日本を代表するホテルである「帝国ホテル 東京」（東京都・千代田区）。もし、ここのバルの常連客になれるとしたら？　考えるだけで胸が高鳴りますが、格式の高いイメージがあり、気軽に足を運べないと考える方も少なくないのではないでしょうか。

帝国ホテル 東京 タワー館の地下にあるフランス料理「ラ ブラスリー」の店内一部を改装して、昨年11月にオープンした「ホテルバル」では、そんな我々の憧れをリーズナブルに叶えてくれるサブスクリプションサービスがスタートしました。1日1杯のドリンクを楽しめる「ワンドリンクプラン（月額制）」です。

毎日でも帝国ホテルに飲みに行きたいという方にはぴったり。 "常連客"への扉が、いまここに開かれたというわけです。

130年以上の伝統と、今の時代に沿った新しさが交差する"Bleu Bar"

「ホテルバル」を訪れてみました。真っ先に目に飛び込んできたのは、目の覚めるように鮮やかな青色のバーカウンター、壁、テーブル。今までの帝国ホテルのイメージとは違った "斬新さ"に驚きました。

これは内装デザインを担当したデザイナー・森田恭通さんの狙い通り。「記憶を残す、記憶に残る」"Bleu Bar"をコンセプトに、これまで帝国ホテルに馴染みの薄かった若いゲストにも親近感をもってもらえるようなおしゃれな内装に仕上げたといいます。

壁のいたるところには、人気イラストレーター・SHOGO SEKINEさんによるホワイトペインティングが。パリのフレンチ・ビストロをイメージした店内に、ポップでカジュアルな彩りを添えています。定期的にSHOGO SEKINEさんが描き足していくため、お店に来るたびに違った表情を楽しめるそう。

テーブルや照明、シャンデリアは、ホテル内に1983年に誕生した「ラ ブラスリー」で長年使用されてきたもの。「2020年に開業130年を迎えた帝国ホテルの伝統を大切に継承しながらも、新しい雰囲気をまとったバルへと進化させたい」というホテルの想いが込められています。

和の雰囲気のバルエリアも登場

実は、「ホテルバル」は上記のブルーで彩られた"Bleu Bar"エリアだけでなく、その対面には、和の雰囲気でしっとりした佇まいのエリアもあります。利用時は、その日の気分に合わせて場所を選び、美食を楽しむことができるのです。

ちなみに、和のバルエリアの隣にある「帝国ホテル 寅黒」は、ミシュラン3つ星の「神楽坂 石かわ」を擁する石かわグループと提携して、ホテルバルと同じ日に開店した、帝国ホテル初の直営日本料理店。

「"Bleu Bar"と"和のバル"、今日はどちらに座ろう？」 常連客となった自分を思い浮かべ、思わず笑みがこぼれました。

帝国ホテルならではの料理を、カジュアルに楽しむ

サブスクリプションサービスの「ワンドリンクプラン」でいただけるドリンクは、スパークリングワイン、ワイン、ウイスキー、カクテル、ビール、日本酒、焼酎、ノンアルコールビール、ジュースなどです。

ドリンクとともに楽しみたい料理メニュー（プラン外なので別途有料）も充実。和と洋、それぞれ約15品あるので、ディナー利用にも最適です。

洋のメニューは13年間にわたりヨーロッパ各地で料理の腕を振るってきた東京料理長・杉本雄さんがプロデュース。一品一品にフランス料理の美しさと愉しさのエッセンスが込められています。種類豊富なテリーヌや、日替わりメニューも見逃せません。

今回は「エビージョ」（990円・写真上）とスパークリングワインのペアリングを楽しみました。

エスカルゴパンで提供される「エビージョ」は、海老のムースを、海老の頭から出汁をとったオイルでアヒージョのように仕立てたもの。頭から尻尾まで食材を余すことなく使い、海老の美味しさが凝縮された一皿は、辛口のシャンパンとよく合いました。

和のメニューは石かわグループが「ホテルバル」のために考案したとっておき。旬の食材の美味しさを見極め、出汁のとり方、素材の切り方、焼き方などを吟味した珠玉の日本料理を、少しずつ楽しめます。

旨味と脂がたっぷりの高級魚のどぐろを白こし味噌に漬けた「のどぐろ西京焼き」（4,400円・数量限定）をオーダーしてみました。炭火で煙燻された香ばしさと、添えられた中華スパイス・花椒（ホアジャオ）と蕗の薹入りの赤味噌がクセになります。

せっかくなので、バーテンダーの方に「のどぐろ西京焼き」とのペアリングにおすすめのドリンクを、プラン外のアルコールメニューの中から選んでもらいました。登場したのは、石川県の日本酒「農口尚彦研究所 純米 無濾過 生原酒」（1,860円）。すっきり落ち着いた淡麗系の味わいが特徴の酒米「五百万石」を用いており、口の中にお酒本来のシャープな旨味が広がって濃厚なのどぐろと相性抜群です。

「帝国ホテル」は記念日など特別な日に訪れる場所。そんな先入観を取り払い、毎日でも通いたくなるサブスクプランを帝国ホテル自ら設ける心意気に、拍手。なにより帝国ホテルのバルが行きつけだなんて......誰かに自慢しても、自分だけの秘密にしておいても、日常がさらに眩しく輝きそう。

Words: Riyua Joe（mogShore）
Photos: Takahiro Okamoto
2022/4/6

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