外出の自粛はもちろん、在宅勤務やオンライン授業が当たり前となりそうな新型コロナ禍後のライフスタイル。できるだけストレスを溜めず、健康的でハッピーな"おウチ時間"を過ごしたい。そんな願いを叶えるのに、「カルテザック-ジャポン」のリードディフューザーをはじめとする青森ヒバ製品が一助となりそうです。

日本３大美林のひとつ、青森ヒバとは
本州南部や四国、九州などに広く自生するアスナロが、寒い北国で変種したヒバ（檜葉）、別名ヒノキアスナロは、日本固有の自然木。そのほとんどが下北・津軽半島に分布し、特にこの地域のヒバは「青森ヒバ」と呼ばれ、「木曽ヒノキ」「秋田スギ」とともに日本三大美林のひとつに数えられています。青森ヒバは、美しい木目や清々しい香気、とりわけ耐湿・耐朽性に優れる木材として、古くから重宝されてきた高級木材。奥州平泉の地に1124年に建立され、世界文化遺産にも登録されている中尊寺金色堂の大部分が、青森ヒバでできているという事実からもその優れた特性に疑いの余地はありません。

アパレルブランドと青森ヒバの共通点
東京・中目黒にある路地裏の"袋小路"で「カルデサック（フランス語で袋小路の意）」という店舗を運営する村口実姉子さんの本業は、ファッションデザイナー。アパレルショップとしてこのショップを立ち上げた後、2015年からは青森ヒバの端材や廃材、そこから抽出した精油などを駆使したプロダクトも含めた提案を行っています。19年には世田谷区松陰神社に「ワークス」という工房兼ショップをオープン。また対面販売が困難な現在は、オンラインショップで全国からのオーダーに対応しています。ファッションデザイナーがなぜ青森ヒバ製品を手がけているのか、そしてあまりなじみのない青森ヒバの魅力を探るため、村口さんにお話を伺いました。

青森の材木屋の娘として生まれて
「祖父は製材業と養豚業を営んでいたのですが、その跡を継いだ父が製材の過程で出る青森ヒバの木屑を、病気やニオイ対策として豚小屋に撒いていました。そのおかげで豚たちは健康的に生育し、悪臭も抑えられた。そこで父は、青森ヒバに絞ることにしたんです。青森ヒバは、わたしが生まれたときからいつもそばにあった木。子どものころからその力強く、優しい香りに包まれて育ちました。上京してファッションを学んでアパレル業に従事し、2011年に『カルデサック』をオープンしましたが、自分の愛する青森ヒバをもっと多くの人に知っていただきたいという思いから、『カルデサック-ジャポン』という青森ヒバ製品専門ブランドを立ち上げることにしたんです」

青森ヒバの香りや効能を洗練されたデザインに落とし込んだその製品群は、多くのファンやリピーターを獲得。大手セレクトショップや百貨店からの引き合いも絶えることがなく、海外の人気ショップでも取り扱われるほどです。「カルデサック-ジャポン」によって、すでに青森ヒバは感度の高い人々の間で人気のブランドに。そして青森ヒバはもちろん、青森という土地と、その地場産業を盛り上げることに貢献しているといえそうです。

青森という県名は、ヒバの「青々とした森がつらなっているところ」に由来するとされており、県木にも指定されています。そして日本三大美林のひとつでありながら、残念ながら青森ヒバの一般的な知名度は高いとはいえません。そのブランド価値を高め後世にまで伝えていきたいというのが、村口さんが「カルデサック-ジャポン」を立ち上げた理由。「もちろん、実家の家業をサポートしたいというのも大きなモチベーション」だったそうです。

青森ヒバの木材やウッドチップからは、何ともいえないスッとする清涼な香りが漂います。ミントにも通じるその爽やかさから、青森ヒバで建てられた家屋には蚊が入ってこないとすらいわれるほど、木そのものが高い防虫効果を発揮するというのも腑に落ちます。

