木登りというと身軽だった子どもの頃、近所の公園でドキドキしながら登った木を思い出します。樹上から眺めた景色、通り抜ける風、その木を親しく感じた瞬間でした。多くの人が持つ記憶ではないでしょうか。それから年月が経ち、体が重くなり何より木登りなんて今さら......そう思う方にぜひ体験いただきたいのが、森で楽しむ新たなアクティビティ「ツリーイング」です。安全な装備で初心者でも簡単に樹木の高いところまで登れて、鳥や動物になったかのような、童心を思い出すような気分を味わえます。

ツリーイングで楽しむ3つの「ing」

木の枝に掛けられたロープを伝い、自分の力だけで樹木の上へと垂直に上がっていくのが「ツリーイング」です。ツリーイングインストラクターの資格認定団体であるTMCA（ツリーマスタークライミングアカデミー）によれば、ツリーイングには3つの「ing」があるとされています。「木に登る～Climbing、木から学ぶ～Learning、自然とのつながりをお互いに共有する～Sharing」です。基本的に木とローブの技術があれば、どこでも楽しめるスポーツ。でもせっかくなら、自然が豊かな環境で楽しみたいですよね。そこで今回訪れたのは谷川岳をはじめとする山々にいだかれ、利根川の渓流がすぐ目の前に流れている群馬県・みなかみ町の「猿山-モンキーマウンテン」の「木のぼりツアー」です。

水上I.C.から車で5分ほど、利根川の河川敷が待ち合わせ場所です。ツアーをガイドいただくのは"ヒデさん"こと小林英夫さんです。ヒデさんはTMCAの資格を持つツリーイングチーフインストラクター(ツリーイングの資格取得講習の開催ができる）で、安全で楽しい木登り方法をガイドしてくれます。まずはギアの説明からしてもらいます。といっても身につけるのは体を支えるハーネスとヘルメットと軍手のみと、とてもシンプルです。

それにこの日はスプレー容器を渡されました。こちらに利根川の冷たい水を汲みます。このスプレーは暑くて風が弱い日限定で手渡されるもので、ツリーイング中に自分へかけたり、一緒に登っている相手に吹いたりして楽しむものとのこと。「登るだけじゃない楽しみを大事にしたツアー」とヒデさんは言います。

難しく感じるけど登り始めると夢中

いよいよ登るべき木に到着しました。川岸にすっくと伸びるケヤキの大木で、この木で「遊ばせてもらって」、これから２時間ほどツアー時間を過ごします。まずは一人１本のロープを握り、結び目の作り方のレクチャーから。この結び目は「スリップノット」と呼ばれ、万が一、スーッと降下してしまったときのストッパーの役割があり、登りながら作っていきます。ヒデさんの説明を聞いて、小学校１年生の子どもでも結わえることができました。

次に教わったのは登り方です。輪っかに足をかけ、ロープをひっぱると不思議と体が宙へと上がっていきます。地面に両足が乗っていた安定感がなくなり、「わーきつい！」「これ大変！」と声が上がりますが、やるうちに慣れていきます。続いて降り方も教わります。結び目を緩めてロープを引っ張ると、自然と体が降下。ロープにかけていた手を離すと動きが止まりますので、「何かあったら、手を離す。ぶらりとすれば大丈夫」とヒデさん。

ちょっぴり不安な気持ちも残しつつ、いよいよ地上10mの樹上を目指して、登っていきます。「握力が〜」「お腹の筋肉が笑う」など悲鳴が上がりますが、着実に体は上へ上へ。意外とできるものです。子どもは真剣な表情をしながらも、大人以上にスルスルと登っていきます。途中枝で休んだりしながら登っていくと、景色が開けてきました。地上よりも風が涼しく感じられ、川の流れる音、鳥のさえずりなどが気持ちよく聞こえてきます。

樹木でくつろぐ至福の時間

そしてついに樹上のハンモックに到着。結構体力を使いましたが、達成感がすごいです。ハンモックで体を休めて目を閉じると、野生動物になったみたいな気分になりました。ここでヒデさんより地元名産のチーズタルトの差し入れがありました。お茶を一服しながら木の上で優雅なティータイム。

たっぷり休んだあと下に降りながら6m付近で、「スラックライン」(オプション)を楽しみました。スラックラインとは、ベルト状のラインの上でバランスを楽しむスポーツです。ちょっぴり怖いですが、すでに10mまで上がっているので、比較的ラクに渡れます。それを楽しんだあと地上へと向かいます。降り立つとズシリと重力を感じて、歩き出す足が少し変に感じました。そして最後はヒデさんがロープで作ってくれたブランコで、川に向かって漕ぎ出します。

「ツリーイングって思っていたより楽しかった！」子どもがいうと、ヒデさんは「みんなはじめは怖い！無理！といいながら、楽しんでくれます」と言います。ツアーの締めくくりは、木に挨拶をして終了です。遊ばせてもらった木への感謝、難しいと思っていたことが達成できた喜びを、一緒に登った仲間たちと共有できる素敵な体験でした。

Photos: Hiroyuki Joraku　
Words: Tomohiro Tsuchiya @ Yellowjam

新型コロナウイルス感染症対策とご参加いただくための条件について、詳細はWEBサイトにてご確認ください。
http://saruyama-tree.com/covid19/index.html

2021/8/6

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