普段は行けない場所を訪れ、味わえないものを食す──。そんな非日常の特別感は、確かに魅力的。しかしながら"日常"そのものをさりげなくアップグレードすることで、ちょっとした贅沢を毎日味わうというのもまた、とても費用対効果が高く、おすすめしたいテクニックです。毎日のルーティーンを、お洒落で心地よいプレシャスタイムに。「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」の歯磨きセットなら、そんな願いがきっと叶うはずです。

調香師から美容の革命家へ

オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー（以下、ビュリー）は、1803年に調香師ジャン=ヴァンサン・ビュリーによってパリに設立された、総合美容専門店。植物を原料とする香水や香り酢はたちまち当時の上流階級の間で話題となり、フランス全土にその名が知れ渡るのに、さほど時間はかからなかったといわれています。

19世紀初頭において、香水は一部の限られた人だけしかもつことのできない特別なものでした。しかしバラやダリアをこよなく愛したジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ（ナポレオン1世の妻）の手により、さまざまな新種の花の輸入、栽培が行われるとともに、一般にも広く親しまれるようになっていきました。

1804年に制定されたナポレオン法典で商業活動の自由を得たビュリーの製品は、ヨーロッパ各国へも広がりを見せることとなります。やがてジャン=ヴァンサン・ビュリーは調香師としてだけでなく美容専門家としても名をなし、作家オノレ・ド・バルザックによる喜劇『Scenes De La Vie Parisienne』の主人公、セザール・ビロトーのモデルにもなりました。彼は化粧品の進化と普及が進んだ美容界の黄金期ともいわれる時代における重要なイノベイターであり、流行を生み出す「時の人」でもあったわけです。

伝統と革新の融合がもたらす、自然の恵み

そんなビュリーが創業から2世紀以上を経過した2014年、美の歴史の専門家として名高いヴィクトワール・ドゥ・タイヤックと、著名なアーティスティック・ディレクターであるラムダン・トゥアミというクリエイティブなカップルによって、見事な再生を遂げました。彼らが何より重視したのは、創業者であるジャン=ヴァンサン・ビュリーの理念を受け継ぎながら、モダンにアップデートさせること。伝統的な素材や製法のいいところを活かしつつ、現代的な製造技術を駆使して自然の恵みを最大限に引き出した製品を展開しているのです。

数ある製品のなかで今回注目したのは、オーラルケアの基本アイテムである歯ブラシ「ブロス・ア・ダン」と、歯磨き粉「オピ・ダンテール」です。

見目麗しいアセテート製ハンドルに、天然の繊維をぎっしりと

ビュリーの歯ブラシのハンドルは、2色展開。ともにイタリア産の天然セルロースを原料とした、アセテート素材が使用されています。ブラシは同じくイタリア産シルク製の「ソワ」、あるいは穴熊の毛でできた「ブレロー」という2種類（各6,270円）。歯磨き粉には、南仏ガスコーニュ地方のカステラ＝ヴェルデュザンに湧き出る温泉水を使用しており、ミント系、アップル系、オレンジ系という個性豊かな3種のフレーバーが揃います（各3,190円）。

歯ブラシのヘッドは、一般的なものよりかなり大きめ（植毛部は全長約4cm）。女性には大きすぎるかもしれませんが、広範囲に、そして高密度で植えられたブラシで、効率的に歯を磨けます。発泡剤を使用していないナチュラルな歯磨き粉でも、きめ細かい泡を立ててくれるのもポイントです。イタリア産のシルクを使用したブラシは、コシが強く硬めで、ハードな刺激が欲しい方向き。また穴熊の毛はややソフトで、歯茎を優しくマッサージする感覚で使用できます。どちらも耐久性が高くナイロンにくらべて毛先も広がりにくいので、使用後にしっかりと洗って乾かすことで、数ヶ月から1年程度という長期間にわたって愛用することができるというのも見逃せません。

