一見するとまるで絵画のよう、あるいは日本庭園のような趣を感じます。そして近づいていくと、新緑や赤みを帯びた水草が揺れ、宝石のように輝く魚たちが気持ちよさそうに泳いでいます。「ネイチャーアクアリウム」と名付けられたこの「水槽の中の自然」はアクアリウム界にワールドワイドな革命を起こしました。その生みの親が「株式会社アクアデザインアマノ(ADA)」を創業した故・天野尚さんです。そのスピリットは今もADAそして世界中のアクアリウムラバーに引き継がれています。水槽に「自然を生み出す」という行為は、奥深い大人の趣味にも、子どものいるファミリーの楽しみにも通じるはずです。
今回は都内のアクアリウムショップ「アクアフリー」でその世界観を撮影しました。

魚のいる水槽にCO2を入れるという逆転の発想

ADAでネイチャーアクアリウムの啓蒙を行う「水景クリエイター」の一人、本間裕介さんは、「水草を繁茂させ水槽内に良好な環境をつくり上げるにはCO2（二酸化炭素）の添加が必要です。添加することによって水草の光合成は促進され、さらに水質をよくするためにも働きます。水中では水草の作り出した酸素はキラキラと輝く気泡となって現れ、その酸素で魚たちは暮らします。さらに魚の排せつ物を微生物が分解し、それが水草の栄養素に還元されるという、小さな生態系ができあがっているのです。このような仕組で水槽内の環境を維持する独自のレイアウト手法を提唱したのがADAの創業者でもある天野尚です」と語ります。その試みは全世界のアクアリウム界を驚かし、新たな潮流をつくりました。水草が美しく繁茂したネイチャーアクアリウムの水は輝きが違います。それは水草、微生物やバクテリアが見えないところで働き、水の透明度を上げているからなのです。

そんなADAが提唱するネイチャーアクアリウムの世界に飛び込む第一歩は、信頼のできる近くのアクアリウムショップを訪れることから。ADAの商品を扱うには、認定を受けた販売特約店になる必要があります。認定ショップには専門的な知識を持ち、そして何よりADAの世界観が大好きなスタッフがいます。ギア(水槽やフィルター、ライトなど環境づくりに必要なもの）から水草や魚の特徴、岩や流木を使った造形美の作り方をしっかりと教えてくれます。

ADAの世界観にひかれてショップを開業

今回訪れたのはそんなショップの一つ、東京都大田区下丸子にある「アクアフリー」です。まず目に飛び込むのは、水草が整然とそしてヘルシーに繁茂しているADAの水槽たち。オーナーの滝谷滋さんはADAの世界観にひかれて、５年前にショップを開店させました。

ADA製のアクアリウムアイテムは500種ほど。滝谷さんは「スタイリッシュで品質がよくて、そして使って楽しい」とその魅力を語ります。バクテリアが働き水草が成長しやすい土壌環境をつくるアクアソイル(水槽の底に敷く土壌）、水草の光合成を促すパレングラス（CO2拡散器）など、どれも自然環境の再現に必要なものです。しかもどのアイテムもデザインがシンプルで、インテリアに映えます。

初心者には60cm水槽がおすすめ

滝谷さんに初心者におすすめのセットを伺いました。まずは水槽ですが、小さいサイズが扱いやすいと思いきや「60cmのものがおすすめです。水量があり水質が安定しやすいので管理が比較的ラクです。ある程度の広さがあるので石や流木を組み合わせたレイアウトにも展開の幅を持たせられます」と教えてくれました。

ライトもADA製は十分な光量のため、失敗が少なく水草の成長が期待できるそうです。また伸びた水草の剪定を行うハサミやピンセットは必ず使うものなので、スタイリッシュで使いやすいADA製を用いると気分よく作業ができそうです。

「生き物が好き」が原点

滝谷さんにネイチャーアクアリウムの楽しみ方について尋ねると、「水草の成長のスピードや色合いの変化から、思い描いた理想の世界ができてくることです。水槽の写真を撮ってお酒を飲みながらレイアウトを再考したり、水草の成長・変化を見たりするのが至福の時間の一つです」と語ってくれました。

最後にADAの水景クリエイターの本間裕介さん（上の写真）にもお話を伺いました。「ネイチャーアクアリウムにおける主人公は魚だと思っています。暮らしやすく落ち着いた環境を作るために、水草を植えながらレイアウト構成のバランスを考えます。私も幼い頃から生き物が大好きでしたからその想いが今もあります」。

ADAが主催する水草レイアウトの造形美を競う「世界水草レイアウトコンテスト（IAPLC）」が2001年より毎年開かれており、今や世界の84カ国2,617作品がエントリーするまでの規模に拡大しています。どの作品にも手の込んだ、アッと驚くような水景が見られます。IAPLCの審査員も務める本間さんは、「大切なことは生き物のことを考えた作品世界だと思います。自然さながらの環境を生み出し、長期維持できる水草レイアウトが理想ですね」と語ってくれました。

水草レイアウトから生き物の暮らす環境を考える、本質がしっかりしているからこそADAのネイチャーアクアリウムはカッコいいのですね！

※参考コストに記載しているものは、「アクアフリー推奨初心者用セット」としての価格です。

Words: Tomohiro Tsuchiya @ Yellowjam
Photos: Hiroyuki Joraku

2021/7/6

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