人材戦略

1. あおぞら銀行グループの人材戦略

当行グループは、経営理念として「新たな金融の付加価値を創造し、社会の発展に貢献する」ことを掲げ、従業員数約2,500名とコンパクトな規模ながら高い専門性と提案力を武器に、質の高い金融サービスを提供しています。それを担う「人財」こそが価値創造の源泉であり、当行グループの「人的資本」 であると考えます。

経営理念に基づいた中期経営計画「AOZORA2027」を実現するために

当行グループでは、従前より企業価値創造の源泉である「人的資本」の強化を経営戦略の土台に据えています。中期経営計画「AOZORA2027」において人材戦略が目指す姿を「社員と当行グループが新たな金融の『付加価値を創造』する人材へと『育ち』『変わる』ことで、全てのステークホルダーがともに『豊かになる』。そして、社員が誇りを持ち、働きがいのある会社を実現する」と定めました。この目指す姿の実現に必要な人材とは「お客さまの視点に立ち、困難な課題に挑み解決できる人材」であり、その人材がいきいきと働ける組織とは「経営理念実現に向けて一体感を持ち、迅速に意思決定する組織」であります。経営理念や経営戦略と連動した人材戦略の実践を通じ、中長期的な企業価値向上を目指していきます。

人材戦略に関する画像 人材戦略に関する画像

「人的資本」が企業価値創造の源泉であるとの考えのもと、当行グループでは継続的に外的報酬・内的報酬の両面で人的資本投資を強化しています。

人的資本投資の方針と施策
  • 外的報酬:競争力のある報酬制度の維持(4年連続ベア実施)、株式報酬制度(従業員対象)
  • 内的報酬:従業員エンゲージメント、ウェルビーイング向上(働きがいがあり、安心して働ける環境整備)

これを受けて、2023年度の赤字決算等厳しい環境下においても従業員の定着率は依然として高く、2024年度の業績回復に繋げています。

離職率推移については、統合報告書 2025 資料編 P44「非財務情報インデックス(退職者数)」をご参照ください。

しかしながら、目指す姿の実現にあたっては、「経営戦略の実現に必要な、付加価値を創造する人材の拡充」「当行の強みである投資銀行ビジネス等注力分野への更なる人員シフトの必要性」「付加価値を創造する人材へのメリハリある報酬配分が不十分」「組織としての一体感の不足」が課題であると考えています。これらの課題を解消するため、人材戦略の4つの基本方針を策定しました。
これら4つの基本方針に沿った人的資本投資を、経済環境の変化にかかわらず継続していくことで、人的資本の価値を高めていきます。

付加価値創造に繋がる人的資本投資

付加価値創造に繋がる人的資本投資に関する画像 付加価値創造に繋がる人的資本投資に関する画像
  1. 従業員アンケート
  2. 連結ベース・ビジネス本部除く

人材育成

当行グループは、お客さまの視点に立ち、困難な課題に挑み解決できる人材を目指す人材像と再定義し、人材育成プログラムも、従業員の主体性を尊重し、チャレンジを後押しする人材育成のコンセプトを変えることなく、注力ビジネスや目指す人材像に沿う形で見直しました(見直し箇所は下図赤枠内を参照)。

あおぞら銀行グループの人材育成プログラム

あおぞら銀行グループの人材育成プログラムに関する画像 あおぞら銀行グループの人材育成プログラムに関する画像
  1. 従来の年次別研修を、昇格準備研修に変更
  2. マネジメント力強化のため、組織開発力・人材育成力をより重視した内容に変更
  3. 従来の各部門独自の研修を体系化
  4. 新たに追加

投資銀行ビジネス人材の育成

投資銀行ビジネスは当行の注力分野であり、将来収益の源泉です。このため、投資銀行ビジネススキルを備えた人材の育成が最大の課題です。これまでも計画的な人材配置と内外の研修プログラムにより育成に努めてきましたが、人材の質・量のレベルアップを図るため、マネジメント層自らが中心となって2025年度から新たに投資銀行ゼミナールを立ち上げます。今後も目指す人材像に基づいた育成方針に則し、付加価値を創造する人材を育成していきます。