趣のある芸術的なデザインに、自然由来のパワーとフレーバー

歯磨き粉は、まず美しいアートのようなパッケージデザインが目を引きます。これはもちろん、オーナーであるトゥアミ自身が手がけたもの。世界最古の百貨店といわれるパリの「ボン・マルシェ」、ロンドンの「リバティ」のアーティスティック・ディレクターを務めたという経歴も、決して伊達ではありません。ほかの製品のパッケージも19世紀のカタログに使用されていた挿絵を取り入れるなど、ブランドの歴史を感じさせるクラシックな世界観で統一。このデザイン性の高さも、ビュリーの大きな魅力のひとつといえます。

3つのフレーバーは、ミントとコリアンダーとキュウリ、ブルターニュ地方モントバン産のリンゴ、オレンジとジンジャーとクローブと、とてもユニーク。これらの素材は古来より口内洗浄や口臭予防うがいに利用されてきたことで知られています。また、使用されているカステラ＝ヴェルデュザンの温泉水には、硫酸塩やカルシム、マグネシウムが豊富に含まれています。

優しい穴熊ブラシと、爽やかで"おいしい"リンゴ味

そんななからリンゴ味のフレーバーを選び、穴熊の毛のブラシとともに実際に使用してみました。フレッシュなグリーンアップルを思わせるフレーバーは、口当たりマイルドで後味も爽やか。まるで食後のデザートのように"おいしい"と思える仕上がりなので、歯磨き粉の"味"にこだわる向きにはうってつけといえそうです。

また歯ブラシの穴熊の毛は想像よりも柔らかく、最初は口内での圧倒的な存在感に面食らったものの、その心地よいマッサージ効果が癖になりそう。なにより歯も歯茎も含め、口内をしっかり洗浄している気分にしてくれます。

さらに特筆すべきは、そのハイセンスで芸術的なデザインです。美しいグラフィックがあしらわれたアルミ製チューブはキャップにもメタルを駆使していて、凛とした佇まい。アセテート製の歯ブラシにも重厚な高級感があり、両者を合わせれば、ただ置いてあるだけで絵になります。この見栄えのよさは、きっとバスルームのアップグレードにも一役買ってくれることでしょう。

特別感のある刻印＆手書きの文字入れサービスもうれしい

そもそも歯磨きという行為は、誰もが毎日、日に2回、3回と繰り返し、なかば義務的に行う日常的なもの。そんな歯磨きを楽しく、心地よく、優雅な気分で行えるようにする──当たり前の習慣へのモチベーションを高め、質を上げてくれる製品は、クオリティ・オブ・ライフの向上に直結する名品といっても過言ではありません。歯磨きの質とは、なにも科学的な薬効だけを基準とするものではないのです。

見栄えがよく、毎日使えて、品質もいいとくれば、自分へのご褒美にとどめておく手はありません。当然、ギフトにも最適です。さらにビュリーには刻印による文字入れサービス（1文字あたり165円）があり、また独自のカリグラフィーをボックスやラッピングに無料で手書きしてくれます。家族の記念日に、友人・知人への感謝の印に、メッセージ性のある心のこもった贈り物ができるというわけです。

歯ブラシ6,270円、歯磨き粉3,190円という合計1万円弱の歯磨きセットは、確かに贅沢。でもそれで日常を格上げできると考えれば、コストパフォーマンスは上々でしょう。そして特別な人と、特別な思いとともにシェアできるとしたら......。この金額をかける価値が、このビュリーの歯ブラシと歯磨き粉にはあるといえそうです。

オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー代官山本店
パリと東京、伝統と未来を対照的に表現した店内。木製の陳列棚は、日本の宮大工のような専門の職人をパリから呼び寄せて施工を行っています。乾燥した植物をアクリル樹脂で固め、コンクリートに埋め込んだ外壁は、現代的な東京のラボをイメージしたもの。ちなみに世界中にあるすべての店舗が、地域性を意識した異なるコンセプトのもとでデザインされています。

2019/3/11取材
2021/3/12編集