ロシアのウクライナ侵攻があり、プーチン大統領の歴史観に基づく行動原理を解説する報道がたくさんありました。歴史の流れの中に国や私たちの営みがあることを再認識した人も多いのではないでしょうか。

もっと歴史を学びたくなった人は、歴史系Webラジオとして人気の『COTEN RADIO』をぜひ聴いてみてください。歴史はエンターテイメントだと感じられるでしょう。

『COTEN RADIO』を運営する株式会社COTENは、歴史を事業として扱うユニークな企業です。
今回は株式会社COTENの歴史事業の目的や事業を支援する『COTEN CREW』について紹介します。

取締役の佐野貴さんにお話を伺いました。

歴史を知ることでメタ認知が高まる

株式会社COTENは歴史という切り口で、人々のメタ認知を高めるきっかけを提供する事業をおこなっています。メタ認知とは自分や周りの行動や現象を客観的に捉えること。歴史を通して過去にあった人々や社会の動きを知ることで、自分を取り巻く環境に対して広い視野を持って捉えることができるようになるといいます。

「歴史の事象を通して別の社会や別の価値観を知ることができ、時代背景が変われば人間の行動が変わるということを理解できるんです。学べば学ぶほど高次元にいろんな角度で物事を見るようになるので、人間理解が加速します。歴史はメタ認知を高めるのに最適です」（佐野さん）

歴史を通してメタ認知をすることで、自分のものの見方にバイアスがかかっていたことや固定観念に囚われていたことに気づく。フラットな視点で世の中を見られるようになり、結果的にはより多くの人が自分と人のために考え行動している社会が実現できるようになる。これがメタ認知を通して株式会社COTENが目指す世界の形です。

『COTEN RADIO』の台本は200Pにも及ぶ

そんなメタ認知を高めるきっかけを提供するための活動の一つとして『COTEN RADIO』があります。JAPAN Podcast Awards 2019で大賞とSpotify賞をW受賞し、歴史を学べるWebラジオとして国内で最も有名なコンテンツの一つです。

『COTEN RADIO』の面白さを支えているのが個性あふれる４人のスピーカー。役割分担ができていることでリスナーの深い理解を助けています。

「まず当社代表でもある深井龍之介は物事の構造理解力が高くて説明に長けています。わかりやすい言葉でリスナーに伝える役割です。楊睿之（通称ヤンヤン）さんは特にわかりづらいところを噛み砕いて説明し、和ませるキャラクター。樋口聖典さんはリスナーに寄り添うような質問をして間を作る。当社の歴史調査チームでもある室越龍之介は学術的な説明が得意なので、的確に伝える必要がある箇所を担当しています」（佐野さん）

『COTEN RADIO』の特徴は非常に網羅的に情報を伝えていること。例えば織田信長なら武士の成り立ちから調べ上げて番組にします。複数名の歴史調査チームによる調査から作った台本は200ページに及ぶこともあるそうです。また、解釈が偏らないように参考文献をラインアップしたうえで「こういう角度ではこう伝えられている」ということをしっかり説明することも『COTEN RADIO』のこだわりです。

「『COTEN RADIO』を通して、学校の授業では名前を暗記しただけだった人物にこんなにもストーリーがあったのかと感動したり、戦争や宗教の成り立ちを理解できたりします。とても面白い人のインタビューを目の前で聞かせてもらっているような感覚を楽しめるのではないでしょうか」（佐野さん）

歴史をデータベース化し経営戦略に役立てる

株式会社COTENが主軸としようとしている事業が歴史のデータベース化です。これまでの世界で起こった歴史の事象を全て集約し、現在目の前にある課題の解決方法のヒントを得ることができるものを目指しています。例えば自分の子に会社を継がせる時にどのような問題が発生しうるかも、歴史の事例からある程度分析できるというのです。

「例えば古代中国の秦王朝は始皇帝の後に滅亡するのですが、どのようなプロセスで滅亡に至ったのかはあまり知られていません。そこをしっかり紐解いていくと、現代にも普遍的に活かせるモデルが浮かび上がってくるんです。側近にどのようなパーソナリティの人物がいたのか、カリスマ的なトップからカリスマがない息子に引き継がせるとなにが起こるのか、息子が生き残るためにはどういう側近をつけるべきだったのか。逆に中身が同じでも別の国や別の時代にはうまくいっている事例もあります。そのような情報を全て体系立ててデータベース化することで、企業の経営戦略に役立てられるのではないかと考えています」（佐野さん）

いまは歴史から紐解いた経営戦略をオフラインで企業に提供しており、大手企業の重要な意思決定に寄与した事例もすでにあるといいます。今後はオンラインからアクセスできるDBaaS（ディービーアース：サービスとしてのデータベース）を開発し、企業に歴史の事例を提供していくことが直近の目標ということです。とはいえ、収益化はまだまだ先。そこで、COTENはポスト資本主義的な行動に出ました。

『COTEN CREW』として活動を支援できる

株式会社COTENの活動を応援するサポーター制度をつくったのです。それが『COTEN CREW』です。個人は1口1,100円（月額）から、法人は55,000円（月額）から参加できます。

「リターンは設けていないので、僕達の活動に賛同してくれる方々に『COTEN CREW』に加わっていただきたいです。僕達が実現したいのは歴史という切り口で人々にメタ認知のきっかけを提供し、結果としてより多くの人が自分と人のために考え行動している社会。共感してくださる方は『COTEN CREW』として一緒に同じ未来の実現を目指していけたら嬉しいです」（佐野さん）

『COTEN CREW』の支援により社員の雇用や組織の拡大は順調に進んでいるといいます。現在の目標は先述の歴史のDBaaS実現のための資金調達。すでに次の調達は見込んでいますがまだ不足しているため、今後も『COTEN CREW』の募集に力を入れていくそうです。

株式会社COTENがおこなっている事業は人類5000年の歴史を紐解いて現代の人々の人生や組織を捉え直すというもの。ロマンに溢れると同時に人類の歴史全てが材料になる（まさにビッグデータ）という意味では、課題へのアプローチとして非常に理に適っているのではないでしょうか。

Words＆Photos: Tatsuya Ochiai　
2022/6/13

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