和食を代表する寿司。周囲を海に囲まれた日本では魚食文化が発達し、寿司という分野にも、最上のネタを一流の職人が握る高級寿司から、カジュアルに楽しめる回転寿司まで多種多様な業態が展開されています。そんな寿司は世界的にも評価されており、レストランの格付けガイドでも多くの寿司店がランクインします。

なかでも高評価を受けている「鮨 銀座おのでら」は名店がひしめく東京・銀座でも人気の店。その寿司店が表参道に回転＆立食い寿司店「廻転鮨 銀座おのでら本店」「立喰鮨 銀座おのでら本店」を出店し話題となっています。高級店が、回転寿司を展開した背後にある想いを伺います。

大間のマグロが回る

寿司屋の華となるネタはやはりマグロ。高級店でも回転寿司店でもそうですが、同じマグロでも雲泥の差があります。遠洋で大量に漁獲され冷凍されてくるものと、近海での釣りなどで一尾一尾漁獲されるマグロとでは、味の差も、当然価格の差も大きいです。こちら「廻転鮨 銀座おのでら本店」では、黄金の皿に乗って、近海もののハイクオリティなマグロが回ってきます。この日は青森・大間にて、延縄（はえなわ）で獲られた本マグロ。言わずと知れた最高級マグロの代名詞です。

「このマグロは豊洲の『やま幸』さんより仕入れたものです」とは料理長の伊藤弘庸さん。「やま幸」とはマグロを専門に扱い、その目利き力で名だたる名店に支持されている仲卸。通常、回転寿司屋が顧客になることは稀で、同店は銀座の総本店・本店なども含めたグループ全体で取引きを行なっているそうです。
写真の「やま幸本まぐろ中トロ」は、色・艶とも申し分なく、口に運べば良質なマグロの脂にシャリがはらりと解け、幸せな味で満たされます。このクオリティは間違いなく、高級寿司店のカウンターで味わうマグロです。

一流職人の技を継承！

続いてきらりと光る「自家製小肌」に、肉厚でフワフワの「自家製煮穴子」をオーダー。寿司職人の腕が問われる二大看板のネタですが、メニュー名通りこちらは店内仕込み。伊藤料理長曰く「店のオープン前に銀座店の厨房に数ヶ月入りました。その仕込み方法を学んで、こちらで再現しています」。またシャリも銀座店と同じ赤酢を使っているのが特徴。マイルドな味わいでネタの旨味を引き立てます。

一方で「自家製カステラ玉子」はオリジナルの一品。エビのすり身と山芋、メレンゲを材料に蒸し焼きにしています。ふわりと上品な甘みが身上です。

寿司屋の新しいカタチ

回転寿司、立食い寿司ともふらっと入れる雰囲気がいいです。回転寿司では、漁火（いさりび）をイメージしたという天井デザインをはじめ、モダンな内装は女性にも人気で、一人で訪れる方も多いといいます。立食い寿司は回転寿司と併設されていますが、入口は別にあり、ちょっと特別な感じで使えるのが嬉しいです。値段は回転寿司よりも１~２割高い設定ですが、カウンター越しに目の前で職人が握ってくれる寿司が楽しめます。

寿司の充実はもちろん、おつまみやお酒も豊富にラインアップされています。特にお酒は、日本酒、ワインともグラスで数百円から、ボトルで数万円のプライスゾーンで用意されており、幅広いニーズに対応してくれます。手元のタブレットで注文できるので、予算に応じて食事やお酒が楽しめて、さらに明朗会計なのも嬉しいです。

人気の高級店は数ヶ月先の予約待ち、しかもコースのみがほとんどとハードルが高いのに比べ、こちらは日常的に通え、寿司も一貫からと手軽に楽しめます。それでいて味は本格派と、三拍子揃い。「仕込みの手間暇は惜しまず、銀座本店のクオリティを届けられたらという気持ちでやっています。お客様に笑顔で帰ってもらいたいです」との言葉通り、ハイクオリティな寿司をサッとつまむ。江戸時代のファーストフードとして生まれた寿司屋の原点を、現代風な粋で味わえるお店といえます。

Photos: Hiroyuki Joraku　
Words: Tomohiro Tsuchiya
2022/9/27