日本有数の観光都市・京都。無数にあるホテルの中で異彩を放ち、注目を集めているのが「TUNE STAY KYOTO（チューン ステイ キョウト）」です。大階段の書店スペースをはじめとする3つのコンテンツを用意し、ここで体験したことが旅人の日常を豊かにする......そんな"心躍る寄り道"の秘密をご紹介します。

迫力の大階段に並ぶ2,500冊以上の"京都本"

TUNE STAY KYOTOが建つのは、京都駅中央口（京都タワー側）から徒歩5分。
外観はごく普通のビルですが、中に入ると驚かされます。

フロント横の壁面にぎっしりと並ぶ本。ベンチを兼ねている大階段が圧巻です。
ここは書店スペースで、本と本屋に関するプロデュースを行う「NUMABOOKS（ヌマブックス）」のクリエイションにより、小説、旅行ガイド、歴史本、料理本、漫画、古書など、京都に関連する2,500冊以上の本がそろっています。

「TUNE STAY KYOTO」を運営する株式会社ティーエーティーの飯田麻友さんによると、
「この書店は、宿泊者専用なのです」。
宿泊者だけで書店を占有できるなんて、本好きには夢のような空間です。
このスペース内であれば、飲食しながら本を読めるそうで（客室に持ち込みたい場合は要購入）、24時間閲覧が可能。夜通し本の世界に浸ることができます。

地下の大きなソファの周囲はギャラリースペースになっていて、新進気鋭の作家の作品が展示されています（一般客も入場可、無料）。

日常をもっと豊かにする3つのコンテンツ

「TUNE STAY KYOTO」のコンセプトは「人生に心躍る寄り道を」。
「旅先での体験がこれからの日常に調和（TUNE）し、毎日をより豊かにしてくれるように」との思いから、3つのコンテンツを仕掛けていて、その1つが書店です。
そして2つ目は、ショートフィルム。夜になると大階段にスクリーンが下がり、2部制で合計4作品が上映されます。

宿泊した筆者は22時からの上映に参加しました。
お酒を飲みながら観る女性、スマホを片手に観ている女性など、マイペースに楽しめる雰囲気が心地よかったです。隣に座っていた外国人の女性2人は、劇中のキャラクターの表情に大笑い。上映時間は約15分ですが、意外と作品にグッと入り込めて、リフレッシュできました（写真は実際の上映の様子）。

「作品は24本あって日替わりで上映。6日間連泊いただいても毎回違う作品をご覧いただけます。半年に一度、作品替えもあります」と飯田さん。泊まるたびに新たな作品が見られそうです。

「TUNE STAY KYOTO」の3つ目の仕掛けは、クラフトジンです。
クラフトジンは、比較的小規模の蒸溜所で造られるジン（蒸留酒）で、それゆえ造り手のこだわりが反映されていたり、土地ならではのハーブやスパイスを原料にしていたりして、個性的な味が楽しめます。

フロント横のバーでは、国内外24種類のクラフトジンをそろえています。
筆者のようなクラフトジン初心者でも大丈夫。クラフトジン テイスティングセット（2,000円）で飲み比べが体験できます。
セットではクラフトジン3種類と、トニックウォーター1種類、そしてライム、ドライオレンジ、山椒などのガーニッシュ（"付け合わせ"の意。調味料のような役割もする）をチョイス。

作っていただいたのは、梅を漬けた京都産「季の梅」、長野産「香の森」、カナダ産「Empress 1908」の3種のセット。
「まずは香りを楽しんで」ということで、それぞれの香りを嗅いでみましたが、個性の違いがわかります。「香の森」はその名のとおり、森のようなクロモジの香りで、まるでアロマのようでした。
トニックウォーターで割るか、ロックか、お好みのスタイルで味わえます。
バタフライピー（東南アジア原産のマメ科植物）の花から抽出した「Empress 1908」は、トニックウォーターを入れると、インディゴブルーからピンク色に変わります。
非日常が味わえるクラフトジンに心躍ります。

シンプルで機能的な客室、自炊もできる共有キッチン

「TUNE STAY KYOTO」本館のStandardタイプの客室はコンパクト。ベッドの下には大きなトランクが収納できる機能的な造りです。シンプルですが、パブリックスペースがたくさんあるので、不便はなさそうです。写真は2段ベッドのツインルーム。

こちらはツインルーム。
本館客室は全室シャワー付きでバスタブはありませんが、予約制のパブリックバスルームがあります。

「TUNE STAY KYOTO」は素泊まりのホテルです。自炊したい人のために、24時間利用できるパブリックキッチンを完備。周辺には飲食店がたくさんあるので、夕食は外へ食べに行っても。朝食を希望する人には、ベーグルサンドとドリンクのセット（600円）も販売しています。

高級マンションのような隠れ家で仲間と集う

楽しいコンテンツが満載の「TUNE STAY KYOTO」ですが、実はもう一つの顔が。
本館奥に別館があり、Hideout（ハイドアウト、"隠れ家"の意）スイートの客室があります。「誰かを招いて集う場所」をテーマに、2022年3月にオープンしました。

写真はプレミアムスイート。高級マンションのような広いキッチン付きのリビングで、窓からは京都郊外の山も眺望できます。
宿泊の定員は2名ですが、宿泊しない人の利用も認めている点がユニークで、宿泊者を含め6名まで利用できます。まさに「誰かを招いて集う場所」です。

全室に本やレコードプレーヤーが備えられているのもうれしい計らいです。

寝室やバスルームもモダンでおしゃれ。贅沢気分が味わえます。

客室と同フロアにあるHideoutスイートの宿泊者専用ラウンジには、「仲間と楽しみを共有できるように」セレクトされた本、木製ボードゲーム、レコードもあるという充実ぶり。家族や仲間と過ごす時間にうってつけです。

Hideoutスイートに泊まった筆者はせっかくなので2枚のレコードを選び、聴いてみました。音楽に詳しくなくてもわかる名曲がいくつもあり、アナログの音色の作用なのか、とてもリラックスした時間を過ごしました。

レコードは、京都・三条駅のレコード店「ヒト族レコード」のオーナーによるセレクトで、80年代～90年代初頭の作品をそろえているそうです。

もう一つの専用ラウンジには、水・コーヒー・アルコールなどのドリンク、スナック、ヌードルなどが備わり、ほとんど無料で飲食できます。このサービスもうれしい！

特によかったのが、ナッツ、ドライフルーツ、フルーツグミなど9種類のスナックのコーナー。お酒のつまみにはもちろん、間食にもちょうどよくて、気が利いています。

高級感たっぷりのHideoutスイートですが、34,000円（2名1室）～と意外とリーズナブル。「若いカップルで利用される方も多いです」と飯田さん。

京都観光の拠点にアクセス抜群なホテルですが、まさに「寄り道」のようなゆとりを味わえる体験が満載で、あえて出かけない"おこもりステイ"にもぴったり。
パブリックスペースにはソファやテーブルがたくさんあって、宿泊者の方がそれぞれのペースで自由に楽しんでいる、ゆったりとした雰囲気が流れているのがすてきでした。京都滞在の選択肢にいかがでしょうか。

Words : Yuki Asakura
Photos: Hajime Kojima

2024/1/24

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