投資銀行ゼミナール設立の抱負

取締役会長(投資銀行ゼミナール長)
山越 康司

投資銀行ゼミナール設立の抱負

当行は、1957年の設立にあたり、また特別公的管理を経て再出発した時も、未開拓のビジネスに挑戦することが存在意義である、としてきました。不良債権投資(または事業再生債権投資)や再生ファイナンス、不動産ノンリコースローン、国内LBOローン等、他行に先駆けて開拓したビジネスがその証です。これらの事業を推進した担当者が、現在の経営陣や役員を務めています。投資銀行ゼミナールはこうしたメンバーが中心となり、専門知識やノウハウだけでなく、チャレンジ精神や情熱といった当行の良きDNAを組織的に伝承する目的で設立しました。
金融の世界では形のないモノに付加価値を付けて相手に提供することが必要です。そのために最も必要な能力はコミュニケーション力、とくに駆け引きの武器となる交渉力です。若手に対しては、結果を急ぎ「早く成長」するのではなく、困難を克服し将来「大きく成長」することを期待しています。

キャリア自律に向けた取り組み ~経験領域拡大プログラム

人材育成と従業員の働きがい向上の観点から、従業員が主体的にキャリアを築いていけるようキャリア自律を支援する取り組みを継続しています。この結果、希望する業務に必要なスキルや適性を実践の場で確認し、自ら能力を高めステップアップを図る事例が増えています。これからも、全ての従業員が付加価値を生み出す「人財」へと「育つ」環境を築いていきます。

付加価値を創造する人材の採用

当行グループでは経営理念を体現できるポテンシャルの高い人材を採用しています。キャリアコースは全国総合職 、地域総合職 、IT職、契約型プロフェッショナル(高度専門人材)、契約型スペシャリスト職の5つで、全ての採用者は将来の中核人材や高度専門人材として採用しています。
なお、当行は高い専門性を備えた金融機関として、長年キャリア採用に注力してきました。この結果、多様な経験値・価値観をもち、専門性が高い多数のキャリア採用者が即戦力として活躍しています。2024年度からは「アルムナイ採用(退職者の再雇用)」「リファラル採用(従業員紹介による採用)」を導入し、キャリア採用比率は49%に達しています。

  • 2020年度人事制度改革で一般職を廃止し、キャリアコース統合

アルムナイ採用者インタビュー

アルムナイ採用者インタビュー

マーケット部門で金利系トレーディングを担当しています。30代で当行に転職し、4年間念願のトレーダーとして活躍した後、自分の実力を試したくて他社に転職しました。しかし思うようなキャリアが実現できずかつて働いていた当行の良さに気付き、2024年に再び当行へ戻ることを決意しました。退職後も元上司や同僚との繋がりがあり、再入行に不安はありませんでした。5年のブランクがありましたが、その間の経験も評価され管理職待遇として戻ることができました。当行は転職者にとってキャリア展望が見えやすい会社だと感じます。現在は希望する業務に従事でき大変充実しています。思い切って復帰して良かったです。

市場商品部主任調査役
中野 雄太

採用者数の詳細については、統合報告書 2025 資料編 P44「非財務情報インデックス(新卒/キャリア採用比率)」をご参照ください。

当行では、注力分野である投資銀行ビジネスへの人員シフトを進めています。しかし、今後のビジネス拡大を見越すと現在の人材配置はまだ十分とは言えません。この課題解決に向け、以下の施策を推進していきます。

投資銀行ビジネスへの人員シフトに向けた施策
  • ストラクチャード・ファイナンス経験を持つベテラン人材の活用
  • 高いポテンシャルを持つ若手に早期から現場経験を積む機会を提供
  • タレントマネジメントシステム活用等により、全体最適の人材配置を推進
  • 社内の人材流動性を向上

人材配置

人材配置に関する画像 人材配置に関する画像

当行グループは人材を価値創造の源泉と位置付け、最重要な経営資源と考えています。一時的なビジネス環境や業績の変動に影響されることなく、中長期的な人的資本投資を視野に入れ、適切な報酬水準を維持してきたのはこのためです。

平均年収の推移については、統合報告書 2025 資料編 P44「非財務情報インデックス(平均年間給与)」をご参照ください。

今後、変化が激しく不確実性の高いビジネス環境に対応するためには、各個人の企業価値向上に対する中長期的な貢献度を評価し、報いていくことが必要になります。
中期経営計画「AOZORA2027」では報酬制度に関する以下5つの施策を策定しました。付加価値を創造する人材に公正に報酬を配分し、公正な評価制度を基盤に従業員が能力を最大限発揮できる環境を整備します。

