気候変動への取り組み(TCFD提言への対応)
ガバナンス
気候変動への対応は、サステナビリティへの取り組みの重要な要素として、取締役会の監督のもと、サステナビリティ委員会を中心とした推進体制を構築し、経営戦略と一体化した取り組みを推進しています。
戦略
カーボンニュートラルに向けた動きが世界中で加速する中で、金融機関として脱炭素社会の実現に向けて果たすべき役割を強く認識し、「気候変動への対応」をマテリアリティとして選定しています。
気候変動関連のリスクと機会への具体的な認識・取り組みは以下のとおりです。今後の環境変化に応じて、各種事例やリスクの分類について見直しを行います。
気候変動に関する機会
機会の事例 |
時間軸 |
---|---|
|
短期~中期 |
|
中期~長期 |
気候変動に関するリスク(移行リスク、物理的リスク)
リスクの分類 |
移行リスクの事例 |
時間軸 |
物理的リスクの事例 |
時間軸 |
|
---|---|---|---|---|---|
信用リスク |
|
短期~長期 |
|
短期~長期 |
|
市場リスク |
|
短期~長期 |
|
短期~長期 |
|
流動性リスク |
|
短期~長期 |
|
短期~長期 |
|
オペレーショナル |
|
短期~長期 |
|
短期~長期 |
|
風評リスク |
|
短期~長期 |
|
短期~長期 |
カーボンニュートラルに向けたロードマップ
気候変動関連のリスクと機会に対する中長期的な取り組みとして、パリ協定の合意事項を踏まえたカーボンニュートラルの実現に向けたロードマップおよび具体的な行動計画を策定しています。
行動計画は随時アップデートし、また、その進捗につきましては、適切な開示によりステークホルダーとのコミュニケーションを促進していきます。
事業者としてのCO₂排出量ネットゼロの取り組み
あおぞらサステナビリティ目標に掲げる「2030年度までにScope1,Scope2実質ゼロ達成」に向けて、省エネルギー設備/機器への更新および自社調達やサプライヤーへの対応を進め、事業者としての環境負荷低減の取り組みを推進しています。
再生可能エネルギー化、使用電力の削減
本店が入居している上智学院ソフィアタワーの使用電力は100%再生可能エネルギー由来となっています。また、断熱性の高いガラス・自然換気システム・屋上緑化などの導入、オフィス部分での自動調光制御システムおよびLED照明の採用などにより、従来型機器使用に比して消費電力を抑制した、環境に配慮した建物となっています。
各支店においても順次使用電力のグリーン化を進めており、名古屋支店に続き、日本橋支店を2023年4月よりグリーン化、札幌支店も2023年8月の移転に伴いグリーン化しています。
各拠点における省エネ設備への更改
府中別館では環境負荷を考慮した省エネ設備への更改を進めており、2023年度末時点で全館の約8割の照明をLED化、空調設備についても空冷式冷凍機を廃止、最新の水冷式空調への更改を完了しました。また、各支店においてもほぼ全店で照明のLED化を完了しました。
エコカーへの切り換え、EVバッテリー充電装置設置
本店および各拠点で使用している社用車のエコカーへの切り換えを進めており、2024年5月現在エコカー比率は92%となっています。また、本店一階には2023年度に電気自動車やPHV車のバッテリー充電器を設置、社用車のみならずお客さまにもご利用いただくことが可能
カーボンオフセットへの取り組み
データセンターを兼ねる府中別館において、CO₂排出量の削減に努めています。2022年度は同館で使用する冷温水について、J-クレジット※によるカーボンオフセットを実施しました。また、2024年度には、使用電力の実質再エネ化を予定しています。
お客さまの脱炭素化に向けた取り組み支援
気候変動の取り組みに取り残される企業は、将来的に炭素負荷の増大などの大きなリスクに直面する可能性があることから、お客さまの脱炭素化に向けた取り組みを支援していくことが、当行グループが果たすべき重要な役割です。
また、お客さまの脱炭素化の進展は、当行グループの投融資ポートフォリオのCO₂排出量実質ゼロにも繋がるため、脱炭素化支援の枠組みを構築し、多方面からの支援を実施しています。
あおぞらESG支援フレームワークにおけるお客さま向け脱炭素支援体制
炭素関連資産の状況
TCFDの提言を踏まえ、炭素関連資産について、セクター別の貸出残高および割合の状況を開示しています。
炭素関連資産(貸出残高)
(2024年3月末現在)
セクター |
貸出残高 |
割合 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|
石油・ガス |
637 |
1.6% |
||||
石炭 |
- |
- |
||||
電力※ |
764 |
1.9% |
||||
エネルギー小計 |
1,400 |
3.4% |
||||
