「我慢しないで、誰もがおいしく食べられる喜びを」。長野の洋菓子店「Coco ChouChou（ココシュシュ）」のお菓子は、三大アレルゲンである卵、乳製品、小麦粉不使用。白砂糖や添加物も使っていません。

お菓子づくりに必須といわれるこれらの食材が入っていないなんて、「それ、おいしいの？」と思う人もいるかもしれません。その答えは、食べてこそわかります。「ヴィーガン＆グルテンフリーは味気ない」というかつての常識を覆すCoco ChouChouの魅力に迫ります。

大手IT企業のマーケティング部から転身

「Coco ChouChou」の創業は2017年。通信販売からスタートしてファンを増やし、4年で全国から注文が相次ぐ人気店に。全国の百貨店のほか、地元の人からの要望を受けて長野市の工房でも販売を開始し、2022年には長野駅から徒歩5分の閑静な住宅街の中に店舗を構えます。

代表取締役の飯田紗織里さんは、東京都出身。幼い頃からお菓子をつくるのが好きで、学生時代には菓子研究家のアシスタントや商品開発も経験しました。大学卒業後、都内のインターネット銀行に就職し、7年ほどネットマーケティングの仕事に携わりましたが、多忙を極める中、自らの働き方に疑問を感じて退職。「大好きなお菓子の道に進もう！」と一念発起して学びなおし、教室の開催やメニュー開発などを始めました。そんな中、「Coco ChouChou」の創業につながる大きな出会いがあったのです。

「麻布十番にあるオーガニックカフェから、ベジタリアンやヴィーガンの人でも食べられるスイーツをつくってほしいという依頼が寄せられたのです。外国人の多い土地柄で、宗教や思想などを理由に『自分だけが食べられない』という問題を抱えている人がたくさんいると知り、驚きました」

ヴィーガンとは、肉や魚、卵、乳製品など動物性食品を食べない人やライフスタイルのこと。当時の日本ではまだ馴染みの薄い言葉でしたが、世界人口の１%程度にあたる約7,530万人がヴィーガンであると推測されています（VeganBitsホームページより）。世界には、ヴィーガンを含め健康や宗教、環境上など何らかの理由で食べられないものがある人が、数億人にのぼるともいわれます。

飯田さんは「食の制限がある人もない人も誰もが我慢せずにおいしいお菓子を食べられるように」と、開発に没頭。何度も何度も試作を繰り返し、小麦の代わりに米粉やナッツの粉を、卵や乳製品の代わりにココナッツオイルやカカオバターを使用し、動物性食材も白砂糖も使わないレシピにたどりつきました。

そして2017年、結婚を機に移り住んだ長野県で、フードダイバーシティを実現する「Coco ChouChou」をオープンしました。うれしいのは、「アレルギーのある子どもが安心して食べられる」「おいしいのに罪悪感なし」といったお客さんの声。目で見る楽しさとおいしさにこだわった結果、食に制限がある人だけでなく、ダイエット中の人やスイーツ好きの人など多くのファンに愛される店へと発展していきました。

濃厚なコクと奥深い甘みの秘密は？ 「生チョコレート3種セット」

「Coco ChouChou」の看板商品「ヴィーガン生チョコレート」は、プレーン、ローズ＆ラズベリー、ジンジャー、マンダリンオレンジ、抹茶、いちじく＆ナッツ、アールグレイの7種類のフレーバーから選べます。いずれも乳化剤や乳製品、白砂糖は不使用。お得な「選べる3種（3箱）セット」もあります。

まず、シンプルな「プレーン」を試食。白砂糖を使っていないなんて信じられないくらい、しっかり濃厚な甘みとコクがあります。
「天然のメープルシロップを贅沢に使って甘みを出しています」と飯田さん。「カエデの樹液であるメープルシロップは、ビタミンやミネラル、ポリフェノールが豊富です。精製された白砂糖の代わりに使うことで、芳醇で優しい甘さを表現しつつ健康や美容にもよい商品に仕上げました」。

