欧米で「ソバーキュリアス」（しらふ・お酒を飲まない選択をする）というライフスタイルが流行していることや責任ある飲酒の推進などを背景に、アルコール飲料大手の「アサヒビール株式会社」は「スマートドリンキング」という考えを日本で提唱しています。

「スマートドリンキング」とは、ずばり「飲み方の多様性」。お酒を飲む・飲めない・あえて飲まない......そんな多様な選択肢を尊重し合える文化の実現を目指すキーワードです。
そして「スマートドリンキング」を掲げて2022年にオープンしたのが「SUMADORI-BAR SHIBUYA （以下、スマドリバー渋谷）」です。ここではどんな過ごし方をしてもみんなが「飲みトモ」。ダイバーシティな世界が広がっていました。

アサヒビール×電通デジタル×Z世代・ミレニアル世代が共創

東京・渋谷駅からスクランブル交差点を渡った先、渋谷センター街の中にある「スマドリバー渋谷」。ガラス張りの建物の1〜2階が店舗で、50席以上の客席があります。

「スマドリバー渋谷」は、アサヒビール株式会社と株式会社電通デジタルの合弁会社「スマドリ株式会社」に、Z世代・ミレニアル世代のプロジェクトメンバーが加わり、彼らの意見をもとに作り上げられたバーです。

バーらしくない緑の映える明るい店内も、プロジェクトメンバーの若い感性が活かされた雰囲気だと実感できます。

多様性を表現した「混じり合う」シグネチャードリンク

「スマドリバー渋谷」では、好きなドリンクと、好みのアルコール度数を掛け合わせたカスタマイズドリンクを楽しめます。その数なんと100種類以上。
アルコールは主に3段階（0％・0.5％・3％）から好みの度数を選べます。

オーダーは入店時に渡されるカードのQRコードから。スマホでQRコードを読み込むとLINEアプリが起動し、アンケート回答後にメニューが表示されます。

支払いは「LINE Pay」やクレジットカードでのオンライン決済のほか、レジでの支払いも可能です。
オーダーが完了したら、席でドリンクを待ちましょう。

「飲める人も飲めない人も分け隔てなく、混じり合って一緒に楽しめる」という「スマドリバー渋谷」の多様性を象徴した「スマドリ・マーブリング」のロゴを背にしたバーカウンター。
オーダーを受けてバーテンダーの方が、手際よくドリンクを作っていきます。

今回注文したのは、2つのシグネチャーカクテル。
どちらも「スマドリ・マーブリング」を体現した、異なる色や素材が混ざり合うドリンクです。

1杯目は「マーブリング レイン」（800円）です。アルコール度数は0％（ノンアルコール）でオーダーしました。
自家製クラフトレモネードに、雲に見立てた「綿あめ」をトッピング。飲む際は別添えの「ウィルキンソン タンサン」を雨のように降らせます。クリアなレモネードが色づく瞬間は動画撮影必須です。

綿あめが溶けきると、夕焼けのような美しいグラデーションのドリンクに。
フレッシュなレモンの香りと爽やかな苦味、シロップの甘みのバランスが絶妙で、どことなく大人な顔を持つ味わいです。
なお、アルコール度数0.5％もしくは3％の場合は、素材に「ジン」が加わります。

続いて2杯目は「マーブリング スノー」（850円）、1日10杯限定のフローズンカクテルです。こちらはアルコール度数3％でオーダーしました。

自家製クラフトレモネードとジン、そして「カルピス」を混ぜたフローズンと、オレンジ・ブルーベリーのソースが織りなすマーブル模様が鮮やかな一杯です。

それぞれの素材が持つ酸味や甘酸っぱさを立体的に感じているうちに、それらが口の中で溶けて、混ざり合っていきます。最後はさっぱりとした爽快感のあるおいしさでした。

これら華やかな定番カクテルのほか、2ヶ月に1度はシーズンカクテルが登場。また、こだわりの食事やスイーツメニューなども楽しむことができます。

実は「飲まない人・飲めない人」の方がマジョリティー

「僕は"飲める"人間だったのですが、ノンアルコールに目覚めてしまって......」と過去のご自身を振り返るのは、スマドリ株式会社 ブランドマネージャーの加藤 寛康さん。
新卒で大手化粧品メーカーに就職し、グローバル部門やメンズヘアケア・スキンケア部門でマーケターの仕事を経てアサヒビールに入社。「スマドリ株式会社」と同社を兼務しています。

アサヒビール社は日本の20代から70代の飲酒可能人口約9,000万人のうち、毎日お酒を飲むお酒好きは2,000万人ほどで、飲まない・飲めない人はその倍以上の5,000万人いると推計しているとのこと。さらなる調査では「飲まない・飲めないけれども、コミュニケーションとして飲みの場は好き」という人が多数ということが判明しました。この層が「スマドリバー渋谷」のメインターゲットです。

そして、加藤さんもライフスタイルの変化を機に「飲める」から「飲まない」派へと変わったといいます。

「子どもが生まれたことをきっかけに、飲みに行くのを控え、家でノンアルコールビールを飲むようになりました。酔わなくても十分リフレッシュできたので『なんて合理的なんだ！』とノンアルコールに感激したんです。それ以来、すすんでノンアルコールを飲むようになったのですが、周囲には不思議がられるばかり......。そんな状態にモヤッとしていたので、『スマートドリンキング』の考えは僕の中でとても腑に落ちたんです」（加藤さん）

「ストローは嫌」「顔が赤くなるのが恥ずかしい」一つ一つ拾い上げたら誰もが楽しめるバーに

スマドリバー渋谷の核にあるのは、Z世代・ミレニアル世代の「飲めない・飲まない」人たちの意見や感性。それは加藤さんにとって驚きの連続だったようです。

たとえば店内の照明は「飲んで顔が赤くなっても目立たないものにしてほしい」という声から落ち着いた暖色に。また「ストローを刺すことでノンアルコールを飲んでいるとばれたくない」という声から、度数はコースターでさりげなく記載。「外から店内が見えないと怖い」という声から外観はガラス張りに。こうして一つ一つの意見と向き合い店舗を作り上げていくうちに、思わぬ発見があったと加藤さんはいいます。

「飲めない人が自ら来店するよりも、飲める人が飲めない人を誘って来店してくださるパターンの方が多かったんです。そのおかげで、飲める人も積極的にスマドリバーを利用してくださり、『やっと一緒に乾杯ができたね！』と喜びの声が生まれています。結果的に、誰もが楽しめるバーになりました」（加藤さん）

また若い客層が多い一方で、仕事中のビジネスパーソンや子育て中のママさんが息抜きに来店する場面もあるとのこと。今後さらに幅広い世代へと浸透していく可能性もありそうです。

飲酒可能人口9,000万人誰しもが「飲み」を楽しめる世界を

「"スマートドリンキング"が目指すのは、日本の誰しもが飲む・飲まないに捉われることなく楽しめる世界です。こうした新たなカルチャーを作るには、ターゲットの奥底にあるインサイトに気づくことや、情緒価値を提供することが大事だと思っています。そこを意識しながら、スマドリバーならではのストーリーを広げていきたいです」（加藤さん）

トレンドの発信地で芽吹いた新たな「飲みニケーション」。これまで誘えなかった「お酒が苦手なあの人」とも、念願の「乾杯！」が叶うのではないでしょうか。

※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
※「LINE」および「LINE Pay」は、LINEヤフー株式会社の登録商標です。

Words：Yui Ichihara
Photos：Yasuharu Hoshino

2023/9/12

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