航空貨物輸送 |
57 |
0.1% |
||||
航空旅客輸送 |
26 |
0.1% |
||||
海運 |
80 |
0.2% |
||||
鉄道 |
230 |
0.6% |
||||
陸運 |
122 |
0.3% |
||||
自動車・部品 |
215 |
0.5% |
||||
運輸小計 |
729 |
1.8% |
||||
金属・鉱業 |
465 |
1.1% |
||||
化学品 |
987 |
2.4% |
||||
建材 |
152 |
0.4% |
||||
資本財(建物等) |
1,574 |
3.9% |
||||
不動産管理・開発 |
11,228 |
27.6% |
||||
素材、建築物小計 |
14,406 |
35.4% |
||||
飲料 |
95 |
0.2% |
||||
農業 |
1 |
0.0% |
||||
包装食品・肉 |
142 |
0.4% |
||||
紙・林産物 |
311 |
0.8% |
||||
農業、食料、林産物小計 |
550 |
1.4% |
||||
全セクター合計 |
17,086 |
42.0% |
シナリオ分析
2050年までを対象とした定量的なシナリオ分析は下表のとおりです。このほか、NGFSシナリオ※1における企業財務への影響の把握への取り組みを開始しています。今後も、分析手法に関する知見の拡大、精度の向上に努めていきます。
移行リスク |
物理的リスク |
|
---|---|---|
シナリオ |
IEA(国際エネルギー機関) World Energy Outlook STEPS(3℃)シナリオ、NZE(1.5℃)シナリオ |
IPCC(気候変動に関する政府間パネル) RCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)/RCP2.6シナリオ(2℃シナリオ) |
分析手法 |
パラメーターや公開情報などを基に将来の投資負担の増加についても考慮に加え、取引先企業の業績影響への度合い(信用力低下の程度)を把握し、引当コストの増加額を試算 |
河川氾濫、高潮による浸水被害における建物損傷率を算出し、使途物件の損傷に起因した引当コストの増加額を試算 |
分析対象 |
電力、エネルギー、自動車、不動産(ノンリコースローン、REITを除く)、素材セクター※2 |
国内外の不動産ノンリコースローンの担保物件 |
分析結果 |
|
災害の影響を受けにくい立地や堅牢な担保物件が多いことから、洪水/高潮による被害の可能性が認められた物件は限定的であることを確認 |
増加が |
現時点における引当コストとの比較において、2040年まで最大200億円程度増加し、2050年にはネットゼロ社会への移行の進展に伴い財務状況が改善するため最大40億円の増加と予想 |
2050年までの期間において10億円程度の増加と予想 |
財務的影響 |
分析対象セクターにおける将来の投資負担について検討を実施したこと等により、前年度に比べて引当コストの試算結果が増加 |
自然災害や異常気象の増加等に起因する影響は顕在化の前提が数年単位で変化する性質のものではないことから、2023年度は新たな分析は実施していない |
グリーンボンドの発行
環境課題へ取り組む国内外の企業に対するファイナンスを通じた財務面でのサポートや、投資家のニーズへの対応は、金融機関としての社会的責任の一環であると考えており、太陽光・風力発電をはじめとする再生可能エネルギー、グリーンビルディングなど、環境改善に資する事業への投融資に資金使途を限定したグリーンボンドを2021年3月、2023年3月、2023年9月に発行しました。
当行が発行したグリーンボンドは、国際資本市場協会(ICMA)の「グリーンボンド原則2018」※1、及び環境省の「グリーンボンドガイドライン2020年版」※2に沿って策定した「グリーンボンド・フレームワーク」に基づき管理されており、同フレームワークは、第三者認証機関であるSustainalytics社によるセカンドパーティ・オピニオンを取得しています。
グリーンボンド・フレームワークについて
資金使途
グリーンボンドの発行により調達した資金は、一定の基準を満たす再生可能エネルギープロジェクト及びグリーンビルディングに対する投融資(適格グリーンプロジェクト)に充当します。
適格グリーンプロジェクト |
||
---|---|---|
再生可能エネルギー |
|
発電施設の事業検討段階において環境影響評価法や同条例等を遵守する再生可能エネルギープロジェクト(太陽光発電施設、風力発電施設、バイオマス発電施設※1)の建設、取得、改修、運営に係る投融資 |
グリーン |
|
グリーンビルディング認証の上位2ランク※2を取得する環境不動産の建設、取得、改修費用に係る投融資 |
プロジェクトの評価及び選定プロセス
