G7広島サミットが開催され、あらためて注目を浴びた広島。その代表的な名勝といえば宮島の嚴島（いつくしま）神社です。中世には平清盛が篤い信仰を寄せて大改修を施し、現在まで続く雅な佇まいとなりました。"日本三景"の一つで、ユネスコの世界文化遺産にも登録されており、国内外から観光客が訪れる人気の地ですが、実は岸から眺めるだけでなく、海から参拝する方法があるのをご存じでしょうか。平清盛をはじめ、古の人々と同じ海上からの参拝体験ができる、昔ながらの手漕ぎスタイルの「ろかい舟（櫓櫂舟）」をご紹介します。

乗れたらラッキー⁈　昔ながらの人力の舟で海上参拝

「手漕ぎの『ろかい舟』は、以前はどこにでもあったそうですが、エンジン付きの船が広まってからは珍しいものになってしまいました」と話すのは、宮島観光遊覧の代表取締役で船頭を務める沖本広重さん。2006年頃から運航を開始した「ろかい舟」は、嚴島神社の大鳥居を海上からくぐれる唯一の観光船なのです。

しかし、ここ3年ほどはピンチでした。大鳥居の大改修（2019年6月～2022年12月）とコロナ禍が重なり、観光客が激減したのです。ベテランの船頭も辞めてしまい、「ろかい舟」は存続の危機に陥ります。
沖本さんは500キロマラソンに挑戦しながらSNSでアピール。クラウドファンディングで全国から支援を得て、なんとか継続にこぎ着けます。

「ろかい舟」の大きな特徴は、満潮時のみの運航ということ。雨天は運休で、風や波の影響を受けるため、晴れていても休むことがあります。運航は土・日曜の10時～13時頃が中心ですが、潮位に合わせているので、最新情報はHPのスケジュールでご確認を。
「満潮時にしか運航しない」というレアさゆえ、宮島に何度か訪れている人でも、「ろかい舟」の存在を知らないことがあるのだそうです。

乗船場は嚴島神社参道の「石の大鳥居」近く。およそ30分に1便運航していて、繁忙期は並んで待つこともあるそうです。
受付を済ませたら、いよいよ出発です！

舟を進めながら船頭の沖本さんがガイドをしてくれます。
救命用具の説明に続き、伝統的な櫓（ろ）と櫂（かい）の操船について解説。上の写真でスタッフが持っているのが櫂で、ボートのオールのように漕ぐものだそう。

舟の後方で沖本さんが操っているのが櫓。左右に動かし、前進しながら舵もとっています。

漕ぐときに櫂を使っていなかったので、あとから沖本さんに尋ねたところ、
「"ろかい"舟なので本当は両方使いたいのですが、今は櫂を使える船頭がいないので、櫓のみで操船しています」とのこと。瀬戸内海の高齢世代は櫓も櫂も漕げる人が多いそうですが、使う機会も少なくなり、若い世代が技を受け継ぐのは難しいのですね。
船頭は沖本さんを含めて3名なのだそう。
「20～40代でみんな未経験者でしたが、宮島観光遊覧の創業者である父の指導で、漕げるようになりました。舟を自在に動かせるようになるには3～5年の経験が必要です」

それにしても、櫓一本でコントロールできるというのはすごい技術です。
「木の舟の重さは約2トン、乗員乗客あわせて約20名の体重もかかっていますね。この遊覧コースのスピードなら、櫓だけで十分に漕ぐことができます」

小さな船旅のハイライトは真下から眺める大鳥居

「ろかい舟」はエンジンがないので静か。スーッと滑らかに進みます。フェリーが通ると少し揺れるそうですが、この日はほとんど揺れを感じませんでした。
目の前に大鳥居が見えてきました。

舟はぐんぐん近づき、大鳥居の大迫力に圧倒されます。
干潮時に歩いて近づくこともできますが、やはり満ちた潮の上に建つ姿が絵になりますね。平清盛の時代と同じ、古式ゆかしい海からのアプローチが体験できるのは貴重です。