公正な報酬配分

公正な報酬配分に関する画像 公正な報酬配分に関する画像

従業員エンゲージメントの向上

企業価値向上のためには、従業員がいきいきと働ける組織作りとともに、一人ひとりの従業員の働きがいやエンゲージメントを高めていくことが鍵となります。そこで当行グループではエンゲージメント向上に対する課題の把握を目的として、毎年従業員アンケートを実施しています。今回の結果では「働きやすさは定着し、チャレンジ称賛も改善傾向にあるが、働きがいに改善の余地がある」点が引き続き課題であることが分かりました。

2024年度従業員アンケート結果(主要テーマ)

働きやすさ

79%
(前期比±0%)

働きがい

56%
(前期比±0%)

チャレンジへの称賛

47%
(前期比+8%)

あおぞら銀行グループの働きがい実感が高い人の特徴
  • 働きやすく、チャレンジが称賛される環境で働いていると実感
  • 業務量満足度が高く、上司のキャリア支援(コミュニケーション)に満足

この課題を解決する道筋を明確化し、更に一体感のある組織に「変わる」ために、中期経営計画「AOZORA2027」では新たに次のKPIを設定しています。

中計KPI

2024年度
結果

2027年度
目標

「チャレンジへの称賛がある」と感じる割合

47%

55%

「不足する働きがいの要素」のうち
「連帯感・一体感」の順位

1位
(最も不足している)

2位以下

  • 従業員アンケート結果

当行グループでは「お客さまの視点に立ち、困難な課題に挑み解決できる」人材、すなわち顧客志向でチャレンジできる人材育成に注力しています。当行グループの存在意義は、困難に挑み常に新たな金融の付加価値を創造することにあるからです。このため、従業員アンケートにおいても「チャレンジ称賛」を最も重視し、更なる上昇を目指しています。
従業員がエンゲージメントを高め、更に連帯感を持って働くことで、「経営理念達成に向けて一体感を持ち、迅速に意思決定する組織」の実現を目指します。

従業員エンゲージメントに向けた施策
  • 従業員アンケート(年1回):アンケート結果は役員間で議論、人事制度や中計・業務施策に反映
  • エンゲージメント測定ツールWevox(月1回):可視化・分析を行い、現場主導で組織開発・マネジメント力を向上
組織の一体感向上に向けた施策
  • 経営理念浸透に繋げるコミュニケーション・フォーラム(年30回):全従業員が経営理念や働きがいについて議論
  • タウンホールミーティング(年1回):経営理念の浸透に向け、経営陣と従業員が直接対話

従業員のウェルビーイング向上

人材戦略が目指す姿は全てのステークホルダーがともに「豊かになる」ことです。従業員のウェルビーイングはその土台であり、当行グループが価値創造活動をするうえで不可欠な要素です。従業員ウェルビーイング向上のために、従業員の健康維持・増進に向けた健康経営とファイナンシャル・ウェルネスの向上を推進しています。

  • 従業員一人ひとりの心身の健康に加え、社会的にも安定し満たされた状態にあること

健康経営※1への取り組み

当行グループでは従業員が安心し長く働ける環境を整備するため、健保組合(単一健保)と一体で従業員の心と身体の健康維持・増進に努めています。こうした活動を通じて、当行グループ従業員のプレゼンティーイズム※2は平均値を上回り、相対的に健康な組織であるとの結果が示されています。

健康経営推進に向けた施策
  • データヘルス推進計画策定
  • 定期健康診断やストレスチェック
  • 産業医・専門医療スタッフによるアフターフォロー
  • 従業員と家族の人間ドック・がん検診受診補助制度
  • 従業員向けヘルスリテラシー向上施策(各種健康セミナー実施)
    → 5年連続「健康経営優良法人」に選定
    プレゼンティーイズム※286.4(平均+1.5pt、相対的に健康な組織)
  1. 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
  2. 出勤はしているものの健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状態で、企業のコスト損失が大きい要因とされる。従業員アンケート調査結果。今回は「東大1項目版(SPQ)」を使用。

