国内ホテル随一の歴史を誇る帝国ホテル 東京。そのホテルショップで販売されている食パンが「Cerne（セルン）」です。
"これまでにない味"にこだわって作られ、表面をクロワッサン生地で包み、外はサクサク、中はしっとりとした食感で、自然な甘味の食パン。昨年4月の販売開始から人気に応えて増産したという、知る人ぞ知る逸品をご紹介します。

110年の歴史をもつベーカリーの新しい食パン

海外からの賓客をもてなす「日本の迎賓館」として1890年（明治23年）に開業した帝国ホテルは、マリリン・モンローやチャーリー・チャップリンなどが滞在したことでも有名です。

製パン部（現在のベーカリー課）が開設されたのは1911年（明治44年）。当時の帝国ホテル会長・大倉喜三郎が、ロシア文化の影響が強かった中国・ハルビンへ旅行に訪れたとき、ホテルで食べたパンのおいしさに感動。ロシア宮廷のパン製造技術をもつアルメニア出身のパン職人を招いて、日本初となる「ホテル製パン部」を設けました。
製パン部の開設から2021年に110周年を迎え、その記念で開発されたのが「Cerne」なのです。

「Cerne」が販売されているのが、帝国ホテル 東京に隣接する帝国ホテルプラザ 東京の1階にある「ガルガンチュワ」です。
「帝国ホテルの味をご家庭で」をコンセプトにしたホテルショップで、2021年12月1日にここに移転し、リニューアルオープン。「Cerne」を扱う「エピスリー ガルガンチュワ」のほか、マカロンやケーキなどのスイーツを販売する「パティスリー ガルガンチュワ」、焼菓子や冷凍食品を販売する「カドー ガルガンチュワ」の3つのエリアに売り場を広げました。

ちなみに「ガルガンチュワ」の名はフランスの作家、フランソワ・ラブレーの小説に登場する美食家で大食漢の王様の名前に由来するそう。

「エピスリー ガルガンチュワ」ではベーカリー商品だけでなく、食材の端材を活用したサステナブルな一品、ヴィーガンメニュー、量り売りのデリカテッセン、ソーセージなどのグロサリーも販売されています。
奥にはイートインスペースがあり、その場で味わうことも可能です。

「Cerne」は毎日12時に販売されています。通信販売はないので、ここでしか買えない味です。高級感のある箱入りで、パンの表面には「帝國ホテル」と旧字での焼き印が押されています。

"これまでにない味"を生み出すために

「一日中パンのことを考えている方」とご紹介いただいたのが、「Cerne」開発の中心となった調理部ベーカリー課支配人・二宮茂彰さん。ベーカリー課はレストラン、宴会、ホテルショップなどホテル内のすべてのパンを一日に40～50種ほど手掛けています。入社以来ずっとベーカリー課で、パンの世界大会での入賞経験もある二宮さんは、まさにパン一筋の職人さんです。

「ベーカリー課のアニバーサリーであり、高級食パンのトレンドもあって、"これまでにない味"を作ろうということになりました。競合商品を色々と味見してみると、個人的には少し甘すぎるように感じたので、ずっと食べ続けられるもっと自然な甘味の食パンを作りたいと思いました」

素材には、きめ細かく柔らかい生地が作れるカナダ産の小麦粉、風味のよいフランス産発酵バターを厳選。ハチミツは東京都多摩産というのも面白いですね。
「スッキリとした甘さがあるハチミツです。ハチミツには保湿性があるので3日目にもおいしく召し上がっていただけるように入れています」

