半永久的に美しい姿を保つ「プリザーブドフラワー」。その製法を「苔」に取り入れたインテリアアートが、多忙なビジネスマンの新たな癒しとなっています。

トップフラワーデザイナー・今野亮平（こんのりょうへい）さんが率いるプリザーブドフラワー専門店「ベル・フルール」は、業界でまったく見向きされなかった「苔のプリザーブドフラワー」に着目し、その魅力を世に打ち出しました。苔のプリザーブドフラワーは日本建築の巨匠・安藤忠雄氏が設計する「目黒 安養院」でも採用され、ますます注目を浴びています。

日本では画期的なプリザーブドフラワー専門店

銀座一丁目駅から徒歩3分ほどの場所に立つ「ベル・フルール 銀座本店」。ガラス張りの外観から色とりどりの花が顔を覗かせます。日本でいち早くプリザーブドフラワー専門店としてオープンして、2023年で15周年を迎えました。

15周年にあわせ、売り場面積を拡大してリニューアルオープン。高級ホテルのようなラグジュアリーな店舗の1階はプリザーブドフラワー専門店、2階はフラワーデザインスクールを開校しています。

代表取締役社長の今野さんは、日本フラワーデザイン大賞1位に輝いたトップフラワーデザイナー。経営者でありながらも常にフラワーデザインの現場に立ち続け、その実力は国内外から高く評価されています。

そんな「花」を扱ってきた今野さんが次なるステージとして選んだ「苔のプリザーブドフラワー」。一体どんな世界なのでしょうか。

理論に基づく洗練された佇まい「グリーンフレームシリーズ」

「グリーンフレームシリーズ」は、今までありそうでなかった「苔をフレームで飾る」インテリアです。造花やドライフラワーとは異なり、表面はしっとり柔らかく、自然界の苔をそのまますくったような野生的な息遣いを感じます。

「グリーンフレームシリーズ」は全部で4サイズ展開。中でも人気の2サイズをご紹介します。

一つ目は「グリーンフレームM」。コンパクトなスクエア型で、場所を問わず気軽に飾れます。

もう一つは、「グリーンフレームL」（22,000円）。「グリーンフレームM」より横長に大きく、苔の表情をより鮮明に楽しめます。

間近で見ると違った表情も見えてきます。どれも同じように見える苔ですが、実は毛並みの高さや濃淡など、一つ一つに違った個性があります。その個性を見極めながら、陰影感や立体感を意識して組み合わせ、さらにベル・フルールが徹底するデザイン理論に基づいて配置し、余念のないオアシスを創り上げています。

苔のまわりには「アジサイ」「リーフ」「サリグナム」など多彩な植物が共演（一部造花）。「静」の苔を主役に、適切なさじ加減で「動」のエッセンスを加える巧みな配合が見事です。

フレームは壁にかける、立てかける、どちらも可能です。洗練されたデザインはどんな空間にも馴染むでしょう。

反対の声が聞こえたら「チャンス」

今野さんは、「毎日成長しようと思ってるんです！」とパッション溢れる方。フラワーデザイン界の多様なトレンドや新境地を切り拓いて、ブランドを唯一無二の存在に成長させてきました。

「幼少期の頃、家の中はいつもお花で溢れていました。なぜなら弊社の代表取締役会長である僕の母・今野政代（こんの まさよ）がフラワーデザインの先生をしていたからです。生まれ育った環境が運命だと思いますが、この頃はまだ特別な感情はありませんでした」（今野さん）

明確にフラワーデザイナーを目指したのは、大学時代に留学したアメリカ・ポートランドでのこと。起業家の多いクリエイティブな風土に刺激され、まずはデザイナーになろうと思ったそうです。

「ファッションでもインテリアでもなんでもよかったんですが、『身近にフラワーデザインの先生がいるじゃないか！』と。そこからフラワーデザインの勉強を本格的にはじめました」（今野さん）

会社員の傍らフラワーデザイナーの修行に励み、コンテストにも参加した今野さん。当時未熟だった今野さんに「あなたの作品が一番よかったわよ！」 と声をかけてくれた方に背中を押され、フラワーデザインの道で生きることを固く決意します。

「母には猛反対されましたけどね。でも私の中では、『ダメ！』といわれるところがスタートなんです。そこはきっとブルーオーシャンですから」そんな今野さんのポジティブ節が、次なる革命を起こします。

「コンテンポラリーデザイン」で日本の美意識を伝える

やがて「プリザーブドフラワーのパイオニア」という称号を手に入れたベル・フルール。新境地へと踏み出すきっかけも「ダメといわれたらチャンス」でした。

「生花が主流の時代でしたので、みんな 『プリザーブドフラワーなんてダメよ』 と。でも生花にない可能性がそこにはあると感じていたので、まずはプリザーブドフラワーに関する書籍を出すことからはじめました」（今野さん）

「"苔"も同じです。苔のプリザーブドフラワーなんて地味で商品にならないだろう、といわれていましたが、そのときにピン！と思い浮かんだのが、京都の南禅寺です。南禅寺で見た苔が美しくて、感動したことを思い出したんです」（今野さん）

苔の風情ある佇まい、デジタル疲れの目を癒す穏やかなグリーン、さらにそれが水のいらない「プリザーブドフラワー」なら......。今野さんの見立て通り「グリーンフレームシリーズ」は大ヒット。一気にブランドの中心的存在となりました。

「僕は日本の伝統を礎に、現代の考え方や技術で届ける "コンテンポラリーデザイン" を大切にしています。苔のプリザーブドフラワーは、まさにコンテンポラリーデザイン。現代に生きるからこそできる新しい価値を提供し、同時に日本の美意識を世界に伝えていきたいです」（今野さん）

慌ただしく生きる現代人に寄り添う「癒し」を

自宅用にはもちろん、オケージョンシーンの贈り物としてもぴったりな「苔のプリザーブドフラワー」。お世話不要という相手への思いやりはもちろん、一流デザイナーの粋な精神もプレゼントの品として自信が持てるでしょう。

ぜひ多忙なあの人に、苔がもたらす癒しを贈ってみてはいかがでしょうか。

Words：Yui Ichihara
Photos：Yasuharu Hoshino

2023/10/19

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