適格グリーンプロジェクトは、定められた基準への充足状況について各種資料等を用いて適合性を評価し、選定されます。この評価、選定に対しては、妥当性評価プロセスを設けており、選定プロセスにおける所定の基準への適合性が確保される体制としています。さらに、適格グリーンプロジェクト選定後には、年に1度、これらの選定プロセスが基準に適合していることを確認することとしています。
資金管理
グリーンボンドにより調達した資金の適格グリーンプロジェクトへの充当状況及び未充当資金の額等についてのモニタリングを定期的に実施します。また、未充当資金が生じた場合は、現金又は現金同等物で管理します。
レポーティング
グリーンボンドが償還されるまでの間、充当対象となった再生可能エネルギープロジェクトの件数やグリーンビルディングの取得認証の種類・ランク別の物件数及び各々の充当額等を記載した資金充当状況、並びに二酸化炭素排出削減量等の環境改善効果について記載したレポーティング資料を、年に1回、当行ホームページに掲載します。
グリーンボンド・フレームワークの詳細は下記をご覧ください。
(レポーティング)
グリーンボンドにより調達した資金の充当状況及び環境改善効果については、下記をご覧下さい。
リスク管理
気候変動リスクについて、「信用リスク」「市場リスク」「流動性リスク」「オペレーショナルリスク」といった既存の金融リスク分類の中で、金融リスクを誘引する「ドライバー」として、既存のリスク管理の枠組みに統合する形で管理しています。また、気候変動リスクを「トップリスク」の各項目の中に落とし込み、リスクアペタイトや業務運営計画の議論に活用し、リスク管理の高度化に取り組んでいます。
個別案件の取り上げに際しては、「環境・社会に配慮した投融資方針」に基づき対応しています。同方針は、ビジネス環境や社会的な要請および事業活動の変化等に応じて、マネジメントコミッティー、サステナビリティ委員会における議論を通じて随時見直しています。
- 与信禁止への該当が疑われる与信案件については、クレジットコミッティーまたは投資委員会が個別案件毎の背景や特性なども総合的に勘案し取引の可否を判断
- 新設の石炭火力発電所に対するファイナンスおよび既存発電設備の拡張に対するファイナンスには取り組まない方針
- 赤道原則に基づき、大規模な開発プロジェクトに融資する際に、当該プロジェクトの環境・社会リスクを特定、評価、管理
- 案件検討時に、入手可能な場合は取引先の温室効果ガス(GHG)排出量に係る情報を把握
- 気候変動と自然資本/生物多様性を一体的に理解し、対応を進めていく必要性を認識
「赤道原則」の採択
赤道原則(Equator Principles)は、開発を伴うプロジェクトにおける環境・社会に対するリスクと影響を特定、評価、管理するためのフレームワークです。
当行は赤道原則に署名しており、大規模な開発を伴うプロジェクトに融資する際には、自然環境や地域社会に与える影響の回避・緩和が適切に行われているか確認しています。
指標と目標
あおぞらサステナビリティ目標に基づく、気候変動関連の目標は以下のとおり
目標 |
2023年度実績 |
|
---|---|---|
事業者としてのCO₂排出量(Scope1,2) |
2030年度までに実質0 |
40%減(2020年度比) |
投融資ポートフォリオのCO₂排出量 |
2050年度までに実質0 |
投融資ポートフォリオのCO₂排出量をご参照ください※ |
石炭火力発電所向けプロジェクト・ファイナンス残高 |
2040年度までに残高0 |
257億円 |
サステナブルファイナンス実行/組成額 |
2027年度までに(7年間)1兆円 |
約6,470億円 |
投融資ポートフォリオのCO₂排出量(Scope3:カテゴリ15)
【貸出】Financed Emissions(kt-CO₂)
石油・ガス |
電力 |
航空貨物輸送 |
航空旅客輸送 |
海運 |
鉄道 |
陸運 |
自動車・部品 |
金属・鉱業 |
化学品 |
建材 |
資本財(建物等) |
不動産管理・開発 |
飲料 |
農業 |
包装食品・肉 |
紙・林産物 |
その他 |
合計 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Scope1,2 |
146 |
763 |
20 |
40 |
9 |
47 |
122 |
8 |
918 |
558 |
268 |
85 |
16 |
11 |
58 |
581 |
44 |
1,120 |
4,815 |
Scope3 |
326 |
335 |
11 |
22 |
5 |
26 |
68 |
130 |
1,525 |
3,275 |
730 |
318 |
90 |
45 |
27 |
264 |
75 |
3,656 |
10,925 |
Scope1,2 |
Scope3 |
|
---|---|---|
石油・ガス |
146 |
326 |
電力 |
763 |