また、動物性の生クリームではなく、カシューナッツミルクを使うことで、とろけるようなコクが実現。チョコレート特有の中毒感や甘ったるさがなく、それでいて食べ応えがあります。

ひときわ目をひくビジュアルの「マンダリンオレンジ」は、ドライみかんの苦味とチョコレートの濃厚な甘さの相性が抜群！ プチプチしたドライいちじくとくるみ、カシューナッツが入った「いちじく＆ナッツ」もオススメです。

ほかにも、自家製ラズベリージャムと薔薇の花びらを散らした「ローズ＆ラズベリー」、鮮やかな黄緑色が美しい「抹茶」など、高級感漂う大人の生チョコに思わず手が伸びます。

こだわりの天然素材のみでできた「ヴィーガンオレンジ&チョコレートケーキ」

みんなで一緒に食べられる本格派チョコレートムース「ヴィーガンオレンジ&チョコレートケーキ」も外せない逸品です。オレンジとショコラの2層仕立てで、ショコラ部分の原材料はカカオ。これも動物性のゼラチンは使わず、カカオバターが冷えると固まる特性を生かしてつくられました。土台に敷いたナッツとデーツを使ったローブラウニーの食感がアクセントになっています。

ホールケーキはほかにも、ラズベリー、ブラックベリーなどが贅沢にのった「ヴィーガンストロベリーケーキ」、チーズや生クリームの代わりにカシューナッツやココナッツオイルを使った「ヴィーガンローティラミス」などがあり、バレンタインの時期にはバレンタイン限定商品も販売しています。

台風19号の被災地で考えた災害時の対応

「誰もがおいしく食べられるように」と努力を積み重ねてきた飯田さんは、食物アレルギーやヴィーガンなど、食に制限がある人たちの調査や研究にも熱心です。食の多様性について伝える活動にも携わっています。

例えば、創業から2年後の2019年10月、台風19号が発生し、飯田さんが暮らす長野市が甚大な被害を受けました。工房や自宅は無事でしたが、多くの人が避難生活を余儀なくされ、飯田さんは浸水被害を受けた地域で実施された炊き出しに参加。そのとき、食物アレルギーに配慮した献立を検討しましたが、被災地ならではの事情があって断念せざるを得ませんでした。

「避難所や在宅で避難生活をする人の中には、アレルギーや病気などで食の制限がある人もいたと思います。でも、ボランティアなどたくさんの人が料理工程に携わる当時の現場では、アレルギー対応の食事は実現できず、どうすればよかったのかと悩んでしまいました」

それから約半年後、飯田さんは、災害支援のNPOとともにオンライン講演会を開催。アレルギー対応の専門家や農林水産業の職員などを招いて、運営側の知識向上や献立の原材料表示、マニュアルづくりの大切さなどについて伝えました。会には、自治体職員や災害支援に携わるNPO、市民など200人以上が参加。アレルギー食品に関する理解を深め、災害時の食物アレルギー対応についてみんなで一緒に考える機会となりました。

信州で育った旬の食材を生かす

長野に移住してもうすぐ7年。飯田さんは、地域の旬の食材を使った商品開発にも力を入れています。人気商品「信州ヴィーガンバターサンド」は、寒暖差の大きい気候で育った巨峰や蜜のような甘さが魅力のシャインマスカット、リンゴなど、果物王国・信州ならではの食材を使っています。

お店では、イートインも可能。店頭に並べられたグルテンフリーの焼き菓子やクッキーなどの中から好きな商品を選んで、コーヒーやハーブティなどと一緒に堪能できるセットもあります。

ギフトにピッタリのラッピングも。あたたかみのある赤い手漉き和紙で包み、カードを添えられます。

さぁ、バレンタイン。華やかな見た目とおいしさはもちろん、今年は天然素材にこだわった体に優しいチョコレートを選んでみてはいかがでしょうか。見えないところにも優しさが行き届いたギフトで、大切な人への思いがきっと伝わるはずです。

Words & Photos: mogShore

2023/12/5

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