笠木（一番上の木）には、東側に太陽、西側に三日月をモチーフにした飾金具がありました。

通過しながら、「おお～」「でっかい！」などお客さんから歓声が上がります。
中央に掛けられた扁額（へんがく）も、沖側は「嚴嶋神社」、御本社側は「伊都岐島（いつきしま）神社」と2つあるのが真下から確認できました。扁額が２つ掲げられるようになった経緯は不明ですが、「伊都岐島」は「心身を清めて神に仕え奉る島」の意味で、島の古い名称を踏まえています。
一般的な鳥居は南向きや東向きが多いのですが、嚴島神社の大鳥居は珍しく北向きに配置されているそうです。

嚴島神社の大鳥居は高さ16.6m、幅24.2ｍと木造の鳥居として日本最大。奈良の大仏様と同じぐらいの高さです。現在の大鳥居は明治8年（1875年）に再建された国指定の重要文化財で、海水やシロアリによって劣化していましたが、約70年ぶりの「令和の大改修」でよみがえりました。

大鳥居を抜けると、目の前に嚴島神社が見えてきます。ここで沖本さんが声を掛け、全員そろって、座ったままの姿勢で二礼二拍手一礼。海から祈ります。

海上参拝のあとは、船頭さんが手伝ってくれる撮影タイム。
それが終わると、舟はゆっくりと大鳥居の西側へ回り込み、元の乗船場に戻ります。
サイドから見ると、大鳥居を支える2本の柱が、元の樹木を活かした自然な形をしているのがよくわかりました。

「これは乗るべきだね！」と笑顔で話していた女性2人組に、どんなきっかけで乗ったのか尋ねると、「たまたま通りかかって。昨日も同じ時間帯に来たんですが、舟はいなかったんです」。実は前日は突風があって、運休していたそう。この日乗れたのはラッキーだったのかもしれません。

約20分間の小さな船旅はあっという間に終了。最後には乗客から拍手が起こりました。

宮島遊覧観光では、宮島の対岸にある安芸グランドホテルの宿泊者限定で、ナイトクルーズも実施しています（こちらはエンジン動力の観光船で、大鳥居はくぐりません）。

ご縁があったら乗れるかもしれない貴重な「ろかい舟」。
嚴島神社を訪れる際は、ひと味違う視点で楽しめる、海からの参拝もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

Words : Yuki Asakura
Photos: Tomoe Fukusumi

2023/4/23

＜ストーリーに関するご留意事項＞

ストーリーは、BANK The Savings の目標設定を具体的にイメージするための情報提供を目的として委託先が作成した記事に、あおぞら銀行がVisaデビットの利用促進のためのサービス紹介などを追加したものであり、掲載の商品・サービスの誘引が目的ではありません。また、掲載内容は、作成時点における委託先における意見・見解が含まれるもので、個社・個別の商品・サービスを推奨・保証するものではありません。ストーリー内記載のコストは参考値であり、その他諸費用がかかる場合があります。特段の記載のない限り、ストーリー内記載のコストは税込価格とし、税率は10％（軽減税率適用商品は8％）とします。ただし、イートイン・テイクアウトで税率が変わる商品もありますので、詳しくは直接商品・サービスの取扱業者にお問い合わせください。各種割引、キャッシュバックなどは含まれていません。

情報の正確性、完全性、信頼性、適切性等に加え、配信時点で当該商品・サービスが存在すること、お客さまの購入・利用の可能性、価格および掲載企業（人）の内容に関し、あおぞら銀行は一切保証するものでありません。併せてご紹介するVisaデビットに係る優待サービスやキャッシュバックについては、予告なく変更または終了する場合があります。詳細については必ずリンク先のあおぞら銀行HPをご確認ください。また、投資勧誘や特定銘柄の推奨を目的とするものではありません。掲載情報に基づき行ったお客さまの行為および結果等について、あおぞら銀行は一切の責任を負いません。

掲載画像はイメージであり、実物の商品やサービスなどと異なる場合があります。

掲載の商品・サービスに関するお問い合わせは、あおぞら銀行窓口・コールセンターではお受けできません。直接商品・サービスの取扱業者にお問い合わせください。

BANK The SavingsはBANKアプリのみで提供されるサービスです。

BANK The SavingsおよびBANKアプリ、および併せてご紹介するVisaデビットに係る優待サービスやキャッシュバックについては、あおぞらホームコール(0120-250-399)にお問い合わせください。