335 |
航空貨物輸送 |
20 |
11 |
航空旅客輸送 |
40 |
22 |
海運 |
9 |
5 |
鉄道 |
47 |
26 |
陸運 |
122 |
68 |
自動車・部品 |
8 |
130 |
金属・鉱業 |
918 |
1,525 |
化学品 |
558 |
3,275 |
建材 |
268 |
730 |
資本財(建物等) |
85 |
318 |
不動産管理・開発 |
16 |
90 |
飲料 |
11 |
45 |
農業 |
58 |
27 |
包装食品・肉 |
581 |
264 |
紙・林産物 |
44 |
75 |
その他 |
1,120 |
3,656 |
合計 |
4,815 |
10,925 |
Data Quality Score(1が高評価⇔5が低評価)
石油・ガス |
電力 |
航空貨物輸送 |
航空旅客輸送 |
海運 |
鉄道 |
陸運 |
自動車・部品 |
金属・鉱業 |
化学品 |
建材 |
資本財(建物等) |
不動産管理・開発 |
飲料 |
農業 |
包装食品・肉 |
紙・林産物 |
その他 |
合計 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Scope1,2 |
3.1 |
2.8 |
4.8 |
4.0 |
4.0 |
4.0 |
4.0 |
4.4 |
2.3 |
2.3 |
2.0 |
4.2 |
4.2 |
4.0 |
4.0 |
4.2 |
4.0 |
4.1 |
3.8 |
Scope3 |
3.9 |
4.5 |
4.8 |
4.0 |
4.0 |
4.0 |
4.0 |
4.4 |
3.4 |
3.4 |
2.8 |
4.2 |
4.2 |
4.0 |
4.0 |
4.2 |
4.0 |
4.1 |
4.1 |
Scope1,2 |
Scope3 |
|
---|---|---|
石油・ガス |
3.1 |
3.9 |
電力 |
2.8 |
4.5 |
航空貨物輸送 |
4.8 |
4.8 |
航空旅客輸送 |
4.0 |
4.0 |
海運 |
4.0 |
4.0 |
鉄道 |
4.0 |
4.0 |
陸運 |
4.0 |
4.0 |
自動車・部品 |
4.4 |
4.4 |
金属・鉱業 |
2.3 |
3.4 |
化学品 |
2.3 |
3.4 |
建材 |
2.0 |
2.8 |
資本財(建物等) |
4.2 |
4.2 |
不動産管理・開発 |
4.2 |
4.2 |
飲料 |
4.0 |
4.0 |
農業 |
4.0 |
4.0 |
包装食品・肉 |
4.2 |
4.2 |
紙・林産物 |
4.0 |
4.0 |
その他 |
4.1 |
4.1 |
合計 |
3.8 |
4.1 |
FE計測 貸出残高(10億円)
石油・ガス |
電力 |
航空貨物輸送 |
航空旅客輸送 |
海運 |
鉄道 |
陸運 |
自動車・部品 |
金属・鉱業 |
化学品 |
建材 |
資本財(建物等) |
不動産管理・開発 |
飲料 |
農業 |
包装食品・肉 |
紙・林産物 |
その他 |
合計 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
貸出残高 |
54 |
199 |
6 |
4 |
3 |
23 |
14 |
19 |
49 |
107 |
53 |
59 |
316 |
12 |
5 |
17 |
33 |
1,337 |
2,310 |
計測カバー率(%) |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
100 |
貸出残高 |
計測カバー率(%) |
|
---|---|---|
石油・ガス |
54 |
100 |
電力 |
199 |
100 |
航空貨物輸送 |
6 |
100 |
航空旅客輸送 |
4 |
100 |
海運 |
3 |
100 |
鉄道 |
23 |
100 |
陸運 |
14 |
100 |
自動車・部品 |
19 |
100 |
金属・鉱業 |
49 |
100 |
化学品 |
107 |
100 |
建材 |
53 |
100 |
資本財(建物等) |
59 |
100 |
不動産管理・開発 |
316 |
100 |
飲料 |
12 |
100 |
農業 |
5 |
100 |
包装食品・肉 |
17 |
100 |
紙・林産物 |
33 |
100 |
その他 |
1,337 |
100 |
合計 |
2,310 |
100 |
対象アセット |
コーポレート・ローン、プロジェクト・ファイナンス |
---|---|
対象年度 |
2022年度 |
算出における計算式(PCAFスコア1~4) |
FE = 帰属係数×GHG排出量 |
算出における計算式(PCAFスコア5) |
FE = 貸出残高×PCAFデータベースから引用した資産額当たりの排出係数 |