「ワンちゃん、猫ちゃんの健康・生活にとって理想的なペットフードとは？」　売れ筋のマーケティング戦略やコンセプトのキャッチーさを優先することなく、獣医師がこの課題と真剣に向き合ってつくった"犬猫用おやつ"が人気です。

その名も「NAMAプレミアム 贅沢おやつ」シリーズ。天然鰹（カツオ）本来の美味しさを最大限に楽しめるよう"単一素材"にこだわり、加工段階で破棄されてきた部位「鰹ハラモ」を採用することで、サステナビリティにも配慮しています。

商品開発を手掛ける『25 Holdings Japan』 鎌倉オフィスを訪ねました。

獣医師によるペットフードへの問題意識から生まれた

同社はシンガポール発のペット用品オンライン販売サイト「perromart（ペロマート）」の運営会社。「NAMAプレミアム 贅沢おやつ」シリーズはJapanメンバーが初めてつくったペットフードです。最大の特徴は獣医師が監修している点。仕上がってきた試作品を確認する「第三者機関としての監修」ではなく、獣医師自身が製造者として食材選びから栄養・味・サイズなどの調整、包装方法の選定まで全工程に細かくたずさわっているのです。

鎌倉オフィスでは監修者である獣医師・原駿太朗さん（上の写真・右）と、コミュニティマネージャーとしてPRなどを担当する岩崎くるみさん（同・左）、そして原さんのキュートな愛猫「ドラヤキちゃん」（下の写真）が出迎えてくれました。

「ドライフードがペットにとっての理想形ではないと思うんです」

原さんは動物医療に従事するなかで、既存のペットフードに対し問題意識を抱えていたといいます。

「一般的なドライフードが"ペットフードの理想形"ではないとは常々思っていました。人間が与えやすい利便性・保存性が最優先された形状であり、犬・猫の食性（食の習性）とはかけ離れているとも言えます。もちろんペットと一緒に暮らす上でペットペアレント（飼い主）の利便性はとても大切です。けれど栄養面や嗜好性の観点から、ドライフード以外のフードも取り入れてほしいという思いが、NAMAプレミアム開発の根底にありました」（原さん）

一方の岩崎さんは、動物看護師として病院で勤務したのち同社に入社した経歴の持ち主。自宅では大型犬と一緒に暮らしています。

「ペットペアレントの皆さんはご存知のとおり、ドライフードの種類を変えただけでワンちゃん猫ちゃんはウンチの状態や気分に変化が出ます。皮膚がちょっと荒れてきたからお魚のいい油を与えよう......といった感じで、臨機応変にドライフードの栄養補助食として気軽に加えられるよう"おやつ"という位置づけになったのです」（岩崎さん）

「NAMAプレミアム 贅沢おやつ」シリーズで使われている鰹には筋肉や臓器、免疫物質を作り出す栄養素である「たんぱく質」が豊富に含まれているのだそう。

破棄されてきた「鰹のハラモ」でつくる"サステナブルなおやつ"

約２年前に鰹の水揚げ量日本一を誇る静岡県焼津港で"鰹のハラモ"と出合ったのを機に本プロジェクトは本格始動しました。ハラモは骨が多く処理コストが魚価に見合わないという理由からこれまで加工段階で捨てられきた部位です。

「実際にハラモを食べてみるとすごく美味しくて。なんとか捨てずに使い切れないかな？と考え始めたんです」と原さんは振り返ります。

魚の油は酸化が早く味が落ちやすいという問題を解消するため、特注フィルムで個別包装。時間が経過しても"生っぽい食感"と美味しさをキープできるように工夫を凝らしました。

「魚と聞くとついつい猫用と連想しがち。しかし「そもそも犬は鰹を食べてはダメなの？」という初歩的な疑問に立ち返りました。自社でテストしてみると、むしろ犬の方が鰹への嗜好性が高いことが分かり、犬猫両用とすることに決まりました」（原さん）

例えるなら「和食の小鉢」

ペットがどれくらい積極的に食べたがるかを指す「嗜好性」も、ペットフードにとっては重要な要素です。

「毎日バラエティに富んだ美味しいご飯を食べることが大きな喜びにつながるのは、ペットも人間も同じ。私たちも高級食を食べたい日もあれば、ジャンクフードが恋しくなる日だってありますよね」（岩崎さん）

「人間の食事に例えると、いつものドライフードが"白米"ならば、『NAMAプレミアム 贅沢おやつ』シリーズは"和食の小鉢"なんです。その日の気分や健康状態によって、こだわりの"小鉢"をペットの食卓にプラスするイメージ。ゆくゆくは日本各地の食材を楽しめるよう種類を増やしていきたいですね」（原さん）

スタッフ各自で試供品を持ち帰り、自宅のペットの食べっぷりを動画撮影して行う「嗜好性テスト」も繰り返しました。サイズ感や食感はもちろん、殺菌効果と高い嗜好性を両立できる加熱時間を割り出すことで、"ワンちゃん猫ちゃんが食べずにはいられない"ペットフードが完成したというわけなのです。

発売後、いつもは外で絶対にごはんを食べないというワンちゃんや、味に飽きやすいワンちゃん、リンパ腫を患い食が細くなった猫ちゃんなどのペットペアレントから、「食べっぷりがとてもよくて驚いた」という感想が寄せられたと原さんは言います。

「獣医師やセレクトショップのオーナーさんから喜びのご連絡をいただくことも......想像以上の反響にちょっと泣きそうになるくらい嬉しかったですね」（原さん）

筆者も自宅で愛犬たちに与えてみました。いつだって食いしん坊のコーギーとスムースコートチワワ。他のペットフードとの差を感じる間もなく一瞬でなくなってしまいましたが、匂いから美味しさが伝わるのでしょうか、おやつを前にしたときの喜び方や表情がまったく違った気がします。個別包装のため散歩中にも与えやすく、公園で大喜びする2頭を見て多幸感に包まれました。

「日本のペットフードの質を底上げしていきたい」

『25 Holdings Japan』の視線は、日本のペットフード業界全体にも向けられていました。

「プレミアムペットフードのクオリティを、日本のペットフードの"当たり前"にしていきたいんです。日本でもある程度の金額を払えばプレミアムペットフードを購入できますし、日々種類は増えています。けれど値段が高めな商品が多く、毎日与えるとなるとペットペアレントの経済的負担になってしまっていると感じています。

多くのペットペアレントがプレミアムな質のペットフードを日常的に与えられるよう価格帯を下げていくのも、僕たちが目指すことの一つ。それが結果的にペットとペットペアレントの幸せつながると信じています」（原さん）

「これからもワンちゃん猫ちゃんのよりよい食生活についてペットペアレントが考えるきっかけになり、それをより気軽に実践できるようなペットフードを柔軟な発想でつくっていきたいですね」と岩崎さんも意気込みます。

従来の形にとらわれることなく商品開発できる企業環境、そこにペット医療の専門家たちの並々ならぬ情熱が加わって、日本のペットフード業界にいま、新しい風を吹かせています。

Words: Riyua Joe（mogShore）
Photos: Takahiro Okamoto／mogShore
2022/5/12

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