つい数カ月前、白金高輪の路地裏にワインバーがオープンした。店名は『chet』。名前が、トランペッターのチェット・ベイカーを連想させることから、ちょっと気になっていたのだ。それが由来なら、きっとセンスのいい店に違いない。

ワインバーながら、とりあえず１杯目はビールを飲みたくて、箕面ビールのIPAを注文。食事のメニューを眺めながら喉を潤す。「トリュフ風味のウフマヨ」「トレビスとチコリ、レーズン、チーズのサラダ」など、気が利いたラインナップに目を奪われる。選んでいるうちにビールを飲み干してしまったので、本丸のワインに移行することにした。

連載の第１回で 紹介した「Niru」もさすがのセレクトだったが、こちらの店も負けてはいない。今回は、おすすめだというオレンジワインのボトルにしてみた。軽めのロゼのような風味で飲みやすく、食事との相性もよし。当然のごとく、ぐいぐいとボトルは目減りしていく。

そして、ここchetで外せないのが写真の「スフレオムレツ」だ。生ハムとチーズと卵の組み合わせが抜群で、朝マックの最高峰とでもいえばいいのだろうか。「パテドカンパーニュ」も絶妙だし、何を食べても美味しいんだけど、まずこれだけは必ず注文してほしい。ワインのボトルも空き、スフレとのマリアージュに合うセレクトは......となったところで、今度はグラスの泡を注文する。

BGMに僕の好きなシンガーのホセ・ジェームスが流れていたこともあり、気になっていた質問をオーナーにぶつけてみた。「店名の由来は、チェット・ベイカーから？」。やっぱり、思ったとおりだった。そりゃ、外さないわけである。こちらの店も、デートや気のおけない知人との食事におすすめ。軽く食べて飲んでふたりで１万円、しっかり食べて飲むとひとり１万円くらいだと思う。その日の調子にあわせて適宜調整をば。


山本憲資　プロフィール
大学卒業後、広告代理店を経て、雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。食、テクノロジー、カルチャーなど幅広い企画を手がける。その後、起業し2011年ソーシャルメディア「Sumally（サマリー）」をローンチ、続いて2015年にスマホ収納サービス「サマリーポケット」のサービスを開始。休日は、趣味の食べ歩きを全国津津浦浦と気ままに楽しんでいる。

2019/10/24取材
2021/6/24編集

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