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レジャー
2019.09.06
水面に流れる50年前の時間 5,000円

福島県大沼郡金山町の「霧幻峡の渡し」

手を浸せば切れるような水の冷たさ。尾瀬沼を水源とし、奥会津の山々の豊富な伏流水を集める只見川を、手漕ぎの渡し舟が進んでいきます。鳥のさえずりが残響し、そのわずかな谺(こだま)を川霧が包み込みます。水面に流れる時間は、私たちの日々の暮らしのなかではまず出合うことのない、どこまでも静かなものでした。

霧の理由

会津若松市から西へ約12km。福島県大沼郡金山町と三島町の町境にある只見川の峡谷が「霧幻峡」です。その名が表わす通り、発生条件が整った早朝や夕方、この谷に幻想的な川霧が漂います。

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なぜこの場所に川霧が発生するのか。先述のように、只見川は福島県と群馬県の県境に位置する尾瀬沼を水源としています。最上流部は福島県最西部と越後山脈の間を北へ流れ、田子倉を経て北東に向きを変え、霧幻峡に至ります。

霧幻峡まで、只見川の周囲には山しかないと言っても過言ではありません。国内有数の豪雪地帯でもある奥会津を西から東へ縫うように流れる只見川には、雪解け水を由来とする伏流水が大量に注ぎ込みます。

夏でも極めて冷たい只見川の水。そこに暖かい空気が流れ込むと、川の表面の水が温められて水蒸気が発生します。これが朝の川霧です。また逆に、温まった川の表面に冷たい空気が流れ込むと結露した水蒸気が漂います。こちらが主に夕方の川霧です。

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そして写真のとおり、平水時の只見川にはほとんど流れがありません。豊富な水量を持ち急峻な谷を流れる只見川は、戦前から電源開発事業の対象となってきました。電源開発事業とはすなわちダム建設です。

現在只見川には奥只見、田子倉を始めとして大小20以上のダムが存在します。つまりダムに挟まれた部分は湖のように静かな流れとなるのです。発生した霧は水流や川面の風の影響を受けることなく、長い時間滞留します。

奥会津の自然条件と、古くから進められてきたダム建設による人工の条件。このふたつによって、霧幻峡の川霧が生まれるのです。

復活した渡し舟

只見川沿いを走るJR只見線・早戸駅近くの「早戸温泉つるの湯」と、昭和39年(1964年)に廃村となった三更(みふけ)集落の間を結ぶのが「霧幻峡の渡し」です。かつて集落の人々の日々の交通手段であった渡し舟は、平成22年(2010年)の秋に観光用として復活を果たしました。

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この復活の立役者が、三更集落で生まれ育った郷土写真家の星賢孝さん(下写真・71歳)です。かつて三更では集落全戸が渡し舟を持ち、誰もが舟を漕ぎ対岸の早戸との間を行き来していたそうです。星さんは地域活性化のために、かつて自らも漕いでいた渡し舟を復活させる「霧幻峡プロジェクト」を立案し、新たな船を建造して定期運行をスタートさせたのです。

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実は「霧幻峡」の名称も星さんの発案です。行政上の地名として霧幻峡の名は存在しません。近年、テレビを始めとした各メディアに取り上げられながら、少しずつその名が広まっていったのです。

"ジブリ"の世界?

山深い奥会津がようやく新緑に包まれる5月、霧幻峡を訪ねました。舟を予約した午前10時、「早戸温泉つるの湯」の船着き場に到着。山の緑を映した只見川は深い翡翠色に染まっています。その川面を滑るようにして渡し舟がやってきました。

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最大12名が乗船できるという渡し舟。船頭は金山町観光物産協会の渡部貴裕さん(下写真・30歳)と小沼優さん(28歳)。ふたりは対岸の三更集落での散策ガイドも務めます。

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下流には真っ赤な早三橋。対岸に三更集落。上流左岸には無人の早戸駅が見えます。水の流れはほとんど感じません。ギイ、ギイ、という櫓の音と鳥のさえずり。谷にわずかに響く音が、逆にこの地の静けさを際立たせます。

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霧幻峡は岸から眺めても美しい景色を見せてくれますが、川面から見渡す風景は確かに見事です。青く澄んだ空、新緑の山々、清冽な川の水。山紫水明という言葉を映像にすれば、きっとこういうことなのでしょう。

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「この風景を『ジブリの世界のようだ』と言って喜んでくれる方もいます。最近はタイ、フィリピンといったアジアの国からのお客さんも増えているんですよ」という小沼さん。2018年は約3,300人の観光客が霧幻峡を訪れました。今年は5月の段階で1,000人を超え、昨年の人数を上回ることは確実だそうです。

15分ほどで対岸の旧三更集落の船着き場に降り立ちます。ここからは、廃村となった三更の散策です。当然ですが集落は無人で、只見川の水の上と同じ静けさに包まれていました。