従業員のファイナンシャル・ウェルネス向上

従業員が能力を発揮し活躍するためには、将来にわたり経済的不安がない状態で働けることが大切です。こうした考えから、当行では従業員のファイナンシャル・ウェルネスの実現に向けた制度を整備しています。各種制度・施策の拡充を通じて、従業員と家族の経済的安定性を支え、安心して働ける環境を整備していきます。

ファイナンシャル・ウェルネス向上制度・施策一覧

ファイナンシャル・ウェルネス向上制度・施策一覧に関する画像 ファイナンシャル・ウェルネス向上制度・施策一覧に関する画像

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)

当行グループは、多様な視点を意思決定層に取り入れることが組織の成長と適応力を高め、社会に価値を提供する重要な要素と認識しています。急速に変化するビジネス環境に対応し、持続的な成長と企業価値向上を目指すため、DEI(多様性・公正性・包摂性)推進を重要な経営戦略と位置付けています。
当行グループは「人材育成・環境整備方針」を策定し、キャリア採用者、女性、外国人の管理職比率目標を設定し、多様性確保に注力しています。現在、キャリア採用者の管理職比率は58%に達しています。

人材育成・環境整備方針

方針

取り組み内容

能力のみならず
多様性を
重視した
採用と人材登用

  • 新卒、キャリア採用を両輪とする採用活動の継続
  • 女性総合職の採用強化
  • 多様性に配慮した人材登用の推進

女性従業員の
キャリア形成支援

  • 未経験業務へのチャレンジ支援
  • 女性向けリーダー育成研修等によるキャリア形成支援

全ての従業員が
活躍できる
環境の整備

  • 外的報酬・内的報酬両面での人的資本投資に注力
  • 従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みの継続
  • 障がいのある従業員が安心して働ける環境作り

目標と進捗状況

項目

現状
(2025年3月末)

女性
管理職比率

14.9%

女性調査役
(係長級)比率

40.7%

外国人
管理職比率

3.2%

キャリア採用者
管理職比率

58.3%

男性育児休業
取得率

105%

目標
(2028年3月末)

20%

40%

3%

40%

100%

女性リーダー育成研修参加者インタビュー

女性リーダー育成研修参加者インタビュー

長年、法人融資事務を担当し、その経験を活かして後輩の育成にも携わってきました。最近初めてリーダー研修に参加する機会を得て、講義や先輩参加者との交流から多くを学びました。研修前はリーダー職へのプレッシャーを感じていましたが、研修を通じて挑戦する意欲が湧き、後輩のロールモデルになりたいという思いが強まりました。
研修後、プレゼンテーションスキルが向上したと上司から評価されたり、課長をサポートする取りまとめ業務を任される機会も増えました。会社からの期待と研修の機会に心から感謝しています。今後は、業務や後輩育成の場で学んだことを活かし、自己研鑽に励んでいきたいと思っています。

営業第一部
内田 真純

女性従業員の活躍推進に向けた取り組み

当行の特徴として、女性従業員の勤続年数が男性より長く、多様な職場で活躍している点があげられます。これは、性別にかかわらず長く働き続けることができる環境を整備してきた結果です。
今後の課題は女性管理職比率の向上です。意思決定層に女性をはじめ多様な視点を取り入れることで自己修正メカニズムが働き、同質的な集団が陥りがちな組織のリスクを減らすことができるからです。また、女性従業員の潜在能力の活用を通じ人的資本の機会損失を減らすことにも繋がります。これまでの女性活躍推進の取り組みにより、女性管理職比率は現状15%となっています。今後は、役員を含む全ての意思決定層に女性人材を継続的に登用し、女性管理職比率を更に高めることを目指していきます。

女性管理職比率

女性管理職比率に関する画像 女性管理職比率に関する画像

男女間の賃金格差は65.8%と金融業界平均より格差は小さいものの、改善の余地があります。2020年度のキャリアコース統合により同一のキャリアコースや等級内では男女の評価に差はなく、同一賃金を実現していますが、女性の管理職がまだ少ないことが賃金格差の最大の要因です。また、投資銀行ビジネス等注力分野で活躍する女性従業員が少ないこと、長年働いている女性従業員の中にはバックオフィス業務等サポ―ト部門に多く在籍し低い等級に留まる例が多いことも賃金格差の要因です。
当行では女性従業員の能力を活用する公正な取り組みを本格化するとともに、組織全体の意識改革を推進し、女性管理職や昇格者の数を増やしていきます。こうした取り組みにより、男女間の賃金格差は縮小していく見込みです。