そこから抽出した精油と木粉のみでつくったリードディフューザーをお部屋に置けば、優しい森林の香りに包まれ心の底からリラックス。また蚊取り線香などの強い香りが苦手な方なら、天然の虫除け効果も期待できます。ゆっくりと精油を吸い上げるリードにまで、青森ヒバの枝を使用しているのがなんとも贅沢（一般的なラタンスティックも同梱）。筆者はリビングにてこの製品を愛用中なのですが、愛犬のベッドのそばにも安心して置くことができています。

かつて「ヒバの不思議」として知られていた青森ヒバの優れた効能は、今では科学的に証明されています。青森ヒバから抽出した精油に含まれる「ヒノキチオール」は、抗菌、防虫、消臭、リラックス効果を発揮。皮膚の炎症やメラニン生成を抑える薬効もあり、化粧品にも使用されているほど。ちなみに「カルデザック-ジャポン」のロゴにも、自然界に存在しないと考えられていた「ヒノキチオール」の七角形の分子構造が採用されています。

また「ヒノキチオール」という名前からすると少々意外なのですが、日本のヒノキにはほとんど含まれていません。国内で生成される「ヒノキチオール」のほとんどが、青森ヒバを原料とするものなのです。

木材の取り扱いを開始し、丸太のスツールなども展開する「カルデザック-ジャポン」ですが、製品の原材料の大部分は木材にはできない曲がった木や、製材所で発生する端材、廃材、鉋屑（かんなくず）など。

「"屑"といっても、有効成分を含んだ大切な資源です。私たちは、数百年かけて育った青森ヒバが少しも無駄にならないよう心がけている。自然をより身近に感じられるという、本来あるべきオーガニックプロダクツを目指しているんです」

そう語る村口さんによれば、青森ヒバの精油は、木の幹の樹皮から３～５センチ内側の"赤身"と呼ばれる部分から抽出するそう。100キロの青森ヒバ材からたった１キロほど、たった１%しか採ることができないのだとか。とても貴重で、希少であることがわかります。また素晴らしい自然からの贈り物を大切に、無駄なく使い切るというエコでサステイナブルなものづくりの哲学は、ファッションと青森ヒバという異なるジャンルの融合により、この夏デビュー予定のファブリックラインとして昇華するようです。

エコで高機能なファブリックラインとして結実した哲学
ファブリックラインの本格展開を前にリリースされたのが、写真のフィリバ®マスク（現在は販売停止中。パッケージ、価格等を見直しのうえ再開予定）です。「青森ヒバの特性を活かした繊維を開発するところからスタートした」というこだわりの逸品で、木材を原料としたパルプからレーヨン繊維をつくる段階で青森ヒバ精油を練り込み、このレーヨンとオーガニックコットンを混紡して織り上げたオリジナルの生地、フィリバ®を使用しています。青森ヒバ由来の抗菌・防臭効果を備えており、洗濯して繰り返して使うことが可能。まさに、今の時代にピッタリの製品です。

今後はさらに、タオル（4,950円〜）やカットソー、ソックスなども順次展開される予定で、生乾きや汗のニオイが気になる、これからの季節に大いに活躍してくれるに違いありません。

「わたしたちはお客様の世代や性別、シーズンなども問わないようにしています。まずは青森ヒバを知っていただくことを第一義に、その特性を落とし込み、暮らしに取り入れやすいデザインの製品づくりに取り組んできました。そしてまだまだ不十分ではありますが、サステイナブルなものづくりはさらに追求していきたいですね。パッケージなどでどうしてもプラスチックを使わざるをえないときもあるのですが、ファブリックラインは、ほぼすべてが土に還るものにしたいと考えています。ストレスや不安のつのる時代ですが、青森ヒバの香りで少しでもリラックスできる時間を過ごしていただけたらうれしいですね」

カルデサック-ジャポン
東京・中目黒の"カルデサック（袋小路）"にある、青森ヒバ製品とジェンダーレスなファッションブランドを扱うショップ。「真面目にふざける」をコンセプトに、遊び心たっぷりでデザインコンシャス、そして確かな製品にこだわったモノやコトを展開しています。青森ヒバとファッションを融合させこの夏スタート予定のファブリックラインは、ほぼすべての製品が生分解することをなど、環境負荷の少ないサステイナブルなものづくりに積極的に取り組んでいます。

Words: Junya Hasegawa

2020/5/16取材
2021/6/24編集

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