近年、子どもの食物アレルギーが増加傾向といわれています。それを反映してか食べ物の原材料への意識が高まっている印象がありませんか？知人や友人家族に何気なく渡していた手土産も、少し立ち止まって考える必要があるかもしれません。

そんな問題をナチュラルに回避して、分け隔てない笑顔をつくれたら......ヴィーガンカフェ「8ablish（エイタブリッシュ）」が販売するアレルゲンフリーのクッキー缶にはそんな願いが込められています。

新たなコンパクトシティ・麻布台ヒルズの中のヴィーガンカフェ

2023年の秋、虎ノ門・麻布台エリアの再開発で誕生した複合施設「麻布台ヒルズ」。自然豊かな中央広場を中心に、高層ビルやホテルが備わり、未来に向けた新たな暮らしがつくられています。

そんな麻布台ヒルズにある「8ablish」は、青山から移転したばかりのヴィーガン（肉や魚はもちろん、卵や乳製品も含め動物性食品を口にしない完全菜食主義者）専門のカフェです。

客席のほとんどがテラス席で、愛犬の同伴が可能。爽やかな青空の下、おいしい食事を楽しめます。ヴィーガンやアレルギー体質の人だけではなく、健康、美容に関心のある人たちも訪れています。

店内には印象的なイラストが至るところに。
「これは創業者のセルフポートレートがモチーフの作品です。彼女は、ニューヨークの美術大学出身のグラフィックデザイナーなんですよ」と広報の宅間さんが教えてくれました。

イートインメニューのほか、ヴィーガン向けの保存食やお菓子、ペット用の自然由来の衛生ケアスプレーなども販売する「8ablish」。人と環境に配慮された商品の数々はポップなイラストに彩られ、思わず手に取りたくなります。
その中で、お子さんのいる家庭への手土産に人気のクッキー缶TOP2をご紹介します。

ナッツフリーの動物型のヴィーガンクッキー

一つ目はロングセラー商品「ハグ・ミークッキー」。卵・乳製品・白砂糖・ナッツ不使用のクッキー缶です。「抱きしめて！」と甘える子を親フクロウが慈しむかのようなイラストにほっこりします。

レモンのアイシングクッキー、メープル味のふくろうのクッキー、小さな鳥と木のクッキーはメープル味とココア味それぞれあり、全部で18枚入りです。
有機ココアパウダーや有機メープルシロップなど、オーガニックな素材を積極的に使用した優しくシンプルな味わいと、サクッとした食感が口の中でよいリズムを生みます。

二つ目は「キャッチ・ミークッキー」（2,916円）。「私を捕まえて！」と元気いっぱいのうさぎのイラストのパッケージです。米粉をベースにした、小麦・卵・乳製品・白砂糖不使用のクッキー缶です。

バニラ味のうさぎのクッキー、ビターなチョコチップクッキー、アイシングのハートクッキーを詰め合わせた合計16枚入り。使用する有機チョコレートは、コンタミネーション（製造ラインでアレルギーの原因となる素材が混入すること）がないよう対応したものを使用しています。「ハグ・ミークッキー」よりもクッキーに厚みがあり、米粉由来のホロホロとした食感が優しい味わいです。

お菓子作りの要となる卵や牛乳が使えないため、淡白な味を想像していた筆者。食べてみるとコクや甘さ、風味がしっかりとしたリッチな味わいでした。なにより形がかわいく、大人でもハッピーな気持ちになります。

厨房ではパティシエ・加藤さんがせっせとクッキー作りに励みます。「なぜヴィーガンカフェに？」と伺えば、学生時代からアレルギー問題に関心があったそうです。

「パティスリーでアルバイトをしていた頃、アレルギー持ちのお子さんを連れた親御さんに『どのケーキなら食べられる？』と聞かれても、ゼリーしかおすすめできませんでした。他の兄弟はケーキなのに、その子だけゼリー。もう少しできることがあるのではと、ヴィーガンスイーツに興味を持ちました」（加藤さん）。

今は多様なスイーツや特製デコレーションケーキも提供できるようになった加藤さん。これまでのお菓子作りとは違う難しさはありながらも、「素材の役割を一つひとつ分解して科学のように考えるのがおもしろいんです」。時おり耳に入るお客さんの声もモチベーションになっているようです。

ヴィーガンの背景にある社会貢献への情熱

「ハグ・ミークッキー」の中でひときわ目立つ「レモン」の存在。「8ablish」ではよくレモンを商品に取り入れるそうです。

「アメリカの小児がん支援に『レモンプロジェクト』（レモネードを販売して、小児がん支援のための寄付金を集める活動）があるように、レモンは社会貢献と結びつきが強いイメージがあると私たちは考えています。明るいカラーで元気を与えたい！という創業者のデザイナーとしての視点もあります」（宅間さん）。

30年ほど前、創業者である代表の川村明子さんは、友人とともに「ダブルオーエイト」というデザイン会社を立ち上げました。その方がヴィーガンでした。しばらくしてインテリア関係の仕事をしている友人とのご縁でカフェ創設の機会に恵まれた際、デザイン会社が手がけるカフェであることからクリエイティブな発想を持ち、「限られた食材でおいしい食事を提供する」というコンセプトを決定。「8ablish」の前身となる「カフェエイト」をオープンします。

ちなみに「8（エイト）」は、川村さんの誕生日に「8」が関係することと、好きな映画のタイトル「ダブルオーセブン（007）」をもじったことからはじまったそうですが、「末広がりで縁起がいい」と現在もこだわっているそう。

宅間さんは川村さんについてこう話します。
「川村は過去に子宮頸がんを患い、妊娠出産ができなくなりました。その出来事がきっかけとなり、全ての子どもとペットを自分の子どものように慈しみたいという考えの元、子どもや動物たちへの愛情を持ちながら作品を創り続けています。私も彼女の創造性の豊かさとユニバーサルな愛情に刺激をうけています」。

「私たちはヴィーガンであること以上に、オーガニックであることを大切にしています。体に取り入れるものを安全にすることが何よりのこだわりで、だからこそ国境・宗教・体質などのハードルを超えて全ての人に届けられる。ヴィーガンをコンセプトにすることは、ボーダーレスな食事という点で非常にユニークだと考えています」。

知らずのうちに選ぶ、思いやりの選択肢

アレルギーは個人的でデリケートな問題を含みます。もしも誰かへの手土産に迷ったら、ここへ来てみてはいかがでしょうか。「かわいいパッケージだったから」と、相手に気を遣わせることなく、思いやりとおいしさを届けられるはずです。

Words：Yui Ichihara
Photos：Yasuharu Hoshino

2024/1/26

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