2024年ホリデーシーズン特集　第3弾！

夫婦が営む小さなフラワーショップ「cotito（コチト）ハナトオカシト」。店内では「エディブルフラワー」を使ったかわいい焼き菓子を販売し、SNSを中心に人気を集めています。

エディブルフラワーとは食用花。「食べられる」こと以外は生花と同じです。四季折々で異なる花が咲き、二つとして同じ表情はありません。そんなフラワーショップらしい一期一会の出会いを、「cotito」ではおいしさと共に楽しめます。

エキゾチックな植物と共存するフラワーショップ＆パティスリー

東京・西荻窪の駅前から商店街を10分ほど歩くと「cotito」があります。店側の努力で緩和されましたが、かつては開店前に行列ができ、現在も客足が絶えない人気のフラワーショップ＆パティスリーです。

フラワーショップに行列というのはあまり聞いたことがありませんが、扉を開けると......

その理由とご対面です。

カウンターや棚には、エディブルフラワーをあしらった美しいクッキーがずらり！

店名「cotito」のサブタイトルは「ハナトオカシト」。フラワーショップとパティスリーが両立する空間なのです。

オーナーは前山真吾（まえやましんご）さん。妻の由佳（ゆか）さんと夫婦で「cotito」を営んでいます。役割は真吾さんが花担当、由佳さんがお菓子担当です。

店内ではミステリアスな雰囲気を持った植物に囲まれ、絵本の中の実験室に来たよう。真吾さんの感性の赴くままに仕入れられています。

隣の建物には半地下のカフェも併設されており、オリジナルのスイーツもいただけます。

花束のように選ぶクッキーの詰め合わせ

贈り物として求められることが多い「cotito」のクッキーは、単品での購入のほか、ギフトBOXに詰めてオリジナルのクッキーセットをつくることもできます。ギフトBOXはクッキーが9〜18個入る大サイズ（550円）と、3〜6個入る小サイズ（380円）の2種類です。

詰めるクッキーはお好みで選べます。ゼロから花束を作るように、ピンときたものを手にとってみましょう。組み合わせ次第でかわいらしくも、シックにもできます。

今回は大サイズのギフトBOXにクッキーを9個詰めました。ラッピングのリボンは数種類のカラーから好きなものを選べます。

詰め合わせたクッキーの内容がこちら。

サブレの上にエディブルフラワーをのせて焼いた「ハナサブレ」。
味はプレーン・米粉・カモミールの3種類（各種250円）があります。

プレーンは小麦の自然な風味がほっとする味わい。
米粉は、米粉・アーモンドパウダー、無香のココナッツオイルなどを使ったグルテンフリーの生地です。冷やすとココナッツオイルの性質で食感が少し固めに変わるので、冷やすのもおすすめとのこと。
カモミールは生地に練り込んだ有機カモミールが優しく香り、おしゃれな風味を楽しめます。
これらはすべて卵・乳不使用です。

次に「お花と甜菜糖のアイシングサブレ」です。味は米粉・カモミールの2種類（各種380円）。日ごとにどちらか1種が店頭に並びます。

エディブルフラワーの色が鮮やかに見え、甜菜糖の甘さも楽しめます。米粉は卵・乳・小麦粉不使用、カモミールは卵・乳不使用です。

「箱の中を全部エディブルフラワーで埋め尽くすより、シンプルなクッキーも入れた方が奥行きが出ますよ」と真吾さんのアドバイス。
おすすめは、チョコレートに塩気がアクセントの「アーモンドビターチョコソルト」（250円／左）、緑茶特有の香りとほろ苦さを楽しめる「煎茶とチョコのクッキー」（250円／右）です。いずれも人気商品で、卵・乳不使用です。

クッキーはしっかりとした厚みでよい食べ応えです。
「cotito」のクッキーはほとんどが卵や乳未使用ですが、満足感のある甘さや香り、食感のよさは素材の制限によるハンディを感じさせません。味・見た目ともに「選んでよかった」とウキウキとした気持ちになります。

似たもの夫婦が描きつづけた夢

かつての真吾さんはフラワーショップで、由佳さんは飲食店でデセール担当として働いていました。二人が出会ったときから「いつか一緒にお店をやりたい」と夢を膨らませていたといいます。

「僕も妻も体で覚えるタイプでして。花選びもお菓子作りも、ここでは自分たちの好きにやらせてもらっています」

19歳で専門学校を中退したことをきっかけに、フラワーショップの仕事に興味をもった真吾さん。すでに20年以上この仕事を続けていますが「その道一筋」なんてかっこいいものではないと言います。

「そのときはもうフラワーショップ以外の道は考えられなくて、理屈よりもとにかくやるしかなかった。だから、なぜ花かと聞かれると難しいのですが、かわいい花も不思議な花もなんでも好きなので、"植物"というものに根本的に惹かれているのかもしれません」

一方由佳さんは、バイトで入った店でたまたまデザート部門を任されました。世間的には「パティシエ」とは呼びきれない、曖昧な立場にいたと真吾さんは言います。

「調理をする側の人間ではなかったですし、基本的な勉強をしてきたわけでもなかったようです。でも彼女は何ごとにも研究熱心で、頼まれてから人の何倍も試作をして、自分の体でやり方や正解を掴んで今があります」

行動派夫婦の特技と経験を掛け合わせて生まれた「cotito」。エディブルフラワークッキーのアイディアはすぐに出たものの、実現には困難を極めました。

「生地にエディブルフラワーを乗せてただ焼けばいい、というものではありません。先にエディブルフラワーのみをオーブンで焼いたり、生地との相性をみて花を厳選したりと細かい調整をしています。最初はうまくいかず量産もできませんでしたが、妻の持ち前の研究熱心さでようやく納得のいくものに辿り着きました」

SNS映えのみを価値としない

映えるクッキーはいつしかインスタグラマーの間で広まり、店前には行列ができるようになった「cotito」。小さな店内はパンクしかけていたといいます。

真吾さんに改めてこだわりを伺いました。

「見た目だけではなく、"おいしい"と純粋に喜んでもらえることがうれしいですね。食べものとしてのおいしさを、僕たちはなによりも重視しています。あと、せっかくつくるなら一人でも多くの人に楽しんでもらいたいので、卵や乳製品は極力使いません。素材の制限があってもおいしいお菓子はできるんだと伝えたいです」

ビジュアルだけを価値としない「cotito」のこだわりは、真のファンを生み出すようになりました。

「ここまでわざわざ来てくださる方には、これからも全力でお応えしたい」と真吾さんは感謝を口にします。

"花より団子"という言葉がありますがフラワーショップ「cotito」は"花もお菓子も"楽しめます。小さいながらも唯一無二の場所で、おいしい・やさしい・かわいいの三拍子そろったギフトを選んでみてはいかがでしょうか。

Words：Yui Ichihara
Photos：Yasuharu Hoshino

2024/6/20

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