女性活躍推進に向けた施策例
  • 2020年度
    キャリアコース統合
    (一般職を廃止し総合職に一本化)
  • 2021年度
    女性調査役(係長級)比率目標設定
  • 2023年度~
    育児休業復帰者向けイベント再開
    女性リーダー研修・交流会(社内)、女性異業種交流会(社外)の実施

多様な人材が活躍できる環境作り

当行グループでは、お客さまだけでなく、株主の皆さまや従業員を含む全てのステークホルダーから選ばれる組織となることを目指し、多様性を尊重し全員に公正な機会を提供することで、全従業員が活躍できる環境を整備しています。男女を問わず育児と仕事の両立を支援する取り組みを継続しており、育児休業取得率は男性も100%に達しています。

育児と仕事の両立を支援する施策例
  • 2022年度「産後パパ育休」制度導入 → 2024年度制度改定、年5日の育休取得義務化
  • 職場復帰を控えた育児休業取得者向けイベント開催

また、当行グループではDEIの定着に向け、2022年に「あおぞらアライ」を立ち上げ、障がい者、LGBTQ+当事者等多様なバックグラウンドを持つ従業員に寄り添う活動を続けています。2024年度は全従業員を対象としてLGBTQ+と人権に関する理解を深めるeラーニングを実施する等、多様性を認め合う職場風土の醸成に努めています。

当行グループでは個々の障がいに配慮し、障がいのある従業員も他の従業員と同様に働いていることが評価され、「障害者雇用エクセレントカンパニー賞/東京都知事賞」を受賞しました。入行1年後の定着率は100%を維持しており、更なる「安心して活躍する環境作り」の推進を目指しています。

取り組みの詳細は下記外部ウェブサイトをご参照ください。

働き方とサポート体制

当行グループには障がいのある従業員のための「仕事の切り出し」という考えが存在しません。一方で障がい故に難しい作業も存在し、当事者よりサポートを依頼することもあれば、近くにいるものが気づいてさりげなくサポートすることもあります。また、人事部に精神保健福祉士等の専門職を配置し、相談しやすい環境が整っています。日々、周囲の理解と協力に支えられながら、一般の従業員と何ら変わらない業務に従事しています。

同僚・上司の声 ~ともに働く中で得られた気づき~

「障がいがある」と聞くと、その障がいに目が行きがちですが、実際に一緒に働くと、会話を通じてできること・できないことを整理するだけで、支障なく業務を進められます。また、コミュニケーションの大切さを改めて実感する機会になりました。

一緒に働くことで、障がいのある方への理解が自然と深まりました。その姿勢や仕事ぶりから学ぶことも多く、気づけば社外でも同じような方に手助けができるようになるなど、自分自身の行動にもよい変化が生まれています。また、遠慮なく何でも話してくれるので、気負うことなく仕事ができています。

人事制度の活用

全従業員に開かれた各種プログラムを利用し、自己の配属部署を超えて様々な領域の業務にチャレンジする等、経験領域拡大に努めています。こうした制度の利用は障がいのある従業員自身の横の繋がりの増強に寄与し、チームや部署の異動に直結するケースも少なくありません。加えて、自己啓発支援制度を活用し、スキルアップや知見の向上も個々で行っています。

「仕事」と「当事者ならではの活動」の両輪で取り組む

こうして周囲と同様の環境で働く中で、「障がいがあることに気づかれにくい」「必要とする配慮が伝わりにくい」という懸念点が少なからず存在します。「障がいがありながら働く」とはどういうことか、実感を伴った理解を深める目的で、障がいのある従業員が主体となり、肢体不自由・視覚・聴覚の3種の疑似体験を当行グループに向けて企画・実施しました。

【疑似体験の様子】

肢体不自由(電動車いす)に関する画像
肢体不自由(電動車いす)
視覚に関する画像
視覚
聴覚に関する画像
聴覚

取り組みの成果とこれから

疑似体験の参加者が体験内容を自部署に持ち帰り提案・協議したことで、各営業店に「電子メモパッド」と「サインガイド」が導入され、実際に活用されています。障がいのある従業員主体の取り組みが結果としてお客さまサービスの向上に繋がる等、決して支えられるばかりではなく、障がいがあるからこその視点で、当行グループやお客さまに還元できるものを探し続けています。