もちっとした食感を出す「湯種」（小麦粉に熱湯を加えて混ぜ一晩寝かせてもっちりとさせたもの）と、口どけよくしっとり感を出す「水種」（水と小麦粉とイースト菌を混ぜて発酵させたもの）の2種の発酵種を使って生地ができあがり、イメージに近い食パンは順調にできました。しかし何かが足りない。
「単なるおいしい食パンで終わらせないために、印象に残るような要素をもう一つ加えたかったんです」
そんなとき、帝国ホテル 東京料理長から「食パンの表面の一部にクロワッサン生地をはって食感を変えてみたら」というアドバイスをもらったそう。
「自分にその発想はなかったので、なるほどと。試作を重ねて、最終的には食パンの表面すべてをクロワッサン生地でコーティングすることになりました。食パンのミミが苦手な人は多いですが、これによってミミまでおいしくなったんです」

クロワッサン生地はバターを織り込みながら何度も折って層を作ります。そして「Cerne」の場合は食パン生地をクロワッサン生地で包むひと手間がかかるのです。
「焼きあがったときにクロワッサン生地の層が美しい年輪模様として現れました。これも偶然でした」

こうして、見た目も味わいも今までにない、新しい食パンが完成しました。驚くのは開発から販売までたった約1カ月半だったということ。
「スピード感をもってやりました。ホテルの食を一緒に支えるシェフや、ホテルショップの商品企画などに携わる外販事業部や広報課など、周囲の意見を聞きながら、箱や焼き印などのアイデアも形にしていきました。チームワークで作りましたね」

最終的にこの食パンの見た目とコンセプトにマッチした「Cerne（フランス語で「年輪」）」というネーミングに。おすすめの食べ方は？
「そのまま食べてもいいですし、トーストすると焼きたての風味が戻るので、2日目以降もおいしくお召し上がりいただけます。サンドイッチに使ってもおいしいですよ」

ちなみに「家でもパンは食べますか」とお尋ねすると......。
「日常的に食べます。味はやはり気になりますね。パンは自然のものを発酵させた食べ物で、毎日同じクオリティで作ることはあたりまえのようで難しいです。ですので、パンを食べるときは味がぶれていないか、常にチェックする癖が出てしまいますね」

パンのエキスパート渾身のひと品を、取材したその日のうちに実食してみました。箱を開けてみるとふわりと香ばしい香りが漂います。まずは焼かずにそのまま一枚。
確かに、ミミはクロワッサンの味わいです。白い生地の部分はしっとり、もっちり。自然な甘味で飽きのこないおいしさ。これならいつまでも食べ続けられそうです。

続いて、トースターで焼いたものを一枚。
思わず「おお」と声が出ました。ミミのサクサク感と香ばしさがアップ。白い生地の部分はふんわりして、口の中でとろけます。何もつけずに食べましたが、ほんのりバターが香り、小麦そのもののおいしさを味わっている感じ。くどさはなく、あくまで上品です。

さらに翌日。端のミミの部分を焼いて食べてみました。
「Cerne」の年輪模様がよりサクサクになって、これもまたおいしい。ミミがスペシャルな味わいになるのは、この食パンならでは。また食べたくなるシンプルで上質な味わいは、さすが帝国ホテルです。

お試しサイズの「プティ セルン」（600円。10:30焼き上がり）も発売されています。ちょっと贅沢な味わいをご自宅で、楽しんでみてはいかがでしょうか。

words : Yuki Asakura
Photos: Isamu Shinoda

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・従業員の体調確認、出勤前の検温、手洗い・うがいの徹底、マスク着用
・お客様用アルコール消毒液の設置
・館内設備、備品のアルコール消毒
・空調による換気の管理
・接客時のお客様との距離の確保

お客様におかれましても、以下の感染拡大防止策にご理解ご協力をお願い申し上げます。
1.マスクの着用
2.ご入館時のサーモグラフィーによる体温測定、手指のアルコール消毒
3.他のお客様との間隔の確保
4.エレベーター内は3名様までをお願いいたします
5.店舗内にて体調管理票へのご記入
マスクご着用でないお客様はご入店をお断りする場合がございますので、ご了承ください。

（帝国ホテル　公式HPより）

2021/12/15

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