武蔵野の地に突如として現れた巨大な岩石の建造物。こちらは2020年の11月にグランドオープンした「角川武蔵野ミュージアム」です。建物は日本を代表する建築家・隈研吾氏が手がけ、館長を稀代の編集工学者・松岡正剛氏が務めています。ミュージアムに隣接して、多目的ホール・ホテル・商業施設・公園・神社などもオープンし、一つの街「ところざわサクラタウン」を形成しています。KADOKAWAと埼玉県所沢市が協業し「みどり・文化・産業」の調和する地域づくりを目指すプロジェクト「COOL JAPAN FOREST構想」による施設で、土地面積は4万㎡にも及びます。アニメーションを筆頭に、ポップカルチャーからハイカルチャーまで、日本文化を発信する「COOL JAPAN」の拠点として、今後国内外に向けて文化を広めていくことが期待されています。いざ、石の建物に足を踏み入れ、その全貌を確かめてみましょう。

隈研吾氏が手がけた石の建築

まずは、この神殿のような岩石の建物に目が奪われます。岩を多角形に組み合わせたデザインは、なんとも言えない不思議な形です。周囲をまわりながら、どこから見ても、少しずつ表情を変えて迫ってきます。
建築デザインを手がけた隈研吾さんは、「僕たちは地球をおおう地殻という、巨大な岩の塊の上に住んでいます。角川武蔵野ミュージアムは武蔵野・所沢の大地の、足元ふかくに眠る地層から、古代の火山堆積物が、足元の地面を割って出てきたような建築です」（『隈研吾／大地とつながるアート空間の誕生 ― 石と木の超建築』展覧会より）と、そのコンセプトを語っています。

そして、石の入口へ吸い込まれるように内部へ入ると、天井の高い開放的なエントランスが広がっています。黒を基調とした引き締まったデザイン空間の中で、目につくのは現代アートの作品たち。奈良美智さんの新作となるブロンズ像、米谷健＋ジュリアさんの「ウルトラブッダ」、クリエイティブカンパニーNAKED,INCの代表作 「NAKED BIG BOOK」、コロナ時代のアマビエをテーマにした会田誠さんの作品など、現代アートを代表する錚々たるアーティストの作品が展示されています。

ミュージアムは５階建てで、１階には約1000㎡の空間を有する「グランドギャラリー」があり、取材当日は本館の博物部門のディレクターでもある荒俣宏氏の『荒俣宏の妖怪伏魔殿 2020』が開催されていました。さらに人気の漫画やラノベを楽しめる「マンガ・ラノベ図書館」があり、みな思い思いの時間を過ごしています。そして3階に上がると、「COOL JAPAN」の中心であるアニメの「EJ アニメミュージアム」があります。

カルチャーの多様性、広汎に触手が伸びていく

最上階となる４階と５階には、「エディットタウン」と呼ばれる美術館＋図書館＋博物館が融合した空間が展開しています。館長である松岡正剛氏による、先進的なジャンル分けと配架による「ブックストリート」は、従来の図書館とは違う刺激に満ちています。隈研吾氏が手がけた書棚のデザインは、「違い棚」と呼ばれる幅も奥行きもバラバラの棚に囲まれており、書物の森を歩くような感覚で本を楽しめます。そしてストリートの途中には、「荒俣ワンダー秘宝館」といった博物館、現代アートが展示された「エディット　アンド　アートギャラリー」などがあり、五感をくすぐりながら、新たな好奇心を呼び覚ましてくれます。

360度、本の宇宙に囲まれる

そして圧巻なのが、奥に進んだ先に広がる「本棚劇場」です。360度、天井までの巨大本棚に、３万冊もの書物が配架されます。劇場奥手の秘密部屋のような階段を上がると、地元・武蔵野をテーマにした「武蔵野回廊・武蔵野ギャラリー」が続き、こちらも隈研吾氏がデザイン監修を手がけています。

さらに展示空間を出た外には、地元「三富(さんとめ)野菜」をはじめ、調味料までもを地場産にこだわったレストラン「SACULA DiNER」があります。ミュージアム終了後も営業しているので、穴場的な贅沢空間で、美味しい食事やワインなどが楽しめます。
自分の知的好奇心を広げてくれ、新たな世界に連れ出してくれる巨大ミュージアムで、あなたは何と出会えるでしょうか。

Photos: Hiroyuki Joraku　
Words: Tomohiro Tsuchiya @ Yellowjam

角川武蔵野ミュージアムでは新型コロナウィルス感染防止対策として、館内における感染防止の取り組み、およびご来館されるお客さまへご協力のお願いをしております。
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安心・安全に当館をご利用いただくために
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2020/11/24取材
2021/6/24編集

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