になりたい」という気持ちは消えず、会社を休職して独立リーグへ。2年間選手としてプレーしたのち、年齢的な面からプロ入りは断念し、再び会社員として野球と関わることになります。
「戻ってからはスポーツマーケティング部で働いていました。当時、野球のギアは扱っていなかったので、その立ち上げメンバーになったんです。国内やタイ、韓国などいろいろな工場に出向いて、クオリティの高いグラブを作ってくれる職人を探していました。その後は商品企画やブランドマーケティングの部署にも所属し、商品を作ってから買われるまでの流れをひと通り経験することができたんです」
自らオリジナルの野球ブランドを創出
組織の中で充実した社会人生活を送っていた松坂さん。ただ次第に、企画から商品化まで最短で1年半もの時間がかかることや、大量生産が是とされるビジネスのあり方に疑問を抱くようになります。そんななか、立ち上げたギア系商品が展開中止になることが決定。グラブの製造を担当していた工場に謝りにいったとき、松坂さんにある思いが芽生えました。
「その町工場の職人さんは、ゴールデングラブ賞を取るような選手たちのグラブを作るぐらいの技術を持っているのに、それを誰にも継承できずに終わってしまう。これはなんとかしたい、と思いました。そこで『もし僕が、個人的にグラブの販売をすると言ったら、やってくれますか?』と聞いたら、『もちろん、松坂さんがやると言うならやりますよ』と言ってもらえたんです」
それがきっかけとなり、オリジナルのグラブ作りを始めることに。会社を辞めて独立し、「ONE 4 ALL」を設立します。立ち上げた野球用品ブランド「ONE OF THE ANSWER」で扱うグラブは、熟練の職人が上質な革を目利きし、手作業で1日にわずか2個のみ作る、希少でクオリティの高いもの。受注生産が基本で、価格帯は8万~13万円と大手メーカーが販売しているグラブより高額ですが、そこには松坂さんの職人をリスペクトする思いが込められていました。
「工場を見学に行って、1個のグラブを3時間かけて作る姿を見たときに、職人さんたちが喜ぶのは、僕が高く買ってこの技術を正当に認めることじゃないかと思ったんです。この技術はちゃんと伝えなければいけないなと。野球って本当はすごくお金がかかるんですけど、庶民的なスポーツなので、安いのが正義と見られがちなんです。ただ、そのなかで衰退している産業もあるので、僕なりに何か手助けをしたい。だから僕のブランドのグラブは、他社より高いんです。でも、物づくりをされている方はすごく共感してくれます」
スポーツを通じて社会を豊かにしたい
「ONE 4 ALL」の哲学は「温故創新」。その4文字には、「古いものを大事にしながら、新しいものを創造していく」という松坂さんの思いが表されているそう。「新しいもの」には、「新しい市場を作ることに挑戦していく」という意味が込められていると言います。
「希少性の高いものを扱う市場を作りたいと思っています。これまで、野球のグラブに関してはそういう市場は存在しなかったんです。ラグジュアリーな商品もなければ、安くていいものもあまりない。だから我々は高くてとびぬけているものを作ろう、と思いました。大手メーカーと同じ価格で販売してしまうと、小さな会社は勝てません。グラブのクオリティにも自信があったこともあり、ならば比較されないポジションにいこうと考えて、最初に13万2,000円の、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手が使うのと同じモデルのグラブを出したんです」
柳田悠岐モデルグラブ
ブランドの正式ローンチから1年が過ぎ、いまでは商品の価値や松坂さんの考え方に共感する人が増え、注文数は順調に推移。開始当初から販売している人気選手のモデルに加え、今年3月には、兄・松坂大輔さんと共同開発したモデルも発売しました。大輔さんの現役時代の背番号にちなんで限定18個で販売したところ、大きな反響があったそうです。
松坂大輔との共同開発グラブ
「兄のファンの方たちから『松坂モデルはないんですか』と要望があったんです。とくに作らない理由もなかったので、『作ってもいい?』と本人に聞いて作りました。いままでの経験から『こういうグラブがいいよね』と案を出してもらって。反響はすごく良かったですね。これからもカラーリングやコンセプトが違うモデルを出す予定です」
万波中正モデルグラブ
今後は、野球界や社会に対して貢献できることがしたい、と松坂さんは言います。
「野球界で生きてきたので、野球界に対して何かしたいと思いますし、社会に貢献したいという気持ちが強いです。スポーツを通じて、社会を豊かにしたい。今は『豊か』とは何か、何が豊かな状態なのかと考えながら、仕事をしているところです」
「誰かのために、みんなのために」という思いを社名に込めた、という松坂さん。取材では、今後のプランを楽しそうに語り、「死ぬんじゃないか、というぐらい働きたい」とエネルギッシュに前を見据える姿が印象的でした。野球と会社員というふたつの道で培った経験を活かし、今後どのような「豊かさ」を実現していくのか。松坂さんのこれからの歩みはますます注目を集めそうです。
Words: 河鰭悠太郎
Photos: 株式会社 KPS
2024/7/26
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株式会社ONE4ALL
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https://one4all.co.jp/
https://shop.oneoftheanswer.com/
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投手用グラブ | 77,000円~ |
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参考コスト合計金額 |
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