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日本の村の原風景

「廃村の理由は裏山の崩落です」という渡部さん。「昭和28年から三更集落の裏山で硫黄の採掘が行われてきました。事業者が撤退したあと、廃坑後の坑道に雨水が溜まって大規模崩壊したといわれています」

昭和39年4月16日午前6時。背後の山腹上部、通称「ブナ坂」が大音響とともに崩壊しました。当時戸数10戸の集落を一瞬のうちに埋め尽くしたそうです。死傷者は出ませんでしたが住人は移転を余儀なくされ、三更集落はその300年の歴史に終止符を打ちました。

船着き場から離れ、木立に囲まれた集落の一本道を辿ります。緩やかな上り坂。道の右手が只見川、左手が山です。

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廃村から50年余りが経過していますが、思いのほか人の気配が残っています。観光客がやってくるからか、移転した住民が今も集落の墓参りに訪れるからか。あるいは星さんや観光物産協会の方々が折に触れ手を入れているからでしょうか。いずれにしても寂れた印象はありません。

観音堂、集落の墓地、住居跡、地蔵尊。かつて日本各地で見られた農村の風景もかくやと思わせる懐かしさを感じます。

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道の最奥に立派な古民家がありました。母屋と厩(うまや)がL字型になったいわゆる曲り屋ですが、厩の切妻の下に出入り口がついています。冬は屋根から下ろした雪が周囲に高く積もってしまうため、ここから出入りするのです。

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中を見ることもできます。土間があり、囲炉裏があり、屋根裏には蚕室があります。実はこの古民家、現在は県外の方が別荘として購入し、家主の不在時には観光客向けに開放されているのです。

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古民家の裏の石段を上がると集落の鎮守、大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)があります。小さなお堂の中には、祭祀に使用される注連縄や三方といった神具も残っていました。金山町で生まれ育った小沼さんと渡部さんは「いつかきちんと由緒を調べてみたい」と言っていました。

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50年前の時間

「霧幻峡の渡し」は貸し切りの手漕ぎ舟の往復で30分、三更集落の散策で30分というのが基本コースですが、三更集落の散策をせずに舟の遊覧だけで1時間を過ごすことも可能です。鉄道ファンであれば上流の早戸駅に向かい、只見線を眺めるのも楽しいはず。予約が必須ですので、そのときに相談しておきましょう。

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また川霧が発生する確率の高い時間帯は早朝もしくは夕方の遅い時間ですから、首都圏から霧幻峡を訪れる場合は前後での一泊をおすすめします。現地の「早戸温泉つるの湯」に宿泊してもいいですし、会津若松市内で宿を探してもいいでしょう。

霧幻峡はその幻想的な川霧が最大の魅力です。しかし、その日に霧が発生するかしないかは、結局のところ天気次第。ただ、たとえ霧を目にすることができなかったとしても、季節折々の素晴らしい風景が迎えてくれるはずです。

晴天のときには、只見川が周囲の山々を鏡のように映し出します。春の桜と新緑も、優しいコントラストで心を和ませてくれるでしょう。秋の紅葉は絶景です。目が眩しくなるほどに染まった錦繍の山々が迎えてくれます。

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そして、景色のほかにもぜひ味わってほしいものがもうひとつあります。それはこの霧幻峡に流れる時間です。住民の足として機能していた渡し舟の上での時間。廃村となったがゆえに残されたかつての日本の原風景のなかを流れる時間。都市生活を送る者が普段感じることのできない、ゆったりとした時間です。

そう、ここは「50年前の時間」を味わう場所でもあるのです。

Photos: Taku Kasuya Words: Tomoshige Kase

【参考】
金山町観光物産協会公式サイト(http://kaneyama-kankou.ne.jp)、三島町観光協会公式サイト(http://www.mishima-kankou.net)、「会津学」(会津学研究会)、「山の仕事、山の暮らし」(つり人社)、「分県地図 福島県」(昭文社)

2019/5/28取材
2021/6/24編集

営業時間:4月下旬~11月中旬の7:00から日没まで
※事前予約のみでの営業


料金:5,000円(3名までの乗合舟往復と散策ガイド1時間)
※4名以上の場合1名あたり1,500円、20名以上の場合1名あたり1,300円の追加

アクセス:磐越自動車道「会津坂下IC」から国道252号線で25分
列車の場合はJR只見線早戸駅より徒歩15分
※舟の発着場は「早戸温泉つるの湯」の船着き場

予約・問い合わせ先:
金山町観光物産協会 tel. 0241-42-7211(平日)
金山町観光情報センター tel. 0241-54-2855(土日・祝日)
奥会津観光 tel. 0241-42-2244

参考コスト
霧幻峡の渡し
3名までの乗合舟往復と散策ガイド1時間
5,000円
参考コスト合計金額
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