電子メモパッド サインガイドに関する画像
左:電子メモパッド 右:サインガイド
(ご参考)外部への働きかけ
  • 職場見学会実施(特別支援学校の高校生対象)
  • 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「職業リハビリテーション研究・実践発表会」
  • 東京都福祉局「就労支援機関連携スキル向上事業」研修トレーナー
  • 精神科デイケアや就労移行支援事業所にて就労に向けた各種プログラムの実施

対談 ~多様な分野での活躍~

対談についての画像
シンジケーション・信託部
井上 稚菜
対談についての画像
法人営業統括部
須藤 杏由香
対談についての画像
法人営業統括部
赤岩 真詠
それぞれの担当業務について

井上

シンジケート・ローンおよび社債に関わる資金決済業務を主に行っています。

須藤

法人営業担当者のサポートが主な業務です。貸出などの与信関連の申請書作成などをしています。

赤岩

財務諸表のデータ整備など、与信関連業務を担当しています。

これまでのキャリア / やりがい

井上

以前は融資事務の部署に所属し、資金の送金や回収の仕事をしていました。私は聴覚障がいがあるのですが、ある程度自走できるようになったので、新たなチャレンジをしたいなと思っていたところ、シンジケート・ローンの業務に興味を持ち、ジョブサポート制度を使ってシンジケーション業務を経験しました。それにより新たな知識が深まったと感じています。

赤岩

私は国際業務に関わる短期トレーニーに参加しました。また、英語力強化プログラムや上智大学の社会人連携講座といった当行の自己啓発プログラムにも多く参加し、様々な経験を積むことができています。

須藤

私も短期トレーニー制度を活用しています。視覚障がいがあるので、いつも自席で据置型の拡大読書器を使っているのですが、上司を含め周囲の方がそれを研修会場に運んでくださったり、会場までの誘導や資料の事前配付などもサポートしていただいたりして、安心して受講することができています。今後も積極的に参加していきたいですね。

赤岩

井上さんは今の部署に異動したときに何か特別な配慮をお願いしましたか。

井上

以前の部署と現在の部署の上司が集まって普段どのようにコミュニケーションを取っているか、UDトークの使い方などを私も一緒に確認したので、異動した後も困ったことはなかったです。

須藤

私たちがやりたいということを応援してもらえていると感じますよね。実際、障がいのある行員がいろいろな部門・部署で仕事をしていますし、自身のキャリアを考えることにつながっているのかもしれません。

安心して活躍できる職場作りに向けて

赤岩

入行してまず驚いたのは、聴覚障がいのある従業員が講師を務める手話講座など、従業員が主体となって活動していたことです。私も精神障がいがあるのですが、健常者と変わらない仕事をしながら活躍している先輩たちの姿を見て、自分らしくいられる環境だと思いました。

井上

コロナ禍は皆マスクをつけていて、コミュニケーションを取るのが大変でした。その頃、役職員向けに聴覚障がいとはどういう状態なのか、コロナ禍でどういうところが大変になったのかをプレゼンする機会をいただきました。多くの方に状況を知っていただいたことで理解や活動の輪が広がりました。以前は周囲に比べて情報量が少なくなってしまう点を気にしていましたが、周囲の方にコミュニケーションの工夫や配慮いただく中で、私も相手の言葉の復唱や、自分がまとめたメモを見てもらうなど確認を心掛けるようになりました。

須藤

活動を通してあらためて考えさせられることがあったり、言語化したりできますよね。普段から信頼関係を築いたり、交流を積み重ねたりしているからこそ、お互い伝わるものもありますものね。

井上

仕事も頑張り、活動も広げていくことで、自分自身や周囲の新たな気づきにもつながるので、今後も続けていきたいですね。

赤岩

井上さんや須藤さんたちが信頼関係を築き、障がいのある従業員の活躍の道筋を作ってくださっているなと感じます。これからも後進のためにそれぞれの場所で可能性を広げていきましょう。

  • (注)本対談は2024年に実施したものです。
  • 「障がい」の表記については、漢字やひらがな等、表記の在り方をめぐり様々な議論があります。当行では、社会の側のバリア解消を意識しつつ、当事者の方々の心情も考慮し、「障がい」の表記を使用しています。
(2025年7月時点)